VOL.28
人との繋がりを
大切にすること
私にとって、学校という場所は同じ年頃の子だけが集められた不自然な空間でした。誰一人として学校での決まり事や習う科目がなぜ必要なのか説明することができないことにも違和感がありました。そうした勉強よりも、実際に現場で体を動かして経験をすることが自分のスキルアップにつながると思っていた私は、早く社会に出たいと考えていました。
ただ、進路選択や将来のことを考えると、いつも不安でした。AIにとって代わられる仕事が多いと言われていた中で、新型コロナウイルス感染症拡大によって、社会が思いもよらない方向に変化することがあるということを体感しました。そこで、手に職をつけたい、新しいものを生み出すものづくりの仕事がしたいと考えるようになり、芸術大学に進むことにしました。
自分がより自然に学べる場所、より多くの経験ができる大学を探して、社会実装プロジェクトなど実際に企業と一緒に制作ができるプロジェクト型の授業にも力を入れている京都芸術大学を見つけました。そして、私が好きな布や糸を扱う分野なら続けられると考え、染織テキスタイルコースを選びました。
入学後、いろんなプロジェクトに参加するにあたり、二つのルールを決めました。一つは、実家から大学へ通うこと。わたしは興味の幅が広く、いろんなところに手を出しすぎてしまう癖があるので、その分家には課題を持ち込まず、しっかり休むことに決めました。実家から大学まで片道3時間弱かかってしまうけれど、その通学時間中にその日の終わらせきれなかったタスクや次の日のスケジュール組みを終わらせられるよう、時間を有効に活用しています。
もう一つは、人との繋がりを大切にできる活動に参加すること。私は人と話をすることや、人をサポートして一緒に走るのが好きです。京都市内の屋外型スケートリンク場をプロデュースしたプロジェクト(VIVAプロジェクト)では、コロナ禍で人との繋がりが極端に減ってしまった大学生同士を繋げ、若者を新たな客層として引き入れたい企業と大学生を繋げるための企画を考え、イベントの運営まで行いました。マンデイプロジェクトではチームのリーダーを担い、制作がうまく進むようクラスの人たちの橋渡しや相談役として動きました。その結果、私が信頼できる人も私を支えてくれる人も増えたように感じます。
周囲の人を信頼して判断を任せられること、これは特別な才能じゃなくても、これまで人と向き合うということを大切にしてきたからこそできるようになった私の力だと思います。もちろん自分で考えて決定することの方が多いけれど、そうやって頼れる人が周囲にいる環境を生み出す必要性というものを私は大学生になってから身に染みて感じました。今後の私の制作活動においても大事にしていきたいし、今後私と関わっていく人たちにも、こういった人との関係を積み重ねる大切さを伝えていきたいと思います。
美術工芸学科
染織テキスタイルコース
3年生
初芝富田林高校出身
風呂本 愛佳