12月16日は総選挙投票日です

12月 01日, 2012年
カテゴリー : プロデューサー目線 

 滋賀県の嘉田知事がいよいよ立ち上がりましたね。世論を二分する原発問題に関わることなので良かったと思います。私のような職業の者はどうしても言うだけの立場になってしまいます。あれだけの事故がありながら、危機感が薄められていく状態を心配していただけに、良くぞやってくれたというのが正直な気持ちです。この問題は、日本人として一人一人が真剣に考えなくてはいけないものなのに、何時しか物言うことさえしなくなってしまうことが最悪なパターンなのです。坂本龍一さんが言うように「何時までも言い続けること」が大切です。ほとんどの人が「脱原発」を願っているのに、そうならないのはそれぞれの立場の利害があるからでしょう。でも、かつてアメリカで行われたニューディール政策のように、クリーンなエネルギーを実現する為の投資を国が大胆にして、それに関わる仕事から雇用を産み出せば、前向きな展開が可能になると思うのですが、素人考えでしょうか。戦後の復興、オリンピック開催に合わせた新幹線、高速道路の実現、これと同じように「クリーン・エネルギー開発」というプロジェクトが成功するか否かは政府がはっきりと方針を打ち出すかどうかにかかっています。日本人はいい目標に対しては絶大な成果を上げてきました。人にとって幸福とは何か、贅沢で便利なことが最も大切なのかどうか、じっくり考えたいと思います。

 11月23日、春秋座で行われたミュージカル「ファンタスティックス」は、そういった意味でも示唆に富んだ作品でした。わずか3.6m×1.8mのプラットホームとその4隅に立つポールだけのセット。ごく普通のカジュアルな衣装。演奏はピアノとハープだけの生演奏。出演者は8名。「レ・ミゼラブル」や「オペラ座の怪人」などのミュージカルに較べたら、いかにもエコノミーなものでした。しかし、よく練られたしゃれた脚本、シンプルで親しみやすい音楽、息のあった達者な出演者などによって、普遍的な愛の寓話が感動的に伝わってきました。カーテンコールでの宝田明さんの軽妙洒脱なしゃべりと相まって、ほぼ満員の客席は総立ちで拍手を送っていました。やはり、演劇はお客様が感動してくれたかどうかが肝心なところで、お金がかかっているかどうかは二の次だと実感しました。人の幸せもお金ではなく、充実した人生とは安心と絆ではないかと、当たり前のことを再考させてくれたのです。
 みなさん、12月16日の投票日をお忘れなく。これほど大事な選挙に棄権したら、何も言う権利はありません。マスコミや調子のいい政治家に惑わされることなく、自分自身でじっくり考えて投票しましょう。こんな大切な選挙で投票率が60パーセントを割ったらそれこそ日本の恥です。今は投票日前でも投票は可能です。日曜日に本番を抱えている人もぜひ清き1票を!

橘市郎
(舞台芸術研究センター プロデューサー)