プログラム・ディレクター橋本裕介さん

10月 30日, 2013年
カテゴリー : プロデューサー目線, 過去の公演 

毎月1日恒例の「プロデューサー目線」。
今回は初めて舞台芸術研究センター以外の方からのコメントをお送りします。
9月28日(土)から開幕しました KYOTO EXPERIMENT 2013より、プログラム・ディレクターの橋本裕介さんです。
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京都芸術劇場ブログをご覧の皆さま、はじめまして。
KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭のプログラム・ディレクターを務める橋本裕介です。
KYOTO EXPERIMENTは、2010年に始まった、京都国際舞台芸術祭実行委員会が主催する、京都初の国際舞台芸術祭です。この実行委員会には、京都造形芸術大学舞台芸術研究センターも参画し、会場として春秋座を提供してもらうだけでなく、様々な形でバックアップして頂いています。
今年も9月28日から10月27日の約1ヶ月間、春秋座を含む市内さまざまな会場で、国内外から先鋭的な作品が一同に集います。

この実行委員会に舞台芸術研究センターが参画しているのは、非常に自然な成り行きだったと記憶しています。KYOTO EXPERIMENTが立ち上がる6年前、京都芸術センターでは、「演劇計画」という演劇事業が行われていました。企画ブレーンとして、森山直人主任研究員が企画の立案に携わって来られました。さらにこの事業の一部として行われていた「京都芸術センター舞台芸術賞」という若手演出家のためのコンクールに際しては、研究センター代表代行の太田省吾さんが審査員を務めておられました。逆に京都の舞台人である松田正隆さんが、主任研究員に着任されるなど、2000年代の京都はそれぞれの立場を越えて人材が交流し、活況を呈していたと言えるでしょう。KYOTO EXPERIMENTはその延長上にあると言って間違いありません。

新しい表現を追求する熱意にあふれた当時の様子に、学生の頃から触れていた若手舞台人の一人、木ノ下裕一さん率いる「木ノ下歌舞伎」が、遂にKYOTO EXPERIMENTの公式プログラムに参加します。しかもそれが春秋座の舞台に登場するということで、感慨深く思うのは決して私だけではないはずです。古典芸能への関心を広げつつ現代の舞台芸術を学んだ木ノ下さんは、古典演目上演の演出や監修を自らが行う木ノ下歌舞伎を2006年に旗揚げ。そんな木ノ下歌舞伎は、2012年に『義経千本桜』の通し上演を成功させるなど、意欲的な活動を展開し、いまや全国にその名が知れ渡るようになりました。KYOTO EXPERIMENTでは、京都を代表する若手カンパニーの一つとして、今後も継続した形で、木ノ下歌舞伎と仕事をしていこうと考えました。そこで、初年度となる今年は、メンバーの皆さんと相談して「木ノ下歌舞伎ってどんなアプローチで古典の現代化に取り組んでいるの?」ということにフォーカスを当てた作品を発表してもらうことになりました。それが今回の『木ノ下歌舞伎ミュージアム “SAMBASO” ~バババッとわかる三番叟~』です。「三番叟」の歴史をたどる関連展示、狂言師・茂山童司さんの舞も組み合わせるという、劇場全体を使ったツアー形式で体感できる特別な企画。
能狂言から歌舞伎へと受け継がれ、発展してきた『三番叟』の歴史と、舞台芸術研究センターが育んできた京都の舞台芸術シーン、2つの意味で歴史を体験する絶好の機会となるはずです。

そして今年の春秋座で行われるプログラムで見逃せないのが、10月25日(金)、26日(土)にわたって上演される、パリを拠点に世界で活躍する電子音楽家/ビジュアル・アーティスト池田亮司の『superposition』日本初演です!
昨年11月にパリ・ポンピドゥーセンターで初演された「superposition」の新シリーズは、量子力学や量子情報理論を作品化しようとする野心的なプロジェクトで、今回はそのパフォーマンス・バージョンとなります。
「量子力学って難しいのでは?」と思われる方も、ご心配なく。映像と音楽の精密さ美しさに身を委ねるだけでも、圧倒的で贅沢な鑑賞体験をすることが出来るでしょう。でも、もっと作品の背景を詳しく知りたい、と熱望される方の思いにも応えられるよう、関連企画としてシンポジウムが27日(日)17時から開催されます。「“量子の新世紀”のアート&サイエンス」と題して、佐藤文隆(甲南大学)さん、丸山善宏(オックスフォード大学)さんといった研究者達と池田さんとの刺激的なトークが繰り広げられます。司会は、本学の浅田彰教授が務めます。こちらも是非お楽しみに!

公演の情報の詳細はKYOTO EXPERIMENTウェブサイトをご覧ください。
それでは会場にてお待ちしております!

橋本裕介
(KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 プログラム・ディレクター)