京都芸術劇場10月・11月公演予告

9月 01日, 2012年
カテゴリー : プロデューサー目線, 過去の公演 

 10月、11月は、二つの特異な企画で開幕します。まずは、「ダムタイプ」のメンバーで、国際的な活動で知られる電子音楽作曲家/アーティストである池田亮司氏の”datamatics〔ver.2.0〕” の春秋座公演です。「現代社会に広がる不可視なデータを知覚化すること」がテーマで、様々な形式(音と映像を用いたコンサート/インスタレーション/出版物/CD)で作品化されるものです。2006年3 月に初演された前作に、新たに第2部を加え、大きくヴァージョンアップした、最終ヴァージョンです。リアルタイムのプログラム計算とデータ・スキャニングを用いることで、前作より、さらに抽象性の高いシークエンスを作り出す、とされています。

 その活動の国際性は、KEXの予告パンフレットにも詳しいですが、そこでも繰り返し強調されているように、「強いストロボと重低音・高周波を使用する」ので、未就学児は入場不可ですし、また心臓の弱い方、ペースメーカーをお使いの方は、入場をご遠慮いただくことになっています。私自身、かつてパリで、「ダムタイプ」の公演を、浅田彰氏に誘われて、パリ郊外の文化会館まで見に行った経験がありますが、そのとき浅田さんから、サングラスと耳栓をお忘れなく、と言われて、実際に舞台を見るまでは、意味がよく分からなかったのですが、ダムタイプの公演の空間に身をおくと、それが誇張でも冗談でもないことが良く分かり、衝撃的な経験をすることが出来ましたから、敢えてここに書いておきます。

 それとは対照的なのが、イスラエルのダンス・カンパニーである「インバル・ピント&アヴシャロム・ポラック ダンスカンパニー」でしょう。イスラエル・日本国交樹立60周年を記念して来日しているカンパニーで、演目は『Gold Fish/ゴールドフィッシュ』。この演目は、子供向きに作られているので、是非お子さんたちに見ていただきたいと思いますが、大人が見ても、心温まる作品です。インバルは、はじめバットシェバ舞踊団で、ダンサーとして活躍するとともに、グラフィック・デザインを学ぶという経歴を持つアーティストですが、俳優・演出家として映画や舞台で活躍していたアヴシャロムとコンビを組んで、見る者を幸せな気持ちにさせずにはおかない、魔法の舞台を作ってきました。イスラエル本国のみならず、世界の様々な国のフェスティヴァルに参加し、数々の賞を獲得していることからも、その舞台の質の高さは想像できるでしょう。

渡邊守章
(舞台芸術研究センター所長・演出家)

« 前ページへ