義理と恩愛に苦悩する父と恋に殉ずる娘の物語 清光尼庵室(せいこうにあんじつ)の段

11月 12日, 2012年
カテゴリー : 過去の公演 

皆様、こんにちは。上田でございます。
さて、今日は先週予告しました「第二回 淡路人形浄瑠璃 春秋座公演」で上演する演目【清光尼庵室(せいこうにあんじつ)の段】のあらすじをご紹介します。
先週ご紹介した「賤ヶ嶽七本槍」これまでのあらすじも一読していただけたらよりわかりやすいかと思います。

柴田勝家真柴久吉(羽柴秀吉)の戦いが続く中、足利政左衛門時氏(前田又左衛門利家)が鏡山の頂きにある出家した娘・清光尼(深雪)の庵室を訪ねる。


チラシでも使用されている凛々しい姿の足利政左衛門時氏(前田又左衛門利家)。

 
両者の戦いを高みから見物すると言って遠眼鏡を据えさせる政左衛門であったが、意外にも深雪に還俗を求める。そこに久吉小田春永(織田信長)の嫡孫・三法師を連れて訪れ、蘭の方の首を渡すよう迫る。承諾した政左衛門はしばしの猶予を請い、久吉を奥で待たせる。

蘭の方は、小田家転覆を謀って失敗した滝川将監の養女として小田家に嫁いでいた。そのため、久吉三法師跡目相続の障害となる蘭の方を、政左衛門に討つように促していたのだ。

一方、遠眼鏡でいくさの様子を見ていた腰元たちから恋人・勝久(勝家の息子)が見えると聞いた深雪は、恋情忍びがたく還俗を決意する。しかし、そこに政左衛門が現れ、蘭の方は恩ある先代政左衛門の忘れ形見ゆえ殺すわけにはいかないため深雪に身代わりになるよう説得するが、勝久に会いたい一心の深雪は拒否する。

やがて戦場から「勝久を討ち取った」という声が聞こえ、深雪は失意とともに身代わりを受け入れ、政左衛門がその首を討つ。


左:清光尼(深雪) 右:足利政左衛門時氏(前田又左衛門利家)

 

政左衛門は、偽の三法師を連れた久吉が小田家を乗っ取ろうとしているのではないかと疑うのだが、久吉三法師に扮していた実子の捨千代を討つ。忠義を貫く久吉政左衛門も心を許し、本物の三法師を託す。
久吉三法師を抱き、馬に乗って堂々と安土に帰還する。

深雪(清光尼)の気持ちを考えるととてもやり切れないです…(T_T)
しかし、いくら恩ある先代の娘を助けるため、実の娘を犠牲にしなければならない父・政左衛門の心情を思うとこれもまた辛い…。
現代の世ではなかなか理解しにくいとても悲しい話ですが、義理や恩愛を重んじていた時代だったからこの話が生まれたのかもしれないですね。
このストーリーが淡路人形でどのように表現されるのか、また花道を使った春秋座だけの演出もあるそうなのでお楽しみください。

次回は、淡路人形を華麗に操る淡路人形座をご紹介します。
乞うご期待!(^o^)

上田