あらすじとミニ知識

4月 06日, 2013年
カテゴリー : 過去の公演 

皆様こんにちは。上田でございます。
ふと下を見ると、道端のたんぽぽがひなたぼっこをしている様に黄色い花が咲いていました。蝶々も花の蜜を求めてひらひらと舞っていて心が和みました(*´▽`*)
蝶々といえば7月に春秋座で開催します歌劇『蝶々夫人』全2幕
本日は『蝶々夫人』のあらすじを紹介いたします。

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舞台は100年ほど昔の長崎。
元士族の娘で今は芸者に身をやつしている蝶々さんはアメリカ海軍士官ピンカートンと結婚することになる。しかし、つかの間の気紛れのつもりのピンカートンはアメリカへ帰ってしまう。いつの日か戻ってくるという言葉を信じて待ち続ける蝶々さん。
3年後、ピンカートンは日本に戻ってくるがアメリカで別の女性と結婚しており、帰りを待ちわびていた蝶々さんの思いを知って深い後悔の念に駆られ去ってゆく。
蝶々さんはピンカートンとの間に生まれた子供に別れを告げ、そして、、、
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歌劇『蝶々夫人』全2幕は、ジョン・ルーサー・ロングの短編小説『蝶々夫人』を1900年に戯曲化されたものが原作となっています。

1900年に『トスカ』(プッチーニの代表作オペラ)初演のためロンドンに渡ったプッチーニはロング・ランで評判の芝居『蝶々夫人』を観劇しました。
次作のテーマを思い巡らせていたプッチーニは、自分の好みにあう悲劇的で純情なヒロインを見出し大変感動し、『蝶々夫人』のオペラ化を決めました。
プッチーニは日本音楽や文化などの資料を集め、構成を練りに練り、全体の構成を何度も変えながら作曲を続けていました。
また、プッチーニが尊敬するヴェルディの死や、自身も持病の悪化や交通事故で大腿部の骨折、結婚など様々な右往左往ありながら、1904年にミラノのスカラ座で初演されました。その後も『蝶々夫人』は、世界中に拡がり今日でも上演され続けている名作となりました。
今回、春秋座では初演版を元にしたミラマーレ・オペラオリジナル改訂版で上演します。

プッチーニがロンドンで芝居『蝶々夫人』を観劇しなければ、オペラ『蝶々夫人』は誕生しなかったかもしれない、と思うと運命の出会いとは不思議なものですね~。
学生さんにも自分の作品や何か将来に繋がるかも!?是非観て頂きたいです!

歌劇『蝶々夫人』全2幕のチケット発売日は、友の会会員の方は4月9日(火)、一般発売日は4月10日(水)です。両日とも朝10時から発売です。

皆様のお越しを心よりお待ちしております。

上田

世阿弥生誕650年、観阿弥生誕680年記念

4月 01日, 2013年
カテゴリー : プロデューサー目線, 過去の公演 

 今年は、能の大成者である世阿弥の生誕650年にあたり、また奇しくもその父観阿弥の生誕680年記念に当たります。半世紀前の1963年に、当時盛りの花であった故観世寿夫氏らと、世阿弥生誕600年祭の行事に参加したものとしては、この50年の間に能楽界に起きた変化に改めて驚かされると共に、自分自身と能の世界との関係の多様化に、一つの時代が終わったことを痛感させられます。

そもそも、600年祭の折には、私は東京大学の助手になったばかりの30歳でしたから、半世紀先のことなど、予想もつきませんでした。香西精先生が、大和の補巌寺で永代供養帳に「寿椿」の名を見出し、それが世阿弥の妻の名であることから、ここが世阿弥の菩提寺であることを立証し、すでに廃寺にはなっていましたが、臨済宗の導師をお招きして、お供養をしたこと、臨済禅の典礼が見事に音楽的で、「義満はこういう音楽的に華麗な典礼が好きだったのですよ」と、香西先生が説明なさったことなど、昨日のことのように思い出されます。観世寿夫のお蔭で、というか、観世寿夫が、あまりの若さで亡くなってしまったために、演能の現場と「能の記憶」とを、最も鋭く深く繋ぐテクストとして、世阿弥の『伝書』は、私にとって欠かすことの出来ないものとなったのでした。

 半世紀後の現在、幸い京都芸術劇場では、観世銕之丞師と銕之丞家、片山九郎右衛門師と京観世の方々、人間国宝野村万作師と人気絶頂の萬斎師を中心とした和泉流と、新進気鋭の茂山逸平師のエネルギーが巻き込んでいてくれている茂山家の長老方、加えて、笛の藤田六郎兵衛師、小鼓の大倉源次郎師、大鼓の亀井広忠師らを中心とする、目下、「真の花」を咲かせ続けている囃子方の方々といった、これは手前味噌ではなく、他所ではなかなか出会うことの出来ない出演者で、優れた舞台を作り出すことが出来ているのも、観阿弥・世阿弥から観世寿夫に到る名人上手の「花の力」が寄り添ってくれているものと、有難く思っているのは私だけではないはずです。

今回の「観阿弥生誕680年・世阿弥生誕650年記念能」は、観世宗家の当代清和師に、春秋座の歌舞伎舞台を活かした『翁』を舞っていただきます。50年前には想像もつかなかった企画ですが、舞台芸術である以上、能も「活きもの」ですから、敢えてこの実験を引き受けてくださった観世宗家には、京都芸術劇場関係者一同、深く感謝申し上げる次第であります。

研究史的には、いまだ不明なところの多い『翁』ですが、最新研究に基づくパネル・ディスカッションを、天野文雄先生(大阪大学名誉教授・文化庁関西分室長)と松岡心平先生(東京大学大学院教授)にお願いする予定です。

渡邊守章
(舞台芸術研究センター所長・演出家)

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