タルコフスキー・松田正隆・松本雄吉

10月 01日, 2013年
カテゴリー : プロデューサー目線, 過去の公演 

今回のプロデューサー目線は、11月28日(木)~30日(土)に春秋座で上演します「石のような水」の企画立案者である森山直人先生(京都造形芸術大学舞台芸術研究センター主任研究員)からのコメントをお送りします。

———-

劇作家の松田正隆さんから、「松本雄吉さんと、もう一度、一緒に仕事がしてみたい」と伺ったのは、もう三年以上前のことになります。残念ながら閉館してしまった大阪・精華小劇場での主催公演『イキシマ』で、お二人は劇作家と演出家として、はじめてコンビを組んで作品を発表なさっていました。関西を代表する二人の現代演劇作家の共同作業が、しかもここ京都芸術劇場で見られるのなら、実現に向けて、どんな努力でもしようと決意したときのことは、つい昨日のことのように覚えています。
それからかなり時間は経ちました。その後、松本雄吉さんの維新派は、「20世紀三部作」の第三部を犬島での見事な野外劇場でフィナーレを飾られ、今年の瀬戸内国際芸術祭での参加作品『マレビト』でも、新たな境地を開いていました。昨年から東京に拠点を移した松田さんは、「フェスティバル/トーキョー」(東京の大規模な国際演劇祭)における「ヒロシマ・ナガサキ三部作」の完結後は、あらためて〈3.11〉以後の「都市」の無意識を探求するユニークな試みに挑んでいます。
そして、いよいよ待望の松本・松田ペアの新作が、あとひと月後に迫っています。
今回の『石のような水』は、劇作家・松田正隆が久しぶりに書き下ろす正統的な台詞劇です。モチーフは、20世紀の大映画監督のひとりアンドレイ・タルコフスキーの『ストーカー』『惑星ソラリス』。松田さんも松本さんも、自他ともに認める映画ファンですが、タルコフスキーについて語っているときのお二人の表情は、ことのほか熱がこもっています。「SF」と「メロドラマ」が混然一体となった濃密なドラマ空間が、――維新派のスタッフの全面的な協力を得て――春秋座を最大限に活用した「幻の都市空間」のなかに立ち上がります。皆様のご来場を心からお待ちしています。

森山直人
(舞台芸術研究センター主任研究員)