<今月コノ場所>奈落の底まで。

1月 30日, 2014年
カテゴリー : 過去の情報(~2016.3) 

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私は西暦2000年に、市川猿翁さんからお声掛けいただき本学に赴任いたしました。大学の中に歌舞伎とオペラが本格的に上演できる劇場が建つので、その企画制作をしてほしいというお誘いでした。2001年がオープンでしたので、まずは1年前から東京から京都に移り住み、劇場設立準備室長という立場で携わりました。劇場の機構をチェックするのも仕事のうちで、歌舞伎劇場特有の回り舞台や迫りのテストに福知山まで行った思い出があります。
劇場がオープンしてからは、企画制作運営室長として劇場のことは何でもやってきましたが、劇場の存在を外部の人に分かってもらうことも大切な仕事でした。
春秋座の特徴は何と言っても歌舞伎劇場の機構を完全に備えていることです。それをアピールしたところ、もの珍しさもあって見学者が絶えずやって来ました。そんな時「奈落の底までご案内しましょうか?」と言うとほとんどの人が「ぜひ!」と目を輝かせてくれました。私は誇らしげに、最新の機構を写真のように説明したものです。歌舞伎劇場の特色を生かした「春秋座オペラ」や、京都ならではの演目を入れていただいた「志の輔独演会」などのプロデューサー本来の仕事とともに、この劇場の心臓部ともいえる奈落での説明は、私にとって忘れられないものと言っていいでしょう。

橘 市郎
(舞台芸術研究センター プロデューサー)