洋の東西を問わず画家たちはこれまで、神の似姿や壮大な歴史物語などを描く一方で、自分たちの身の回りにある小さな自然の景物や些細なモチーフにも目を向けてきました。もちろんその歴史は今ここで、簡単に要約してしまうにはあまりにも複雑なものではありますが、残されてきた膨大な数の作品からは、小さな事物を慈しむ画家たちのまなざしをうかがい知ることができるでしょう。
　季節の変わり目をそっと教えてくれる虫の声や風の音。草花の芽吹きや樹々の色づき。生き物たちの何気ない仕草や表情。そして、切り取られた日常の断片。本展では、そうした小さなものを描こうとしてきた絵画表現に着目し、当館が所蔵する近・現代の日本画、洋画のなかから優品の数々をご紹介します。
　今から40年以上も前にイギリスの経済学者E．F．シューマッハーが「スモール イズ ビューティフル」という考え方を唱えていますが、この課題は現在もなお、色あせていないのかもしれません。豊かな自然に取り囲まれた美術館で日々の忙しさを忘れ、小さなものたちの、あるいはあえて小さくとどまることの魅力をゆっくりとお愉しみいただけましたら幸いです。
　なお、本展の展示構成、リーフレットの作成は、本学通信教育部博物館学芸員課程を学ぶ学生が、当館で実施した博物館実習の一環として担当しました。



【主な出品作品】
伊藤深游木《秋色にそめて》　　　 100.0×100.0㎝ 紙本彩色 2003年
山田伸《冬隣》 91.5×50.4㎝ 紙本彩色 1993年
吉村誠司《ボンベイの月》 31.6×33.6㎝ 紙本彩色 2001年
須田剋太《栗》 40.9×31.8㎝　　 キャンバス・油彩 1979年
須田寿《石の上》 45.5×53.0㎝ キャンバス・油彩 1991年
山口薫《山口薫の小さな世界(牛と娘/銅色の月)》各7.2×4.4㎝ リトグラフ(2/100) 1986年
ほか日本画25点、洋画32点、ガラス工芸6点 計63点


【主な出品作家】
日本画／井手康人・伊藤深游木・奥村土牛・佐藤圀夫・髙山辰雄・前田青邨・山田伸・吉村誠司ほか
洋　画／板倉暚・大沼映夫・加山四郎・佐原和行・須田剋太・須田寿・鶴身幸男・山口薫ほか
ガラス工芸／武田成功



●会期中のイベント
『オータムコンサート-フルート演奏会-』
【日　時】　2015.11/7（土）　14：00～15：00　
【会　場】　康耀堂美術館　展示室B　※先着順、人数制限あり　※14：00～15：00の間、展示室Bは締め切り
【料　金】　500円（入館料込み）
【演　奏】　桂　聰子（フルート奏者）