研究科長メッセージ

社会を変える、芸術を変える

芸術の多指向性

先端、尖端、突端と、ひたすら走る芸術家。追いつき追い越せ、抜け駆けせよと焦る進化論者たち。みんな一直線の竿の先をめざしているのかもしれません。しかし、まっすぐ一直線に伸びた棒は、金太郎飴のようなもので、どこで切っても似たようなものかもしれません。しかし実のところ、先端はたくさんあって、星々のきらめきのように、いろんな方向に突出しているのではないでしょうか。金太郎飴の先端より金平糖の尖端です。破砕する星のかけらのように、それぞれの方向へと無数に走る末端がそのまま先端です。

社会を動かす知恵と技

日本における芸術の高等教育機関は、ここ150年ほどのあいだ、いくつかの限られたジャンルで美術や音楽の専門家を育ててきました。そして歴史に残る世界的な大家たちも(幾分)輩出してきました。しかし今や芸術や芸術をとりまく社会の変化は著しく、芸術の専門家に期待されるものも大きく変わってきています。そもそも芸術とは、本来、社会から隔絶した特殊な職域ではなく、様々な局面で創発的に発揮される知恵と技のことです。芸術を研究する者にとって、解決すべき領域は実に広大です。

枠組みを作り変える大学院

本大学院芸術研究科では、「芸術専攻」と「芸術環境専攻」の両専攻の中に、美術、デザイン、文化財科学、文化研究、芸術教育など実に多様な専門分野がひしめき合っています。それぞれ弾力性のある実践的な研究制作指導によって、清新な価値創出に取り組む研究機関です。決まりきった型にはまる方法論に甘んじることなく、方法そのものを組み立てる構想力を持ち、社会的要請に応えつつ、社会に新たな価値観を提示しようという意欲のある方は、是非本大学院に集まってください。芸術の力で、新しい社会のかたちをつくりましょう。

京都芸術大学大学院 芸術研究科長 上村 博 HIROSHI Uemura

京都大学大学院文学研究科博士課程中退。京都大学文学部哲学科助手、パリ第四大学研究員を経て、1995年より本学に勤務。2019年4月より現職。芸術の理論的研究、特に芸術による場所と記憶の形成作用について研究。主な論文に『From Romantic localism to a new aesthetics of place: Rethinking locality via the example of the Neo Mingei movement』(Art&Media, The Korean Society of Art and Media, Vol.15-1, 2017)。共編著に『芸術環境を育てるために』(角川学芸出版、2010年)、『アートを書く、文化を編む』(京都芸術大学・東北芸術工科大学出版局藝術学舎、2019年)など。

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