ウルトラファクトリーの挑戦

対談企画:世界で戦うアーティスト2人が語る、総合造形領域のいま

ヤノベケンジ 教授

ウルトラファクトリーディレクター 現代美術作家

1965年大阪府生まれ。京都市立芸術大学大学院美術研究科修了。1990年瞑想のための体験型作品「タンキング・マシーン」を発表。以後「現代におけるサヴァイヴァル」をテーマに実機能のある大型機械彫刻を制作している。また、「未来の廃墟を旅する時間旅行」をテーマに据えた「アトムスーツ・プロジェクト」では、放射線感知服「アトムスーツ」を身にまとい、チェルノブイリや太陽の塔を訪れるなど、ユーモラスな形態に社会性のあるメッセージを込めた作品群は国内外で評価が高い。近年は腹話術人形キャラクター「トらやん」をモチーフに7メートルを越す火を吹く巨大ロボットで六本木路上パフォーマンスをするなど美術の枠を広げてアートプロジェクトを行っている。水都大阪2009ではアート船「ラッキードラゴン」の制作と、中之島各所で作品を設置、同年大阪文化賞を受賞。

名和 晃平 准教授

彫刻家

1975年生まれ。京都市立芸術大学大学院美術研究科博士(後期)課程彫刻専攻修了。「ものの表皮」への意識から発し、独自の「PixCell = Pixel(画素) + Cell(細胞・器)」という概念を機軸に、感覚や思考のメタファーとしてのマテリアルを多様な表現に展開する。2009年より京都・伏見区に創作のためのプラットフォーム「SANDWICH」を立ち上げ、自身の作品制作から、auのデザインプロジェクト「iida」や、ミュージシャンのPVやステージセット、COMME des GARÇONSとのコラボレーションまで、携わるプロジェクトは多岐にわたる。2011年には東京都現代美術館で男性アーティストとしては最年少で個展『名和晃平 ー シンセシス』を開催。2012年秋には韓国・チョナンに大規模な屋外彫刻“Manifold”を設置、同時に韓国のアラリオ・ギャラリー(ソウル/チョナン)で2つの個展を開催予定。

大学院とは、何をすべき場所か

ヤノベケンジ > 僕は大学院の1年目で、その後のアーティストとしての人生を決定づけるコンセプトを発見することができ、その瞬間を自分のキャリアのスタートだと位置づけています。名和先生も、大学院時代に現在の作品の雛型のようなものが既にできあがっていますよね。

名和晃平  > はい。学部を卒業した後、修士、そして博士課程へ進みましたが、その5年間で体験したことは、僕の人生や作品に大きな影響を与えています。

ヤノベケンジ > 自分がこれからどう生きるべきか、何をつくるべきか。それを発見できた瞬間、その人は学生ではなく、アーティストになると思うのです。大学院とは、その発見を引き起こすための場所ではないでしょうか。ここでは、そうした経験を持つアーティストたちが、教員として学生と向き合っています。自分たちが経てきたプロセスを、学生たちにも体験させることで、第一線で活躍できるアーティストを育てていく。そのための環境づくりを進めています。

名和晃平  > アーティストとしての自己を形成するためには、内省的な研究ももちろん必要ですが、外部との関わりがとても重要だと思います。ヤノベ先生も僕も、海外留学を経験するなど、大学院時代から外の世界に目を向けてきました。現在、ゼミの学生たちと京都のホテルとの共同プロジェクトを進めているのですが、自分たちで好きに作品を展示するというものではなく、外部の美大生やアーティストからも作品を募集し、選考を行い、ホテルにプランを提案するところまで、すべての運営を行っています。こうした実践的なプロジェクトを通して、彼らが外に目を向け、自分たちがアウトプットを行う舞台は学校ではなく社会であることを意識するように努めています。

素材や技法、表現領域を越えて

名和晃平 > 総合造形領域では、「ウルトラファクトリー」であったり、僕が運営する「SANDWICH」であったり、大学内外の特殊な工房とネットワークを築いてプログラムを組んでいるため、素材や技法、メディアにとらわれない、自由な制作が可能です。しかも、実際の社会でプロフェッショナルとして活躍している人たちが側にいて、そのノウハウや問題解決へのアドバイスを引き出すことができる。たとえば、土という素材を使った作品に取り組もうと考えた時に、陶芸や彫刻、デザインなど、多彩な分野の先生方から、様々な意見を聞くことができます。最終的に決めるのは自分自身ですが、目の前にたくさんの可能性を広げることができるというのは、とても贅沢な環境ではないでしょうか。

ヤノベケンジ  > 専攻を越えた、学生同士のつながりというのも貴重な財産です。ウルトラファクトリーは、どの専攻の学生でも利用でき、学科としてではなく、自由意志で参加する場。ここに来る学生たちは、モチベーションが高く、情報や技術の吸収量も全然違います。アーティストの下でアシスタント以上の働きをする学生がいたり、専攻が違う学生同士がプロダクションチームをつくり、半ば起業学生のようなかたちで学外の制作の仕事を請け負ったり、非常に高いレベルで刺激を与え合っています。このように専攻を越えて手をつなげる学生は、学校の外に出ても違う分野のアーティストやキュレーターと手をつないで、新しい世界をつくっていけると思うのです。

挑戦の場、チャンスの場として

ヤノベケンジ > 僕自身のデビューのきっかけが、コンペティションでの受賞だったこともあり、学生たちにチャンスを与える場として「ウルトラアワード」という本校の在学生と卒業生を対象にした公募展を創設しました。選ばれた人は、ウルトラファクトリーを舞台に制作費の支援や、技術、設備などの全面的なバックアップを受けながらプランを実現させ、展覧会で発表します。展覧会では最終的に大賞受賞者を決め、その作品をプロのデザイナーによりバイリンガル(英語・日本語)のカタログにまとめるのですが、そのままポートフォリオとして海外に持って行っても活用できるレベルの冊子をつくります。

名和晃平  > 学生の「できるかわからないけれど、こういうものをつくりたい」というアイデアを、ウルトラファクトリーのスタッフの知恵や技術を活かしてつくってしまうという公募なので、ウルトラファクトリー自体の挑戦でもあるわけです。ウルトラアワードだけでなく、ここではプロジェクトベースで、ものすごい量の情報と人と物が動いていて、プロジェクトが起こる度にやることが違うし、関わる人が違う。自分の興味にあわせて関わり方を考えれば、かなり内容の濃い体験ができるはずです。

ヤノベケンジ > ウルトラファクトリーは、アーティストとしての生き様を学生たちにぶつける真剣勝負の場。学生が制作している隣に、僕や名和晃平、やなぎみわがいる。こんな場所、探しても他にはありません。
名和晃平>僕が学生の時は、現役のアーティストに会えるチャンスはなかなかありませんでした。ここでは、アーティスト同士もお互いに刺激し合い、非常に高いポテンシャルを持つ空間が生まれつつあります。飛び込むなら、今がチャンスではないでしょうか。

ULTRA FACTORY ウルトラファクトリー

ULTRA FACTORY

ウルトラファクトリー

木材から金属加工、樹脂造形まで扱う特殊工房。ライセンスを取得することで、全学科の学生が利用できる。テクニカルスタッフが常駐し、技術的なサポートを受けながら制作を行えるうえ、第一線で活躍するアーティストが実際の仕事の現場としても活用。プロとして世界で戦うために必要な姿勢や考え方、技術を間近で吸収することができる。

ULTRA AWARD ウルトラアワード

ULTRA AWARD

ウルトラアワード

本学学内生および卒業生(卒業2年以内)を対象としたコンペティション。国内外で活躍するキュレーター、批評家、アーティストら豪華審査員陣により選抜された数名が、全面的なバックアップのもとウルトラファクトリーを舞台に制作バトルを繰り広げる。展覧会では最優秀作品を選定し、受賞者には、その後も継続的な活動支援が約束される。

在学生の活躍
Hai-Ning Huang 黄 海寧

Hai-Ning Huang

黄 海寧

もっと、パワフルなものを生み出したい。

ULTRA AWARDに挑んだ3ヵ月間の制作期間は、私を成長させてくれた時間でした。アイデアはたくさんあり、それをどうやって実現するか、ということが問題でした。大きな立体の作品をつくるのは、私にとって初めての経験だったのです。朝10時から18時まで、ウルトラファクトリーにこもって制作。それ以外の時間も、作品のことを考えていました。朝起きた瞬間から、自分との闘いが始まる。毎日そんな感覚でした。なぜ自分と闘うのか。それは、思い描いたものすべてを、完璧につくり出したいという気持ちがあったからです。「もっと、パワフルなものを生み出したい。」そればかり考えていました。
 そして迎えた公開審査会。グランプリが決まったときはうれしかったけれど、驚きはありませんでした。誰がグランプリに選ばれてもおかしくないと思っていたから。私にとって何よりの収穫は、3ヵ月間、大きな作品と徹底的に向き合ったおかげで、心が強くなったことです。困難な状況でも、ひるまずに解決の方法を探そうとするようになりました。今の目標は、人生初の個展を開いて、受賞作よりももっとパワーのある作品を見てもらうことです。

黄 海寧(こう かいねん)さん

中国出身。2010年 福建師範大学 マルチメディアデザイン(アニメーション向け)専攻 卒業。2012年 京都情報大学院大学 修士課程 応用情報技術研究科 ウェプビジネス技術専攻 卒業。2013年 京都造形芸術大学大学院 修士課程 芸術表現専攻 入学

饕餮(とうてつ)の標本
ウルトラアワード2013 最優秀賞 受賞作品

ULTRA FACTORY ウルトラファクトリー

木材から金属加工、樹脂造形まで扱う特殊工房。ライセンスを取得することで、全学科の学生が利用できる。テクニカルスタッフが常駐し、技術的なサポートを受けながら制作を行えるうえ、第一線で活躍するアーティストが実際の仕事の現場としても活用。プロとして世界で戦うために必要な姿勢や考え方、技術を間近で吸収することができる。

ULTRA AWARD ウルトラアワード

本学学生および卒業生(卒業2年以内)を対象としたコンペティション。国内外で活躍するキュレーター、批評家、アーティストら豪華審査員陣により選抜された数名が、本学の全面的なバックアップのもとウルトラファクトリーを舞台に制作バトルを繰り広げる。展覧会では最優秀作品を選定し、受賞者には、その後も継続的な活動支援が約束される。

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