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副学長 - 秋元 康

「社会芸術の窓」

私は、芸術家ではありません。そういう人間が副学長になっていいのか?という迷いがありましたが、多くのみなさんの後押しによって、お引き受けすることにしました。最終的な決断の理由は、”芸術家ではないからわかること”があるような気がしたからです。

では、私が考える”芸術家”と”芸術家ではない人”の違いについてお話ししましょう。例えば、ある同じ場所に2つのレストランがあるとします。1つのレストランでは、シェフが”自分が作りたい料理”を作っています。心の内から湧き起こる創作意欲がメニューを決めています。そのレストランがどこにあろうが、前をどんな人たちが通り過ぎようが気にしません。もう1つのレストランでは、シェフが”みんなが食べたい料理”を作っています。一人でも多くの人たちに食べて欲しいと思っているので、店のロケーションや前を通り過ぎる人たちを観察しながらメニューを決めています。いささか極端ですが、前者が ”芸術家” であり、後者が ”芸術家ではない人” だと思っているのです。とは言っても、実際は、そう簡単に両者を定義づけることはできないでしょう。どちらも、料理を作る、つまり、ものを生み出すという点では、”芸術家”なのですから。

あくまで、ひとつのわかりやすい例として挙げさせてください。私は、後者です。ヒットや流行を作るために、店のロケーションや前を通り過ぎる人たち、すなわち、時代のニーズを読みながら仕事をして来ました。

今回、副学長をお引き受けするにあたり、今まで、京都造形芸術大学が頑なに守って来た”芸術の場”の邪魔をすることなく、どんな新しい試みができるか?ということが使命だと感じました。そして、私は思ったのです。レストランの中と外を見渡せる窓になろうと・・・。誰も何も変わらなくていい。むしろ、今まで築き上げて来た芸術大学としての信用と誇りは変わらないで欲しい。私が窓となって、大学と社会を結ぼう。芸術が社会の中で、どう受け入れられるか?を考えたい。『社会芸術』というテーマを提案しました。みなさんには、大学生活だけではなく、生涯、何らかの形で、芸術と関わっていただきたいと思います。そのために、”日本一、就職率のいい芸術大学”を目指します。また、そういう言い方をすると芸術大学の意味を履き違えているとお叱りを受けそうですが、”就職率” も目先の目標のひとつであることは間違いありません。多くの才能を輩出する大学として、独自の道を進みたいと思います。みなさんのご理解とご協力をいただいた上で、副学長としての重責を全うしたいと思います。

秋元 康

副学長
秋元 康
作詞家。高校時代から放送作家として頭角を現し、『ザ・ベストテン』など数々の番組構成を手がける。
83年以降、作詞家として、美空ひばり『川の流れのように』をはじめ、EXILE『EXIT』、ジェロ『海雪』(第41回日本作詩大賞受賞)、AKB48『Beginner』ほか、数多くのヒット曲を生む。
05年4月、京都造形芸術大学教授就任。07年4月、同大学副学長就任。
TV番組『とんねるずのみなさんのおかげでした』などの企画構成、映画の企画・原作(『着信アリ』シリーズほか)、雑誌の連載など、多岐にわたり活躍中。
アイドルグループ“AKB48” “SKE48” “SDN48” “NMB48”の総合プロデューサーも務める。
著書に、小説『象の背中』(扶桑社)、『企画脳』(PHP文庫)ほか多数。日本放送作家協会理事長。日本音楽著作権協会(JASRAC)理事。

副学長 - 大野木 啓人

そもそも芸術教育とは「人間づくり」だと私は思っています。

がむしゃらに右肩あがりの経済成長を追求してきた20世紀後半とは異なり、先行きが不透明で、混迷が続く現代においてこそ、社会の変化に柔軟に対応し、将来を見据えた哲学と行動力、表現力を備えた若者の輩出が、今の社会で最も必要とされる人材であると思います。

この大学では、若い学生のそれまでの既成概念をもう一度見直し、チームワークに潜在する無限の可能性を知る「マンデープロジェクト」や、大学が社会から受託する年間40件もの実社会プロジェクトを通じて世間で通用する人材育成を目指す「リアルワークプロジェクト」、最前線で活躍するアーティストの制作現場を共有することができる「ウルトラファクトリー」、インターンシップやキャリア支援授業などからなる「キャリアデザインプログラム」など、コラボレーションやコミュニケーションといった社会で生きていくための指針を芸術という最も解りやすい独自の方法で取り組んでいます。

それらが功を奏し、近年、卒業生たちが各界で芸術系大学の中で群を抜く活躍を見せています。昨年の芸大系の就職率はトップですし、就職率の前年比増加率は全国すべての大学でトップだったことはその表れかもしれません。

今後も、現状に甘んじることなく、学生ひとりひとりに合わせた緻密できめ細かい指導を、従来型の教育法ではないかたちで進めてゆきます。それは個々が活き活き個性を持つためにどうしても必要なのです。

わが愛すべき学生たちには、この大学で高い理念、「京都文藝復興」「藝術立国」等を繰り返し伝えます。そうすることによって人間力を高め、社会の現実から正しい道を見極め、新たな自己の修練に果敢に挑戦してくれること信じるからです。私たちは骨身を削ってでも、そういった君たちを応援して行く覚悟ができています。