通信教育部

2017年9月

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2017年9月28日  授業風景

【染織コース】 染織Ⅴ-1 ろう染 スクーリング 

皆さんこんにちは。染織コースの高木です。

 

今回は染織コースのスクーリング「染織V-1(ろう染)」についてご紹介します。

 

ろう染は正倉院の御物にも残っている天平時代からある古い染の技法です。今回のろう染めの技法は版木を使った染です。溶かしたろうを柔らかい板で作った版につけ、布に押し付けていきます。版木の部分のろうが布に付着し模様として残るわけです。

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そのろうが着いた布を染めると、ろうの部分は防染の役割を果たし、染まらずに残ります。数回繰り返すと染まった部分と染まらない部分の模様が複雑に組み合わさった美しい布が出来上がります。

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教員と相談しながら、版を押す順、染める順を確認していきます。どの色から染めていくか決めるのも重要な行程です。

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ろうを落とすには沸騰した湯でろうの着いた布を炊いていきます。しばらく炊いているとろうが湯で溶け出します。その時に染料が再付着しないよう洗剤を一緒に入れます。

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このたくさんのサンプルを元に作品が出来上がっていきます。

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この染めは染料の濃度が重要です。色の重なりで現れる鮮やかな色、その色を効果的に表現するためにはたくさんのサンプルを作らなければ理解できません。サンプルを何度も検証することが、この技法を使いこなす鍵になります。

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2017年9月27日  授業風景

【ランドスケープデザインコース】風景デザインへの視点を学ぶ

こんにちは、ランドスケープデザインコースです。
今回は、8月に京都キャンパスで行われたスクーリングのひとつ「風景デザインの視点」の前半の紹介です。
このスクーリングでは、ランドスケープデザインの基本となる風景について、都市近郊に残る里地(農地)を訪れて、里の風景の現状を分析・評価し、保全・再生のあり方についての提案に取り組みます。
京都キャンパスでは、嵐山・嵯峨野を散策し、歴史的風土保全地区における風景保全の歴史や現状を学びます。

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スタートは、桂川を渡る渡月橋の右岸側から嵐山を望みます。なぜみんなが美しいと感じるか?その理由について先生から解説しています。また、春の桜、秋の紅葉の風景を守るための山林の管理についても教えています。

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そのまま、先ほど眺めた嵐山の裾を上流へと進みます。近づくと樹木の密度や植生をみることができますが、この辺りは鹿による獣害があるため、実生で生えた樹木がほとんど食べられているため、森が更新できない状態になっています。部分的にフェンスで囲むなどの対策が行われている現状を確認します。

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さらに上流へ進み、「大悲閣(千光寺)」へ参詣し、京都のまちと東山の見える風景をみながら、近年の植生の変化について、解説します。

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昼からは対岸の小倉山に登り、進行中の森林再生の現状を確認します。常緑広葉樹が優占していたため、林床に光が落ちない状態になっていたところを大胆に伐採し、マツ枯れに耐性のあるアカマツが植栽されていました。

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その後、嵯峨野の方へ足を運び、嵯峨野鳥居本伝統的建造物保存地区へと向かいます。日本の伝統文化の残る風景を体感し、その風景を保存するために何をすべきかを考えます。

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歴史的風土特別保存地区として、田園風景が残されている落柿舎の前あたりで、スケッチをしながら、このような里と農の風景を保全・改善するための構想案を考えます。

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最後に昨年整備された「竹林の散策路」を通って、管理された竹林の美しさを体感します。
当日は、とても天気が良くてとても暑い日でしたが、生徒のみなさんは疲れながらも京都らしい美しい風景を見ながら、その現状と保存の大切さや難しさを学ばれたと思います。
2日目は、3名の先生方から里と農についての講義を受けて、スケッチしながら考察した構想シートを仕上げ、みんなで発表し、先生に講評頂いて完了です。
実際に風景を見ながら先生の指導を受けることで、教室だけでは学べないランドスケープ本来の素晴らしさを体感できる授業となっています。

 

 

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2017年9月26日  授業風景

【建築デザインコース】卒業制作スクーリング

今回の建築デザインコースのブログは卒業制作のスクーリングを紹介します。
卒業制作では、6回のスクーリングを通じて作品をまとめますが、今回はその2回目の授業の様子をお伝えします。

 

週末の2日間、朝9:30~17:40まで、約40名の学生が、北は北海道、南は富山、岐阜からあつまりました。ここに集った40名は、3年次の設計課題を合格してきた猛者たち、迎える教員も4名と万全の体制です。

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卒業制作では、一定規模以上の建築を設計すればよいというシンプルなもので、敷地も用途も規模も学生が自由に決めていきます。もちろん、設計することで、人々が幸せになったり、まちや社会の困ったことなどを解決できる提案になっていることを求めています。そして、実際に作って見せることのできない建築空間を、最後は、図面、模型、パース、CGなどを駆使して、プレゼンテーションンボードやWEB形式でまとめて発表することで完了となります。

 

様々な地域からやってきて、その地域が抱える実は全国でも同様におこっている問題や、もしくは、とても個人的な問題や興味から掘り起こした提案が40通り出てきます。学生さんの年齢も20代から60代まで幅広く、経歴も千差万別なので、その問題と解決の手段は妥当であるか、手段としてどのようなアイデアがあるか、どうすればよくなるのかを、学生は当然ですが、教員ももてる知識や情報、経験を駆使して真剣勝負のエスキースが始まります。

 

今回の卒業制作スクーリングの2回目では、敷地と用途、かたちをテーマにそって大まかに確定することでコンセプトの輪郭をつくることを目標としています。
その参考資料として、今回も世界中の名建築の書籍を教室に運び込みました。

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自宅で考えてきた案を、一斉に壁に貼り、検討途中の模型も一緒に取り出し机に並べます。

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リサーチ結果のマッピングや図面スケッチと模型を使って、現状と問題、それを解くコンセプトなどを説明し、教員からの質問や意見を受けます。

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他の学生のものもすべて聞いて、自分の提案に置き換えて考えてみたり、互いに意見を交わしたりして、再び、図面や模型に向き合い発展させることを繰り返します。足りないリサーチを追加したりしながら、より良いありかたを探していきます。

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2日間で4回ほどエスキースを繰り返し、自宅で進める作業内容を整理して、帰途につきます。
ちなみに、大きな模型は専用の箱をつくってカートなども利用して、飛行機や電車で持って帰ります。
次回は、どんなふうに変身した案が出てくるのかを楽しみに、終了となりました。
2月の最終提出まで後約4か月、苦悩の日々が続きますが、完成を夢見て頑張ってほしいところです。

 

さて、建築デザインコースでは10月28日(土)に東京で、11月18日(土)京都にて特別講義を開催します。
どなたでも無料で受講いただけますのでぜひお越しください。

【東京】
日時:10月28日(土)18:30 ~ 20:00
会場:東京外苑キャンパス(教室は当日掲示)
講師:六角鬼丈(建築家・東京藝術大学名誉教授)
タイトル:「建築の修景」

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【京都】
日時:11月18日(土)18:30~20:00
会場:瓜生山キャンパス人間館 NA401
講師:土井一秀(建築家・近畿大学工学部建築学科 准教授)
タイトル:「風景の発掘」

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2017年9月22日  授業風景

【陶芸コース】卒業制作スクーリング

今回の陶芸コースのブログは前回の卒業制作のスクーリングを紹介します。

1回目のスクーリングでアイデアをまとめ、いよいよ今回、制作にかかります。

3日間でもかなり制作は進みました。

何点か作る人、次のスクーリングでも今回の継続で作る人と作り方もいろいろですし、作る技法も千差万別です。

 

1:手びねりで猫の仏像を制作中。背中の部分を閉じればほぼ完成です。

 

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2:あとは細かいところを仕上げます。

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3:石膏原型から石膏で型を取ります。

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4:原形を半分土に埋めます。

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5:石膏を流し込むため周りを囲みます。

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6:石膏を流し込みます。

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7:半分の方が取れました。さらに残り半分の型を取ります。

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8:石膏型の中で底になる部分を手びねりで作ります。

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9:土を立ち上げていって。

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10:求める大きさと形にひねり上げます。

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11:段ボールの型紙に合わせて土を張り付けます。

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12:段ボール毎組み立てます。

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13:段ボールを外して完成です。

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14:輪を作ります。表面のひび割れは水ガラスを塗ることで作れます

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15:輪を積み上げていって作品にしていきます。

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16:手びねりとレリーフの作品です。

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17:鋳込みによる作業です。鋳込み型に泥漿を流し込みます。

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18:時間をおいて泥漿を流しだします。

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19:型を外すと完成です。いくつも作りそれを組み合わせます。

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20:タタラを組み立てます。

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21:これは穴をあけて、何になるのでしょう?

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22:芯に土を置いていきます。

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23:芯の周りに土を張り付けていくと・・・。いろいろな作り方があるものです。

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24:手びねりとロクロの併用で形を作っていきます。

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25:ロクロではできない形が生まれます。

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26:ロクロで挽いた形に文様を刻みます。

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27:細いひもを作り、隙間ができるように積み上げていきます。

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28:地層のような作品ですが、ちょっとおいしそう!

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29:紐に泥漿をつけて型の中に張り付けていきます。

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30:ちょっと実験をしているよう!

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31:タタラで組み立て、かなり繊細な仕事です。

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32:途中で田中先生による急須作りのワークショップが入りました。

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卒業制作もこれからが佳境に入ります。皆さん頑張って展覧会にはいい作品を出してください。

 

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2017年9月14日  学生紹介

【芸術学コース】卒業生便り:『地域学』を生きる

今回、芸術学コースからは卒業生から届いたお便りを紹介します。

 

2016年度に芸術学コースを卒業された須田雅子さんに、在学中の思い出や学習の様子と、卒業論文で取り組んだテーマ「苧麻(ちょま)」の学びを深めるために移住した福島県奥会津昭和村での近況についてお話いただきました。

 

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『地域学』を生きる

 芸術学コース 2016年度卒業

 須田雅子

 

 京都造形芸術大学で8年間学び、様々な出会いを経て、私は今、奥会津の小さな村に暮らしています。東京で会社勤めをしていた私が、なぜ、そういうことになったのか。この大学での私の経験を紹介します。

 

 私が芸術学コースに入学したのは2009年、41歳のときのことです。東京で会社勤めを続ける日々、だんだん鬱々として元気がなくなってきていたので、「自分が純粋に興味を持っていることを追求してみたい」と思って始めました。独身で好きなように時間を使えたので、いきづまりを感じる日常をなんとかして変えたかったのです。背中を押してくれたのは、「ふと惹かれるものがあったら、計画性を考えないで、パッと、何でもいいから、そのときやりたいことに手を出してみるといい。不思議なもので、自分が求めているときには、それにこたえてくれるものが自然にわかるものだ」という岡本太郎の言葉でした。(岡本太郎著『強く生きる言葉』イースト・プレス 2008年第25刷 P.12)

 

 いざ学習を始めてみたら、最初のテキスト科目のレポートで出鼻をくじかれました。評価が低く、再提出を求められ、どう書いたらいいのか分からず苦しみました。テキスト科目への苦手意識はこのときに生じたようです。
 その代わり、試験もなく、日常生活からの気分転換にもなるスクーリング科目は、着々と進められました。「芸術学」というと、美術史や美学などがまず思い浮かびますが、私が最も惹かれたのは「地域学」でした。東日本大震災のあった2011年の夏に花巻で受けた宮沢賢治に関する授業には、遠足のような楽しさがありました。総合科目だったため、タイプの違う他のコースの人たちとも交流でき、熱意ある現地の先生方の講義も大変興味深いものでした。宮沢賢治記念館の牛崎俊哉副館長が賢治の童話を地元のことばで演じてくださったときには、室内にいながらにして、野山に吹き渡る風を感じられたような気がしました。この授業を担当された中路正恒先生(現在は退職されて名誉教授)のスクーリング科目は、その後も、飛騨、津軽ととっていきました。津軽ではお山参詣という地元の祭りに参加し、夜中に岩木山に登頂し、囃子の鳴り響く中、ご来光を拝むという素晴らしい経験をしました。

 

津軽お山参詣

津軽お山参詣

 

 この中路先生とは、2011年から毎年お月見会をやるようになりました。在校生、卒業生の有志が集い、先生が「今年はここ!」という所に出かけて、中秋の名月を愛でるのです。最初の年は、芭蕉にゆかりのある東京深川で、二年目はアイヌの聖地二風谷、その後、伊豆大島、久高島、飛騨高山、三輪山を訪れ、各地の独特な風土や文化に触れました。
 芸術という同じものに心惹かれているからでしょう。通信大学では、世代も背景もまったく違いながら妙に気の合う人たちと出会えます。しかも、みなさん、学びへの意欲が非常に高いのです。
 そのような楽しい活動が生活に張りを与えるようになった一方で、テキスト科目が一向に進まないことには常に悩まされていました。会社の仕事で疲れて家に帰り、本を読もうとしても睡眠導入剤にしかなりません。必死で目を開けて文字を追おうとしても気がつくとその姿勢のまま寝ていて、何度も同じ箇所を行き来した挙句に何も頭に入っていないことなどしょっちゅうでした。本がバサッと顔に落ちてきたこともありました。もともと目標もなく漠然と始めたものですから、6年目にもなると、「私は通信大学には向いていない」「卒業などできそうにない」と途方にくれていました。結婚もしていない、会社生活もつらい、大学の勉強も進まない―ないない尽くしのダメな自分に向き合うばかりの毎日……。

 

 2014年、沖縄で「神の島」と呼ばれる久高島でお月見をしていたときも、「須田さんはどうもスッキリしないようだねえ」と中路先生に言われ、我が身の不甲斐なさに情けなくなっていた私は、腕にしていたパワーストーンのブレスレットを名月に掲げて、「私をなんとかしてください!」と強くお願いしました。

久高島でお月見。左から筆者、沖縄民俗研究の田場由美雄先生、中路正恒先生、染織コースの林和子さん、染色作家の平井真人先生。

久高島でお月見。左から筆者、沖縄民俗研究の田場由美雄先生、中路正恒先生、染織コースの林和子さん、染色作家の平井真人先生。

 

 すると久高島はさすがに「神の島」だけあって、私の願いは月にしっかりと受け止められたようなのです。お月見会の翌日、なにかが大きく動き始めます。仲間と訪れた那覇の伝統工芸館で私は沖縄の染織工芸の素晴らしさにまず驚かされます。そしてその後、行った那覇三越では、染織コースの友人の林さんが、スクーリングで訪れたというオーシッタイの「やまあい工房」の展示会がありました。林さんは藍染め作家の上山弘子先生を見つけると大感激し、藍染めをしていたときに歌っていた歌を聴かせてほしいと先生にせがみました。上山先生は沖縄民謡の「てぃんさぐぬ花」を歌って、その意味を話して聞かせてくれました。上山先生は私に沖縄の心を教えてくれました。先生の工房を訪れる授業を翌年とろうと楽しみにしていたのですが、その数か月後に上山先生が亡くなられたことは非常に残念でした。

 

 久高島ではもうひとつ印象に残る出来事がありました。芸術学コースの卒業生に活を入れられたのです。ふたりの大先輩に「須田さんを卒業させないわけにはいかない!」とタッグを組んで励まされたからには頑張らないわけにはいきません。「レポートを書くのに完璧を求めてはダメ」と熱心に説かれ、久高島から帰ると、今度こそ本気でテキスト科目の単位取得に向けて取り組み始めました。

卒業を励ましてくれた先輩と。左から筆者、内山章子さん、伊与田すみさん。内山さんは76歳で大学に入学し、83歳で卒業した。

卒業を励ましてくれた先輩と。左から筆者、内山章子さん、伊与田すみさん。内山さんは76歳で大学に入学し、83歳で卒業した。

 久高島のお月見会には染色作家の平井真人先生も参加されていたので、私も沖縄の染織に興味がわいてきたこともあり、平井先生の八重山のスクーリング「地域芸術学フィールドワーク」に参加することにしました。そこで出会ったのが八重山上布です。苧麻(ちょま)という聞き慣れない草を原料とする織物なのですが、私は同じ草を原料とする織物を2008年に福島県の奥会津昭和村で目にしていたのです。昭和村ではその草は「からむし」と呼ばれていました。東北の山奥と沖縄の離島に苧麻の文化が色濃く残っているという事実に「これは!」と思いました。私は岡本太郎の文化論が好きでよく読んでいたのですが、彼は東北と沖縄に縄文的なものが残っているとよく語っているのです。苧麻文化を残す地域の人たちのことを知りたい。そしてそれを卒業論文のテーマにしたいと思うようになりました。

 

 2015年5月、苧麻の糸作り体験をしに昭和村に出かけたところ、村の人たちやその暮らしぶりに心を鷲掴みにされてしまいました。「ここに住みたい!」という思いが内側から湧き出てきて、もはや抑えることなどできないのです。2か月後、私は会社を辞め、福島県の補助金を得て空き家を改修し、同年9月に移住を成し遂げます。昭和村に暮らしながらフィールドワークをしたいと強く思ったのには、芸術学コース主任の梅原賢一郎先生の身体論(または感覚論)に刺激を受けていたことも大きく影響しています。

 

奥会津昭和村でからむし(苧麻)の糸作り体験。

奥会津昭和村でからむし(苧麻)の糸作り体験。

 

 折よく梅原先生の提唱で、2015年度から卒業論文をエッセイ(試論)で書いてもいいということになりました。私は昭和村をベースに、沖縄の宮古・八重山の島々にも足を伸ばして、苧麻の手仕事に携わる人たちや現地の研究者の方々に話を聞いて歩き、『苧麻をめぐる物語―奥会津昭和村と宮古・八重山の暮らしと文化-』というエッセイ(試論)を書いて、2017年3月にようやく卒業を果たしました。

 

晴れて卒業

晴れて卒業


卒論をご指導いただいた梅原賢一郎先生から卒業証書を授与される。

卒論をご指導いただいた梅原賢一郎先生から卒業証書を授与される。

 

 この卒業研究の成果について、昭和村では教育委員会主催の『昭和学』講座に講師として招かれて発表し、村内外の方々に聴講していただきました。村で勉強会をよく催しているカフェや、『会津学研究会』でも発表の機会を得ました。今後は、フィールドワークでお世話になった宮古・八重山の島々でも発表の機会を設けていきたいと思っています。

 

『昭和学講座』にて発表

『昭和学』講座にて発表

 

『会津学研究会』にて発表

『会津学研究会』にて発表

 

 卒業研究については、『福島民報』でも紹介していただくことができました。

 

 卒業研究を通して、新興住宅地で育った私は、風土とのつながりが圧倒的に欠けていたことを実感しました。今は、風土欠乏症を解消すべく、日本の原風景の残る昭和村で、節に沿って生きる村の人たちにいろいろと教わりながら暮らしています。

 

昭和村、田植えの頃の風景

昭和村、田植えの頃の風景


昭和村、稲刈り間近の風景

昭和村、稲刈り間近の風景

 

 昭和村では、グローバル化や大量生産の波が押し寄せる前の自給自足の暮らしを実体験として持つ80代、90代の方々から少しでも多く話を聞いておきたいと思っています。また、苧麻文化を残す様々な地域を訪れてフィールドワークを続けたいです。その経験から自分が何を学ぶのか、自分の身体や考え方、価値観がどのように変容していくのかを見つめながら、できればそれを本にまとめたいと思っています。
 会津というところは学ぶ機会に事欠かないとても興味深い土地です。私が暮らす昭和村はコンビニもなければ、一日にバスが3本しか通らない山奥の村ですが、面白いことに、学問や芸術にかかわる人たちが後を絶ちません。私は近所のカフェでの勉強会に参加したとき、偶然にも京都造形芸術大学で「世界単位を考える」を教える先生方と会いましたし、からむし工芸博物館では、考古学を教える先生にもお会いしました。昭和村はただの田舎ではないと感じます。

 

「世界単位論」を教える総合地球環境学研究所の阿部健一先生(左)と嶋田奈穂子先生(右)。中央は筆者。昭和村の勉強会で偶然お会いした。

「世界単位を考える」を教える総合地球環境学研究所の阿部健一先生(左)と嶋田奈穂子先生(右)。中央は筆者。昭和村の勉強会で偶然お会いした。

 この二、三年で私の生活はガラリと変わりました。見えない苧麻の糸に導かれ、染織という伝統文化の背景にある地域の暮らしや、そこに生きる人たちの魅力を知るようになりました。計画性もなにもなく、ふと惹かれて始めた大学での学びが、人生を大きく変える面白い展開をもたらしてくれました。学問の探求が面白くてたまらなさそうな個性的で人間味のある先生方や、年齢に関係なく新たなことに次々と挑戦して溌溂としている友人たちに刺激を受けながら、私も直感の赴くままに興味のあることを追求していきたいと思っています。

 

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京都造形芸術大学通信教育部 芸術学研究室が運営しているツイッターもぜひご覧ください。

芸術学コースのつぶやき@geigaku4

 

芸術学コースコースサイト Lo Gai Saber|愉快な知識

 

芸術学コース |学科・コース紹介

 

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■芸術学コース主催イベント「第一回 芸術をめぐる(おいしい)お話の会」のご案内
芸術学コースでは、梅原賢一郎先生が主催する勉強会を今年度より始めます。
毎回、ゲストスピーカーをお招きし、芸術をめぐる(おいしい)お話をしていただきます。
梅原先生曰く「(おいしい)とは(おもしろい)ということでもあり、拝聴するだけで、芸術が好きになり、感覚が豊かになること必至のお話です(そうなることを望んでいます)。(おいしい)ということにちなんで、参加者は、となりどうしが交換できるほどの粗菓などを用意していただくと幸いです(もちろん手ぶらでも大歓迎です)。会の終了後は、親睦の宴席を予定しています。」とのことです。
事前申込不要、参加無料でどなたでもご参加いただけます。皆さまのご参加をお待ちしています!

 

日時:2017年10月7日(土)14:00~17:00
場所:京都造形芸術大学瓜生山キャンパス(教室は当日掲示)
内容:1、「感覚の豊かさとはなにか(おいしいお話①)」(梅原賢一郎)
   2、「「観る」ものと「観られる」もの(おいしいお話②)」(松原哲哉:常盤大学)
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