文化財保存修復・歴史遺産コース

ウクライナ クリミア半島出土漢代漆器の保存修復

こんにちは。教員の岡田です。

3年前のちょうどこの日に、歴史遺産学科では日本庭園・歴史遺産研究センター歴史遺産研究部門の主催で「ウクライナ クリミア半島出土漢代漆器の保存修復」というテーマで、講演会を行いました。

 

 

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「クリミア半島出土漢代漆器の保存修復完成報告会」ポスター

 

当日は本学歴史遺産学科の学生たちも参加した、クリミア半島で出土した漢代の漆箱の保存修復が完成したことを記念する報告会でした。

 

この漆箱は1990年代にウクライナのクリミア半島で考古学者のユーリー・ザイツェフ博士によって発掘されたものですが、ヨーロッパでは出土した漆器の保存処理技術がなかったため、発掘から約10年を経て、住友財団による海外の文化財維持・修復事業の助成金を受けて漆芸の人間国宝で文化財修復を専門とする北村昭斎先生がお引き受けになり、本学歴史遺産研究センターと京都にある㈱吉田生物研究所が協力して、2008年から2010年まで、丸3年間かけて保存修復したものです。

 

 

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本学科に搬入された漆器を確認する関係者(左から二人目が北村昭斎先生)

 

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クリミア半島より出土した漢代漆器の洗浄を行う保存修復コースの学生

 

 

保存修復が完成した漆器は奈良国立博物館で「修復完成記念 シルクロードを旅した漢代漆器」のタイトルのもと、2011年1月18日から2月13日まで約1か月間展示されました。

 

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その展示会では最終日に講演会も企画され、その講演会が終了するとウクライナに返却されることになっていました。せっかくの機会でしたので、返却の前に本学に漆器を運び、本学でも講演会を行いました。講演会の当日は人間館の1階の教室が超満員でした。そしてその講演会が終わるとすぐに、漆器はザイツエフ博士夫人のバレンチナ博士の手によってドイツのボンを経由してウクライナに旅立ったのです。

ウクライナに到着した漆器は発掘担当者のザイツエフ博士のもとに届けられました。

 

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ウクライナ「に到着した漆器を収納箱から取り出した瞬間の写真です(右から二人目がザイツエフ博士)。

 

この漆器は2013年7月から2014年1月まで、ドイツのボンにあるLVR-州立博物館ボンで「Die Krim-Goldene insel im Schwarzen Meer Griechen-Skythen-Goten 」のタイトルのもとに他の出土遺物とともに展示されました。

 

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このタイトルをクリックすると修復が完了した漆器の動画が2分50秒ごろから約10秒間見られます。

 

そして2014年の2月7日から5月28日まで、つまり今現在ですが、オランダのアムステル大学にあるアラード・ピアソン考古博物館で「De Krim – Gouden Geheimen van de Zwarte Zee」のタイトルで展示されています。

こうした作業を通して歴史遺産学科の学生が協力した文化財の保存修復作業がこんな形で世界につながっていること、文化財が人類共有の遺産であること、歴史遺産学科の取り組みの一端等がおわかりいただけたと思います。

 

 

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