こども芸術学科

紅葉鮮やかな季節に和紙孔版画で多色刷り/2年次造形表現IV

今年は昨年に比べて秋が長く感じます。

京都も段々と紅葉が色づき始め、グラデーションが楽しめる頃となりました。

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この木は「マルバノキ」と言う名前です。
その名の通り、葉っぱが丸く、とても美しいです。
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さて、今年も2年次の造形表現IV「環境と表現」でコロジオン版画を行いました。

テーマは「環境と色」。
葉っぱの色を見て決めた訳ではありませんが(笑)、ちょうどタイムリーな課題です。
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青、赤、黄の色の3原色と、黒の墨版を合わせて4版を重ねて混色し色鮮やかな版画を作ります。
イメージの大きさはハガキサイズです。紙はそれより大きいB5サイズ。
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色の混色は減法混合、と美術の授業をおさらいしながら、青と赤は紫、赤と黄でオレンジ、黄と青で緑になるはずです。が、油絵の具を印刷用メディウムで薄めた手製インクはどのように発色するかはそれぞれでやってみないと解りません。
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また、青、赤、黄の油絵の具といっても、青だけでもウルトラマリン、コバルトブルー、セルリアンブルー、ターコイズブルーなど、沢山の色があります。どれを選ぶかも学生さんの自由ですから、同じ技法でも多様な色彩が現れると思います。
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和紙孔版画はシルクスクリーンと版の原理は同じです。孔版の孔とは「あな」という意味、版に穴を開けてそこからインクを落とすと、穴のかたちに刷り取られるというのが孔版です。コロジオン版は、現在も四国のヘイワ原紙という会社が生産しているもので、典具帖紙という楮(こうぞ)を原料としたとても薄い和紙に、コロジオン膜を加工して、コロジオン原紙が生産されていますが、それを版に用います。
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コロジオン原紙を、段ボールの枠に貼り付けますが、この枠も手作りしました。
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段ボール枠に貼ったコロジオン原紙に下書きを鉛筆で写し、ヘイワ原紙で購入できる毛筆製版液を使って、製版します。毛筆製版液を塗ったところのコロジオン膜が溶けますが、典具帖紙の繊維があるので破れません。さすが日本の和紙。
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インクをペインティングナイフでよく練り、ゴムローラーで刷ります。
一見、何気ない制作過程ですが、それぞれコツがあり、要領をつかむには経験が必要です。
画用紙30枚に刷りますから、段々と上達してきます。
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コロジオン版画はシルクスクリーンと比べても、手軽でローコストなので、もっと普及してもいい素材だと思います。美術工芸学科の技法材料研究室教授、青木芳昭先生からの直伝の技です。
今年も、こ学の学生たちの手によって、面白い作品が生まれてきましたよ。
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この版画が出来たら、1から2枚をハガキサイズにカットして、絵はがきにして大切な誰かに切手を貼って送ろう、という宿題もあります。最近の学生さんは、メールが便利なので、ハガキでやり取りするというコミュニケーションもあまりしたことがなさそうです。返事が返ってくることを期待しながら、版画を作るのもいいものです。
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合評は、今制作している「土からクレヨンをつくる」と合わせて行いますので、また報告しようと思います。
(森本玄:教員/絵画)
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