情報デザイン学科

【速報】2014年度 卒業展 受賞情報

2014年度 京都造形芸術大学 卒業展における、情報デザイン学科の受賞情報速報をお知らせします。

 

記載情報は以下の通りです。

氏名|Name|コース

「作品タイトル」

表現メディア|展示場所

 

※ 情報デザイン学科は2013年度1年生から「情報デザインコース」「イラストレーションコース」の

112コース編成になりました。

11現4年生「コミュニケーションデザインコース」「映像メディアコース」「先端表現デザインコース」の

11カリキュラムは「情報デザインコース」として統合されています。

 

【学長賞】1名

3_1_映像_磯部美巴子

磯部 美巴子 | ISOBE Miwako|映像メディアコース

「Visible Light ー可視光ー」

映像インスタレーション|人間館 NA310b

 

【選評】プロジェクションマッピングは建物や物、空間といった対象に、映像と対象がぴたりと重なり合うよう投影し、錯覚を楽しませる表現手法だが、本作で注目したいのは対象が影であることだ。影は光から生まれる。光から生れた影にまた光を当て込むという反転的で奥行きのある発想は、プロジェクターとモーショングラフィックスを題材とした数多の実験から生み出された。そのアイデアを、磯部はテクノロジーを巧みに使って表現し、新しい視覚体験を提示した。

 

 

 

 

【優秀賞】4名(コース別、五十音順)

1_4_コミデ_西村夏南西村 夏南|NISHIMURA Kana|コミュニケーションデザインコース

「Good Place From Community」

冊子、パネル、映像、写真|人間館 NA309b

 

【選評】1981年開島のポートアイランドの現状は衰退へと向かっているように感じる。まちの、そこに住む人々の活気を取り戻す試みとして、アメリカの社会学者レイ・オルデンバーグが『Good Place From Community』の中で提唱したサードプレイス(第三の居場所)の考え方を元に、地元でのワークショップを企画・開催した。本作品はワークショップを通じて、人々が関わった第三の居場所としての活動記録である。

 

 

 

2_6_イラスト_森安ひとみ

森安 ひとみ|MORIYASU Hitomi|イラストレーションコース

「HOHOEMI」

絵本|人間館 NA311

 

【選評】日常の悲しみや辛さは「ほほえみ」によって変えられる、というのがこの作品に込めた作者の思いです。シンプルな線で描かれた画面からは、繊細なドローイングセンスと余白を活かす大胆な決断が感じられ、イラストレーションのあつかいにも、切り抜き、裁ち落し、角版等、さまざまなバリエーションがあり、一貫したグラフィックセンスの高さが伝わってきます。それでも作者はこの作品を、自然体でけれん味のないものに仕上げました。

 

 

 

3_3_映像_早川大理

早川大理|HAYAKAWA Dairi|映像メディアコース

「GeneVox Monsters」

インタラクティブ|望天館 VOTEN VOTEN奥

 

【選評】声を起点に始まるこのユーモラスなビデオゲームは、膨大な制作時間と試行錯誤によって、子供から大人まで楽しめる質の高いエンターテインメントとなっている。(二人共同制作。早川は主にコンセプト、グラフィックデザイン、アニメーションを担当)一昔前のチープな体裁の背景には、デザイン、アート、映像、メディア、テクノロジー等、いずれにも高い意識で向き合い実行してきたことで獲得した創造力とタフネスがしたたかに息づいている。

 

 

 

4_1_先端_石野恵美

石野 恵美|ISHINO Megumi|先端表現デザインコース

「build」

プロダクト|人間館1Fラウンジ

 

【選評】玩具が本来持っている素材や形からの学びが希薄になりつつある現代に対して、あらためて石野は玩具を再認識する。制作された作品(おもちゃ)は天然の木製素材とシンプルでどこか記憶にある形からは、美しさと楽しさの魅力を与えてくれる。素材と形の美しさは、玩具として遊ぶことによって、さらに私たちはそれらの魅力に引き込まれることになった。

 

 

 

 

 

【奨励賞】18名(コース別、五十音順)

1_1_コミデ_今木なつな

今木 なつな|IMAKI Natsuna|コミュニケーションデザインコース

「寿」

プロダクト|人間館1Fラウンジ

 

【選評】「若者なりの伝統文化継承のひとつの可能性」。現在の若者が捉える日本文化、なかでも「ハレとお祝い」に対する若者の解釈に気づかされる作品です。ただ、文化を継承するだけでなく、時代に合わせた感性で受け取り、理解することで、その伝統が途切れることなく受け継がれていく、そのとらえ方は20代の彼らにしかできないことであり、表現であることは明解で、まさしく学生が取り組む卒業研究にふさわしいテーマとなっています。作品も「水引」に興味を持った作者が「アクセサリー」に着地するまでには、「結納」に始まり技術習得と、いかに現在の若者に伝統文化を身近に感じてもらえるかというテーマを根底にしたその試行錯誤は研究そのものであったことも評価すべき点だと考えます。

 

 

 

1_2_コミデ_長尾るり子

長尾 るりこ|NAGAO Ruriko|コミュニケーションデザインコース

「なんでやねん!」

ミクストメディア|人間館 NA306

 

【選評】関西人特有の「ボケとツッコミ」を、会話の中での隙間をつくるスイッチと捉えた作品。単調な会話に「ボケ」を投じることで会話に隙間が現れ、さらに「ツッコミ」が加わることでリズムとなる。本作品は展覧会会場という「静」の場に「ボケ」という隙間を与えることで、鑑賞者間のコミュニケーションを生むことを目的としている。

 

 

 

1_3_コミデ_西野春香

西野 春香|NISHINO Haruka|コミュニケーションデザインコース

「かばんの研究」

プロダクト|人間館 NA309b

 

【選評】「かばんが新しいコミュニケーションツールになるかもしれない」。最終形態が商品という実験性が見えにくい作品ではありますが、卒業研究の立体作品のなかで少数派の、デザイン領域で実用につながるプロダクト作品として高評価できる希有な作品です。技術・予算的にプロトタイプではありますが、その研究プロセスは数多くの試作品を制作し、誰よりも試行錯誤を重ねた成果が作品に反映され、そのことは展示計画を見ても伺えます。中には充分に実用化検討レベルの作品もあります。また3回生時に興味を抱いたテーマの再考を重ねることで、卒業研究のテーマに繋げたことも後輩への良き手本になると考えます。

 

 

 

1_5_コミデ_朴加喜朴 加喜|PARK Kahee|コミュニケーションデザインコース

「きれいの錯覚」

プロダクト、冊子|人間館 NA309a

 

【選評】ひとびとは「きれいになること」に気を使うがその洗剤が環境を汚染していることには無関心です。ここに提案したものは水に分解され、人体に害を与えない天然素材でつくられた洗剤を実際に制作しています。地球環境にやさしいブランディングを行うことで「きれいになること」を提案しています。

 

 

 

1_6_コミデ_藤井由紀恵

藤井 由紀恵|FUJII Yukie|コミュニケーションデザインコース

「ことばを贈る」

ステーショナリー|人間館 NA306

 

【選評】言葉を単に発するだけではなく、そこに留める行為から「ことば」を考えさせる目的で制作した作品。本作品は使用者が気軽に向き合えるよう、初球・中級・上級に分けたキットとし、最大限のボキャブラリーを引き出すための工夫がなされている。大切な人へ「ことばを贈る行為」としての提案である。

 

 

 

1_7_コミデ_村井彩奈

村井 彩奈|MURAI Ayana|コミュニケーションデザインコース

「野菜の表情 ーおいしいやさいの見分け方ー」

ミクストメディア|人間館1Fラウンジ

 

【選評】みずみずしい野菜を見つけるためのガイドブックは多く出版され、インターネット上でもたくさん公開されています。しかし、実際に手にとってみないと美味しい野菜を見分けるのは難しい。この作品はおいしいやさいの見分け方をわかりやすく判断するためのツールです。

 

 

 

1_8_コミデ_吉田典世

吉田 典世|YOSHIDA Noriyo|コミュニケーションデザインコース

「日本の国際空港のVI計画」

プロダクト|人間館 NA309a

 

【選評】「スタンプコレクションが地方再生のきっかけに」。

個々には過去にも見受けられる提案ではありますが、複数の空港を俯瞰しながら関連性を検討し、それぞれのVI計画をトータルで行うことの効果に着目したことは、これから社会で必要とされる総合的なデザイン力が感じられ、可能性のある提案だと考えます。結果、旅行者だけに向けた提案にとどまらず、その特性から都市にとって、日本にとって、japan=fujiyama,tokyoに変わる提案ができている相乗効果も新しい視点です。グラフィックデザインの視点で見たときには、その表現力にまだまだ未熟さを感じるものの、学生なりのこだわりがあり、もしかしたら新しい感性なのかもしれない。

 

 

 

2_1_イラスト_佐藤雅佐藤 雅|SATO Miyabi|イラストレーションコース

「線の研究」

平面|人間館 NA311

 

【選評】さまざまな風景から「線」を抽出し、製図道具によって表現を限定、再構成するプロセスで、新しい情報が現れては消える現象を作者は目の当たりにしてきました。手癖を押さえる不自由さは当初本人にとって苦痛をともなう作業だったはずですが、情報の明滅と戯れるうちにとても楽しくなっていったと言います。作者はこのような体験を何とか焼き付けようと格闘し、そうした思いがインスタレーションというかたちで作品設置まで引継がれています。

 

 

 

田中杏奈

田中 杏奈|TANAKA Anna|イラストレーションコース

「イラストランスフォーメーション」

冊子、アニメーション、ポスター|人間館 NA311

 

【選評】かたちを整理することと分解することのくり返しの中で、それらが織りなす「意味」の変化に焦点をあてた作品です。変化の全体から部分までをノート、アニメーション、大型平面といった各々のメディアの特性を活かし適合させ、「意味」や「無意味」をビジュアル化していきます。個人的に捉えた風景や文字、人物のシルエット、高速道路、幾何学図形、ピクセル、etc、つながるための根拠を持たない様々なかたちが一定の変化の中で、瞬間的、記号的に作用します。

 

 

 

谷本理子谷本 理子|TANIMOTO Riko|イラストレーションコース

「日常採集」

平面|人間館 NA311

 

【選評】多数のドローイングは、その時の作者のリアルな感覚をともなって実施され、その感覚はいつも同じものとは限らず、そのことによって作者自身の楽しみだけでなく、戸惑いやあきらめも含めた心の動きが素直に映し出されました。ものを見て描くということが反転し、自分を語る行為だと気づいたところから、作者はこの作業にますます惹かれ没頭していくようになります。目の前に存在がありそれを再現する作業にもかかわらず、きわめて主観性の高いエモーショナルな作品群です。

 

 

2_4_イラスト_中村仁世中村 仁世|NAKAMURA Hitoyo|イラストレーションコース

「Individual」

アニメーション|人間館 NA311前

 

【選評】走るだけで作品になるのではないか。なぜならその動作は人によってあまりにも違い、それが個人というものを特定する大きな手がかりの一つにもなる個性だからだ。作者はこの制作の課程で、個性につきまとうさまざまな視点のありように気持ちを引き込まれていきました。人が自分の個性だと考える要素は思い込みも含め幅広くありますが、それよりも「走る」というもっとも身近な動作にそれが表れると同時に、個性とは何かという問題をこの作品は突きつけてきます。

 

 

 

2_5_イラスト_堀江彩華

堀江 彩華|HORIE Ayaka|イラストレーションコース

「おかえり。」

アニメーション|人間館 NA303

 

【選評】経験や思い出には良いものも悪いものもありますが、すべての人がそれぞれに持つものであるということに、作者は気づき安堵します。この時おそらく初めて、作者の自己が客体として立ち上がったのかも知れません。自分を揺さぶるだけとしか思えなかった外界との関係を、ようやく自我として受入れ、自分を含めた世界全体が客観的に見渡せられるようになった。その時感じるやすらぎのようなものが作品全体を包みます。

 

 

 

2_7_イラスト_山田瞳

山田 瞳|YAMADA Hitomi|イラストレーションコース

「WINDOW」

インスタレーション|人間館1Fラウンジ

 

【選評】作者はこれまで伝達について考えてきた結果、たどり着いた表現がこのインスタレーションでした。「風」をモチーフに架空のエピソードを設定し、そのエピソードにまつわる数々の部品をコレクションし、標本をつくるように陳列しています。各々の部品には持ち主の肖像イラストが添えられたキャプションが設置してあり、持ち主それぞれの「風」を観者が追体験できる仕組みになっています。「風」をあつめ、変奏し、どのように伝えるか、そこに作者の狙いがあります。

 

 

 

2_8_イラスト_山田優子

山田 優子|YAMADA Yuko|イラストレーションコース

「6羽の白鳥」

絵本|人間館 NA311

 

【選評】「6羽の白鳥」は19世紀初頭のグリム作品です。この古典童話を作者自身の嗜好に引寄せ、現代的にリメイクしたのがこの作品です。これまで多くのイラストルポを描いてきた作者はその手法を絵本に持ち込むことで、ある一定の装飾性を備えた風変わりなビジュアル表現となりました。飾り頭文字、カーペット、ミニアチュールといった中世スクリプトの様式と、現代的な感性が混ざり合った不思議な絵本です。

 

 

 

3_2_映像_ジダーノワアリーナ

ジダーノワ・アリーナ|ZHDANOVA Alina|映像メディアコース

「Фаворитка  Favoritka」

アニメーション|人間館 NA301

 

【選評】作者は日本で生まれ育ったロシア人であり、自身のアイデンティティを探し続けている。この作品には、葛藤と調和を繰り返しながらコラージュされた作者の複数のルーツが、モチーフとして登場している。容姿、言葉、文化、そして性と血。それらの葛藤と調和を、ストップモーションアニメーションと詩を使って見事に表現している。本作は、チェコ国立芸術アカデミーでも高く評価された。

 

 

 

3_4_映像_肥後雅士

肥後 雅士|HIGO Masashi|映像メディアコース  ※「榎本了壱 特別賞」も併せて受賞

「HABITABLE」

映像|人間館 NA310b

 

【選評】CGを駆使し、細部まで丹念につくり込まれた秀作。ミニマルでグラフィカルなアニメーションと、近未来のテクノロジーを取材し構想したSF的セッティングを組み合わせた表現によって、ストーリー性を持ったモーション・グラフィックスを目指した野心的な試みでもある。シンプルでコミカルなモーションと、その機能の反映から設計されたイメージ(図像)のデザイン、それらを多層的に集合させることにより、本能的快楽を擽る視覚世界と時間感覚を獲得している。

 

 

 

小松千倫小松 千倫|KOMATSU Kazumichi|先端表現デザインコース  ※「PARTY 特別賞」も併せて受賞

「20 Cassettes (The Sea)」

ミクストメディア|瓜生館 1階

 

【選評】

この作品は個々の録音機器から限られたエリアが切り取られ、展示教室へ拡張されている。一歩外に出た喧騒と静寂の狭間を体験することができる。「録音と再生」をテーマに制作し、再生機器の間隔を拡張した配置がアナログ機器の持つ個体差をも利用し“聴覚情報のトリミング”と“再現”という位置付けを提示している。この録音ソースは遠浅で有名な高知県土佐清水市の大岐の浜にて海面を20台の

ポータブルカセットレコーダに録音した。

 

 

 

田宮美紀

田宮 美紀|TAMIYA Miki|先端表現デザインコース

「The book of light.」

書物、立体|人間館 NA312

 

【選評】本という形体は媒体(素材)と情報(文字や図像など)によって多様性を持つ。田宮が制作したこの書物は1頁における面積の情報は形の変化によって立体となり、光を介入させることによって新たな表情をつくる。切り込みから造形を想像(読み取り)し組み立て、次頁へと進めてゆく行為は書物であるとあらためて認識させられた。

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