文化財保存修復・歴史遺産コース

平安宮跡探訪-1回生フィールドワークⅠ-

こんにちは。歴史遺産学科教員の仲です。

4月17日(金)、新入生のはじめての野外授業が行われました。

前期の金曜日午後の「フィールドワークⅠ」という授業は、京都の歴史を現地で学ぶことを目的としています。

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写真:平安宮跡 内裏推定地にて

実は4月10日(金)が最初の授業でしたが、あいにくの雨で教室内での講義となりました。この日は8月16日の送り火で有名な大文字山(正式には如意ケ嶽)に登り、京都盆地を一望しつつ京都の地形を観察し、また山中にかつてあった山岳寺院「如意寺」の遺跡を探訪する予定でしたが、5月に延期となりました。

 

そこで教室内で、如意寺遺跡出土の古瓦や灰釉土器などを観察し、拓本を取る実習を行いました。

 

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写真:瓦の型式や製法について解説

 

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写真:拓本を取り、調査票に記録する

 

翌17日は晴天。この日はまず京都市考古資料館を見学し、発掘調査からわかる平安京の歴史について学び、その後、平安宮跡を探訪しました。

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フィールドワークⅠ講師の梶川敏夫先生(前京都市考古資料館館長)から、本日の行程と各遺跡の概要について、講義を受けました。

この建物は大正時代に西陣織会館として建築されたもので、この部屋はかつての貴賓室でした。

 

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続いて京都市考古資料館の丸川さんから、平安京出土遺物の特徴について説明を受けました。土器編年の考え方や、緑釉瓦と輸入陶磁器との関係など、いきなり専門的なお話でしたが、先週、平安時代の瓦や土器の製法について学んだばかりなので、みな興味津々です。

 

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みなさんは、平安宮がどこに位置していたのか、ご存知ですか?

現在の京都御所の場所ではなく、千本通りと丸太町通りの交差点付近一帯に位置していたのです。

主要個所には説明版が設置されています。この復元図は梶川先生がお描きになりました(なお、梶川先生の「日本史特講Ⅰ(日本史特論Ⅰ)」では復元図の描き方も学びます)。

今回はそのうち、内裏跡(内裏跡、内裏内郭回廊跡、藤壺・萩坪推定地)・大極殿跡碑・豊楽院跡・一条院跡・朱雀門跡などを訪ねました。その一部を紹介しましょう。

 

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奈良の平城宮跡は史跡公園として整備され、その大極殿は建築が復元されていますが、平安宮跡の多くは私有地です。

明治期に推定された大極殿跡には石碑が立てられ小さな公園となっていますが、その後の研究によって大極殿はそのやや南方に位置していたことがわかりました。

 

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大極殿院と並ぶ豊楽殿院では、その一部分が発掘調査で遺構が確認され、平成2年に史跡指定を受けました。

京都市が土地を公有地化して遺跡は保存されているのですが、建物の復元は行われておらず、建物位置を表示した仮整備の状態となっています。

 

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続いて京都アスニ―を訪れ、平安建都1200年記念で作製された平安京の模型を見ながら、平安京の構成と主要遺跡の概要を学びました。

 

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解説は、京都市埋蔵文化財研究所で長年発掘調査に従事された長宗さんです。遺跡の調査や保存・活用の在り方についてもお話しくださいました。

先人の熱意や、丹念な発掘調査・研究の蓄積によって、京都の歴史が解明されつつあるのだということを実感しました。

ありがとうございました。

 

今回のフィールドワークでは、実際に平安宮跡を訪ねて歩くことによって、歴史都市における遺跡の調査・保存の現状と課題の一端を学ぶことができました。

 

次回は、「平安京以前の京都」をテーマに、太秦の広隆寺や蛇塚古墳を訪れます。

 

 

 

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