こども芸術学科

「子どもの未来」をひらく保育園|特別講義

先週末、東京都町田市にある、しぜんの国保育園(東京都町田市)の園長、齋藤紘良先生をお招きしての特別講義がありました。

 

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齋藤先生は、園長といえど、とてもお若く、なんと30代です。ご自身もCDやライヴ活動をする音楽家、クールな園長さんです。司会進行は今年から「こども芸術学概論」を担当する水野哲雄先生。こども芸術学科の1〜3年次生と、神戸女子大学の幼児教育コース、大橋喜美子先生と学生さん20余名も参加して、S22教室は満員御礼。

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齋藤先生は園長になったとき、まず今まであった遊具を見直すことから始めたそうです。それにビックリした学生が「なぜですか?」と質問しました。

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聞けば、代々の園長先生の思いを継承しながら、新しいものを展開するという、現園長の齋藤紘良先生の考えの基、それまで使用していた遊具を見直すことで、園内の恵まれた自然が十分遊具の代わりになることに気づき、決められた遊び方だけではなく、子ども達が自由に遊びを工夫することを促す取り組みだったそうです。

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そして、園の柱にしているのは「食育」、「芸術」、「自然」。

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こども芸術学科の卒業生も、1期生から、2期生、3期生と毎年、保育士として採用していただいています。特別講義の前日には夕食をご一緒させていただきましたが、その時に、まだ新しい「こども芸術学科」の卒業生を、なぜ採用していただいたのか伺いました。

 

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しぜんの国保育園で、齋藤先生が「芸術」と「保育」を核に養成している大学がないものかと呟いたときに、一人のスタッフが、京都の大学でそういう学科が出来たらしい、といってくれたのが出会いだったとのこと。そして、芸術大学で4年間しっかり自分自身に向き合い、作品制作の経験を積むということを高く評価している、というなんとも心強いお言葉をいただきました。

 

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しぜんの国保育園は町田市の豊かな山間にあり、なんと動物もたくさん。羊、黒豚、ギンギツネ、鹿などが園内に。つい先日も、子ども達が羊の毛を刈り取って、染めるワークショップを、1期卒業生の引田美冴さんが展開したそうです。引田さんは学生時代、Aゼミで同じことを経験したことがあり、それが実践に活かされているのです。

 

そして、こどもとの関わりの柱になっているのは「ワークショップ」、「しぜん谷」、「クラス」。集団に合わせるのではなく、一人ひとりの個を大切にするという考え方。そして、個の集まりが集団であるという考えに基づいて保育をされています。

 

そして、保育をするのは保育士だけでなく、こどもの前に立つ大人は皆、保育者であること。保護者も、事務員さんも地域の大人も全て保育者です。そんな話の流れから、ユニークな数ある取り組みの一つを紹介していただきました。それは、園内に大人の部活動があること。

 

スタッフの採用面接をするとき、新人さんは皆、いろんな特技があることが解ります。バスケ部、相撲が得意、絵を描くことが得意など。普通は就職すると、そんな特技はなかなか活かされないことが現状だと思うのですが、しぜんのくに保育園では、それはもったいないと考え、保育士、事務員さんも含めた大人全員で何かの部活動をしているそうです。

 

そうした部活動を含め、いろんな研修を行いながら、オリジナルの保育を考えるきっかけにするんだと。どうです?素晴らしい考え方じゃないですか?

 

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現在、しぜんの国保育園では新園舎を建築中で、このイメージ画は、こども芸術学科1期卒業生で、しぜんの国保育園の保育士として働いている南部このみさんが描いたそうです。

 

新しい建物には、他のクラスに気づかい無用の、思う存分音楽を楽しめる「音楽室」や、子ども達が顕微鏡などを使って研究する「研究室」、光と影を観察できる「光の部屋」など、夢のような環境。齋藤先生も楽しそうに話されます。

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この絵は,研究室。

なんだか、話を聞いているだけでワクワクしてきませんか?

 

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齋藤先生に、しぜんの国保育園の理念として、なぜ芸術を大切だと考えるのかを聞いてみました。

 

芸術は、自分が動かなければ生まれないもの。自分で考えるその力が大切。自分の心が動いて、何かをしようとした実感を、芸術をとおして得られる。また、やらされたことは忘れていくけど、自分で動いたことは記憶に残る。

なるほど、確かにそうです。こども芸術学科の学生も、制作に向き合い、試行錯誤を重ねて問いを重ねています。

 

なぜ、自分は表現するのか?

何のために表現するのか?

どのように表現するのか? と。

 

齋藤先生は、たくさんの夢を、現実のものにするべく楽しみながら努力されているのだな、と感じました。

 

では、最後に、若い人達にメッセージをお願いします。

 

「保育というと型があるように思うかもしれないけど、そんなことはない。保育とは人間が人間とコミュニケーションすることだから、自分なりの言葉で接して欲しい。(保育の)技術ももちろんあるが、保育士免許のために勉強するだけでなく、保育者として一生こどもと関わってほしい。それが出来たとき、それは大きな喜びになります。」

 

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参加した学生は、一人ひとりこの言葉を胸に刻んだことでしょう。

 

そして、最後に齋藤先生が作られたこどものためのCD、タイトルは「COINN」。ソロ活動をする音楽家4人が集まって作ったそうです。

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なんと、齋藤先生、6/2(日)、京都でライブをされます!

しかも、京都造形芸術大学、高原校舎に近いPrintzです。

 

齋藤先生、有り難うございました!

 

(森本玄:教員/絵画)

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