こども芸術大学

6月17日 6月誕生会「跳び越えた1日」

今日は6月の誕生会がありました。

 

こども芸術大学のお誕生会はすべてが手作りです。朝からおやつ作り、お誕生会をする部屋の飾りつけ、お誕生日プレゼント作りなど子どももお母さんも大忙し。

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朝の会が終わると、誕生会のはじまりはじまり。

誕生月の子どもとお母さんは、おめでとうという気持ちのこもったみんなの作品を身につけ入場します。

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祝われる子どもとお母さんは、みんなの前に座り、1人ずつインタビューを受けます。司会は先月誕生会で祝ってもらった子どもとお母さんです。

「おたんじょうびはいつですか」「おいわいはしましたか」「みんなでおめでとうをいいましょう」と子どもにもお母さんたちにも丁寧にお話を聞いて、インタビューの最後にはみんなでお祝いの言葉を言えるように投げかけてくれます。お母さんには我が子から一言もらいます。子どもたちは思い思いの言葉をお母さんに伝えていました。

インタビューが終わるとお祝いの気持ち、おめでとうの気持ちをこめたプレゼント渡しがあります。一所懸命作った様々な「おめでとう」の形が手渡されていきます。

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そして、お誕生会を締めくくるのはその月にお誕生日を迎えた子どもの発表です。今回の発表は年長の男の子1人だけでした。この男の子は普段からとても明るく元気で、身体を動かすこともとても得意です。誕生会では跳び箱6段を跳ぶと春から決めていたのですが、ここ最近は跳び箱で遊ぶことが少なくなっていたので、念のため朝から職員とリハーサルをしました。

 

まず6段を跳んでみたのですが、跳べた感覚を忘れているのかうまくいきません。そこで、5段に下げて感覚を取り戻すことにしました。1段下げると違うようで、すんなり跳ぶことが出来ました。イメージを掴むために何度か跳んでみようという職員の声掛けで再度5段の跳び箱を跳んでもらうのですが、急に跳べなくなってしまいました。さっきまで跳べていたのに何故かできなくなり、困惑する男の子。

 

「このまえころんだうでがいたいからかな」「からだがおかしいねん」

なんで跳べなくなったかを言葉で表現しようとしてくれます。

 

そこでもう1段下げて4段で挑戦しなおします。しかし、まったく跳べません。さっき5段を跳べていたのに、春は6段もとべていたのに、なんでか4段すら跳べません。男の子は「わかった。てをつくところがあかんねん」といい、跳び箱の上にテープで目印を貼り付けます。それでも跳べません。今度は足をつく位置が悪いのだと足の位置にもテープで目印をつけていきますが、それでも跳ぶことはできません。

 

いつもは堂々としているように見える男の子から「ねぇ、どうしよう」という言葉が出てきました。もう少しお話をしていると「からだがやめてやめていうてはる」と説明してくれました。跳び方を実践して見せても、手のつく位置を実際に試してもらっても跳べなくなった男の子。この時点で1時間ほど職員とのリハーサルは行われていました。すると男の子は「わかった。いつものたいそうをしたらいいんや」と自分の身体の硬さをほぐす方法を思いつきました。

 

しかし、体操をする部屋に行ってみるともう体操の時間は終わってしまっていました。

「どうしよう」という男の子。そこで屋外でリラックスしてもらおうと、こども芸術大学から少し離れた大学内の芝生広場まで行き、走り幅跳びごっこやかけっこをしました。裸足になり走り回り、最後には太陽をみて大きく深呼吸。「からだがねていたけど、これでおきたよな」などと話ながら裸足のままこども芸術大学までの階段を登り、朝の会をするーっとぬけて、また2人で跳び箱へ向かいました。しかし。それでも4段の跳び箱すら跳べませんでした。

 

朝の会が終わり、もう誕生会は始まってしまいます。男の子は「ほかのはっぴょうにしようかな」と言い始めたのですが、そこにお母さんが入ってきて「失敗してもいいし、挑戦だけでもしてみたらどう」と言ってくれました。
迎えた発表本番。

 

今回の跳び箱はうまくいかなかもしれないと思いつつ、助走をするためにホールの1番奥まで下がった男の子に「深呼吸しよか」と声をかけ、2人で3回ほどじっくりと深呼吸。「身体はもう起きたし、大丈夫」と伝えると「あ、わかった。おきゃくさん、みんなサラダやとおもえばいいんや」と応える男の子。
次の瞬間、沢山の子どもと大人が見守るなかで男の子は軽々と跳び箱を跳びました。

たった一回きりの本番で、あっさりと跳んでみせたのです。
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「緊張」というものに対して色んな工夫をし、時にはそれを言葉にすることで目の前にある壁と対峙した男の子。

目の前にある困難を自分で解決して、最後にはそれを文字通り跳び越えてしまうその逞しさ。

今回の発表を経て、この年長の男の子は何かを乗り越える、跳び越える強さを自分の力と知恵で掴みとったと思います。

 

緊張のあとには緩和があります。緊張感みなぎる発表のあとには手作りおやつをみんなで食べ、誕生日を迎えた子どもとお母さんたちの小さい頃の写真をクイズ形式で発表し、今月の誕生会も無事終わりました。

 

生きていく力。逞しさ。挑戦する大切さ。

今回の年長の男の子の発表を通して、見ていた子どもも大人も様々なことを感じ、学ぶことが出来ました。

おたんじょうび、おめでとうございます。

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(村瀬浦人)

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