- 2013年5月30日
- 日常風景
こどもの時間×学生の時間。(4)|3・4年次「Czemi」
こども芸術大学の年長さんと年中さんを招いてCゼミ3回生と4回生が
毎週木曜日に楽しい企画を展開しています。最終回です。
学生の言葉も交えて報告します。
普段は静かな午後の4階の階段に元気な子どもたちの声が聞えてきました。
今回も楽しみにしてくれているのが声から伝わってきます。
そして、こんにちは。
さて、今回のテーマは「空を飛ぶ」です。
いつものように絵本の読み語りです。
今回の絵本は「翼をください」です。
(Heinz Janisch Selda Marlin Soganci Donzelli editore出版)
いろんな翼が次々に出てくる、とてもきれいな絵の絵本です。
子どもたちはもう、絵本の中の世界にいるようです。
●子どもの側にいた学生の言葉です。
絵本の読み語り中に、ぱたぱたと飛び始めたHくんの姿が印象に残ってます。
始めは、読み語り中なので座って聞こうねとHくんをぎゅっと捕まえたのですが、
するっと腕の間から抜け出して飛び始めたHくんの姿が、ちょうちょを
捕まえて逃げられたみたいでなんだか可愛らしかったです(^^)
読み語りだけで、世界に入っていることがすごいなと思いました。
読み語りが終わると…。
どこからか翼をつけた学生が現れました。
学生たちは前日子どもたちのことを思いながら、
いろんな形の翼や羽根をたくさん作って準備してくれていました。
子どもたちは口々に
「ちょうちょの羽根ちょうだい!」
「私は小鳥の翼の形の!」
「私は天使の翼!」
「ボクはドラゴンにする」
「ボクはドラキュラ!」
と早く作って空を飛びたい気持ちでいっぱいのようすです。
(あれっ、ドラキュラに翼ってあったかしら…?)
●学生が印象に残ったこと
いつも一緒のIちゃんとKちゃんのやりとりが印象的でした。
この日も「服を交換しよ!」などと仲良しならではの会話が聞こえていました。
しかし、翼選びのとき、ふたりの好みが分かれました。
Iちゃんは「ちょうちょの形の羽」を、Kちゃんは「ドラキュラの翼のかたち」を選びました。
きっと私と同じかわいい「ちょうちょ」の羽をKちゃんも選ぶだろうと思っていたIちゃんは
一瞬、驚いた表情を見せました。
いつも一緒のふたりですが、好みの違いが出てきたのでしょう。
そして、自分の好みもはっきり言えるようになってきたのだと思いました。
けれど、IちゃんはKちゃんに「ちょうちょ」の羽をちらっと見せながら
「ドラキュラがいいの?」と、一緒の羽にしないのという意味もこめて尋ねました。
姉妹のようにいつも一緒のふたりですが、意見や好みの違いも
認め合って仲良しが続いていけばいいなと思いました。
さあ!みんなも翼をつくってみましょう。
これは、小鳥さんの翼。
なぜか、ドラキュラの翼。
●J君とSちゃんとの会話です。
J君の横で蝶の羽を塗っていたときのことです。
J君 「うまいねぇ、それはオオチョウチョだね!」
学生 「オオチョウチョってどんな蝶?」
J君 「王様のチョウ!一番きれいで強いやつで、敵が来たら一番に気づいて逃げられる!」
「それからきれいな羽で油断させて敵を吹き飛ばせるんだよ」
「羽でビュオオって!……きれいだねぇ、でも僕が倒す!」
「僕はドラキュラ」
丁寧に、丁寧に虹の翼を塗っています。
この羽はお空を飛ぶからお陽様とキラキラとお花のふわふわを描いたそうです。
素敵な翼の完成です。ほら、かわいいでしょ!
空を思い切り飛んでいます。指先、手首までしなやかに動いています。
子どもたちが空の上を飛んでいるようにと
学生たちがブルーシートの上に空を描いて準備しておきました。
けれど、子どもたちには絵の空は必要なかったかもしれません。
もっと、もっと大きな空を飛んでいるようでした。
●学生とKちゃんの会話
Kちゃん「魔法の種を集めて!種を蒔いてドラキュラから世界を守るの!」
「この金色のタネはいいかなー?」
(ブルーシートから剥がれた絵の具の粉を見立て)
学生 「いいよ。」
Kちゃん「次は太陽の近くで蒔いて虹をつくろう。」
「自分たちの住んでる世界は自分たちで守るの!」
実はKちゃんは活動が始まった時から、黙々と虹の羽を丁寧に、静かに作っていました。
周りでドラキュラやドラゴンが暴れ回ろうと、
小さなかわいい小鳥が、ちゅん、ちゅん、と啼きながら飛んでいようと
自分の世界の中だけで、楽しんでいるように見えました。
しかし、お友だちの言葉はちゃんと聞いていて、みんなの世界に入っていたのです。
子どもの世界は面白いですね。
翼をモチーフにそれぞれが自由に自分の世界で楽しんでいるように見えながら、
その場にいる子どもそれぞれの物語が暗黙のうちにつながっていくようです。
誰かの号令が無くても、いつの間にかみんなでひとつの世界を築いているように見えました。
お掃除の時間になってもみんな翼を着けたままでした。
ドラキュラもお掃除をしてくれました。いい子のドラキュラですね。
お掃除が終わっても子どもたちは翼を外そうとはしませんでした。
まだまだ子どもの中では物語が続いているのでしょう。
計画していた、こども芸術大学の子どもたちとCゼミの学生の4回の活動は
無事に終えることができました。
学生たちはこの活動中にも、たくさんの気づきを子どもたちからいただいたことでしょう。
その気づきをこれから学生たちは絵本という形で表現します。
どんな絵本が出来上がるか、今から楽しみです。
また出来上がりましたらアップします。
この授業にご理解とご協力いただきました、こども芸術大学の親子とスタッフの
みなさんに感謝いたします。ありがとうございました。
(梅田美代子:教員/イラストレーション/グラフィック)