こども芸術学科

ふくしまの子ども達と、自然×アート体験報告!

「空気を思いっきり吸って」

 

こども芸術学科芸術系教員の村山による、福島でのワークショップ活動報告です。

福島県の外れにある、西会津町の西会津国際芸術村にて、自然を介したワークショップを行いました。対象は、福島県の南相馬周辺の親子の方々に参加していただきました。東日本大震災にて大きな被害を受けた南相馬周辺は、常に原発からの影響下での生活を余儀なくされています。

 

ワークショップ主催:国際NGOAAR JAPAN

場所:西会津国際芸術村

日時:20161016日(日曜日)

対象:子ども17名、大人15

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今回は、福島のある地域では外で十分遊べない環境下にいる子ども達に、普段出来ない自然体験とアートの体験が出来たらと思い、西会津に伺いました。

 

西会津は、アートプロジェクトの参加作家として2014年から毎年来ている場所で、まさに自然そのものが見て感じられる、とってもいいところです。

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さて、ワークショップは、まず芸術村の木造校舎の裏山に入り、散策しながら村山が考案しました、植物で絵を描く「緑画(りょくが)」手法での制作を行いました。草などを直接手で持ち、紙や布などに擦り付けて描いて行く手法です。美術家の村山修二郎が、唯一無二の絵画技法として形式化させたものです。

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はじめは、恐る恐る葉に触れていた子ども達も、時間と共に顔が活き活きしてきて、中には、枝で描いたり、きのこで描いてみたり創作が止まらなくなる位制作が進み、自然の色の凄さや香りを楽しみました。

 

ふっかふかな土を踏みしめながら、湿度のあるさわやかな空気を吸って、鳥などの声を聞き、使いたい草葉を探します。制作後残った葉などは、すべて土に還します。

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この国際芸術村は、中学校が廃校になった木造の校舎を再利用して2002年からアートセンターや様々な役割を展開している素晴らしい場所です。年間通じて様々な企画展やイベントを行い、地域コミュニティの中心的な場所になっています。

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今回は、二本立てのワークショップなので、次にみんなで草木塔をつくります。

草木塔とは、本来、石碑として山形県が源流で多く置かれていまして、身近な自然である草木に感謝するものです。今回は、草木のみでの共同制作になる新しい試みは、植物で絵を描く制作も含め、まさに草木に感謝し、命を少し分けていただくと言う考えを大切にするためにも、皆で協力して自然への思いを結んで行きました。

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生け花のようにする人もいて、とても素晴らしい草木の草木塔が出来上がりました。

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 この2つの草木塔は、芸術村に一つと、花見山と言う場所に置かれることになりました。石碑と違い、生の草木ですので、時間が経つと枯れたり朽ちたりして行くことになります。自然に還ることも想定しての草木塔になっています。

 

 今回の南相馬周辺の子ども達と時間を共に出来て、大変嬉しかったですし、東日本大震災はまだまだ終っていないと言うことを心に刻むことが出来ました。他エリアの方々が、この震災をいかに自分のものとして意識下出来てそれを忘れないでいることが出来るのか、とても重要なことだと思います。

 

最後に、参加いただいたお子さんのご両親に、ワークショップなどに関してアンケートを書いていただきました。その中で、いくつか質問をした内の2つの質問の解答を下記にて見ていただけたらと思います。震災後の、身近な環境の大きな変化は切実なものがあります。他地域の方も、現地の方に寄り添うように一緒のことと考えて、共有して行くことが大切です。特に、子どもが外で遊べる環境、いろんな体験が出来る環境が現地や現地外でも、今後さらに充実すうように施策して行きたいと思います。

 

[西会津国際芸術村ワークショップアンケートの中の解答抜粋]

 震災以降、子どものあそび場はどのようなところに行きますか?

   部屋で遊ぶのが多くなったようです。

   室内が多いです。

   部屋の中が多くなっている、ストレスがいっぱい。

   外遊びをさせたいので、公園、海など、外で遊べる場所。

   あまり線量の高くない所で、遊ばせるようにしていました。

   水族館。

   屋内遊具施設。除染すみの公園。

   公園。

   室内運動場。

   室内の遊び場。

   室内遊び。遠い場所の海、山。

 

 □これからの子どもの学びの環境や教育に関しての、理想や理念を教えてください?

   いろんな場所で、いろんな体験をさせていきたいです。

   森の中、自然の中で遊ばせたい。

   放射能を気にせず、外あそびが出来るように、早く環境がもとにもどって欲しいと思います。

   親子で学べるレクリエーションがもっと欲しい。

   デジタルに頼らない環境を作る。

   だれかの真似ではなく、オリジナルに育てること。

 

「だれかの真似ではなく、オリジナルに育てること。」の言葉には、ぐっとくるものがあります。これは、こども芸術学科の幼少期の子どもの成長に関わり、そこに芸術教育を合わせ持つことで、より多くの子ども達が創造的、先進的で人間力を備えた人材を輩出したいと言う思いと合致しています。厳しい現実の中の今だからこそ、独自の芯を持った心を育てることからはじめると言う強さは、必ず未来につながるのだと思います。

今回の、ワークショップを介して、様々なことを学ぶと共に、子どもの笑顔っていいなーと、またそれを見守る親やおばあちゃんの笑顔も素敵でした。そんな普通のことの素晴らしさと、しかし切実な現状も合わせてまだ在ると言うことは、確かに胸に刻み、今後のさらなる活動を展開して行きたいと思います。

(教員/村山修二郎)

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「フィールドワーク in 喜多方」

さて、こちらは西会津から比較的近い、同じ会津の蔵の町の喜多方です。学生の皆さんには、フィールドワークを授業の中で多く課していますが、私も常にフィールドワークをしていますので、今回は喜多方で見つけたものを紹介します。

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酒蔵です。水が美味しかった。喜多方は、雪深い場所ですので、雪が残りその雪解け水が至るところで、湧き出ています。

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こちら、うるし美術館です。会津は、漆塗りが有名です。

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まん中の壷は未完成で、ここから表面のうるしを削るといいますか表面をヤスリなどで磨いていくと、独特な模様と艶が生まれるとのことです。でもこのままの方が存在感凄いですね。

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喜多方駅方面からだいぶ歩きまして、自然なたたずまいの美容室を発見しました。店内も、普通の家の感じでありながら美容室の椅子があり、自然を取り込みつつ家の中で出来る美容院の在り方は先端を行っているようにも感じました。

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子どもが描いた、きれいなまちのポスターの後ろで、崩れ落ちる民家あり。高齢化が進み、持ち家の主が亡くなると、どうにもならなくなってしまったこのような民家は、近年よく見かけますね。

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家の中にツタが入り込んでいます。地方の廃墟などで良く見かける風景ですが、植物の生命力は凄いですね。

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とり型の壁発見です。偶然も必然と言える造形美ですね。

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ポストが緑に囲まれて気持ち良さそうです。

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地元の展覧会のポスターですが、こちら手描きでした。他の場所で、同じ構図で同じ文字であったので、沢山この山を描いた方がいると言うことです。

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プレハブ小屋のような保育所でした。子どもの声が遠くから聞こえました。ほっとしますね。冬は寒そう。

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昭和レトロのものを置いてある店内での撮影。いいですね、音を想像するだけで、これもアートです。

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こちら、喜多方市役所前です。福島の公共施設にはほとんど、この機械が置いてあります。線量計です。

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最後に、神社のとなりにありました公園です。遊具の下の草を見ると、子どもが遊んでいるか遊んでいないかすぐわかりますね。寂しいです。近年子どもも少なくなり、地方は統廃合で小学校がどんどん廃校になり、一箇所のまとめられて、行き帰りはバスがとても多くなっています。ですので、地域ごとの部落や公園で遊ぶ子ども達が消えてしまっている現状です。地域に子どもがいない、子どもの声が聞こえないという寂しい現実があるのです。                                          

あまり行かない地でのフィールドワークの中では、かなり多くのことを感じ気づきがあります。心の純度を研ぎ澄まして、その地に立つと、きっとその地がいろんなことを教えてくれます。                                       

少し長くなりましたが、福島でのワークショップと、フィールドワークの活動紹介でした。

 (教員/村山修二郎)

 

 

 

 

 

 

 

 

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