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2016年12月13日  授業風景

【歴史遺産コース】スクーリング報告 文化遺産学特論・東京

瓜生山の紅葉

京都も時雨の季節となりました。みなさん、いかがお過ごしでしょうか。今回はスクーリングのご報告です。先月11月25日(金)~27日(日)、外苑キャンパスにおいて文化遺産学特論が開講されました。

 

この授業では、数ある文化遺産のなかでも、とくに有機質(彫刻や紙、漆器など)の文化財の保存、修復について学びます。その特色は、実際に保存修復の現場で携わる専門家の方から、実物資料を用いつつ、その技法について講義をしていただく点にあります。

 

初日の午前中は、講義全体を俯瞰する意味で、日本における木質文化財(仏像彫刻・漆製品など)の保存修復の前提となる考え方について学びます。

 

例えば、漆は「不可逆性(ふかぎゃくせい)」の素材といって、一度塗布すると溶剤などで取り除くことはできません。

 

実は文化財修理の世界では、こうした不可逆性の素材を用いることは原則的に行わないことになっています。なぜならば、修理に際して欠損部分を補てんしたとしても、いつでも修理のやり直しや「オリジナル」なものに戻すことが可能であることを「原則」としているからです。

 

しかし、漆は文化財修復において使用されています。それはなぜなのでしょうか。そうした文化財保存修理の考え方と実際の作業のあり方について、実際のモノを通して学ぶのが、本講義の目的といえます。

 

さて初日午後は、仏像修復工房の見学です。都内の某所にある工房を訪ねて、現在修理中の仏像とともに、講義をお聞きします。残念ながら、写真はNGですので画像はありませんが、今回は平安期の仏像をはじめとして、普段間近で見ることのできないような仏像の修理の様子や、その構造(寄木造や割矧ぎといった技法)、道具、素材などについて、じっくりとお話をお聞きすることができました。

 

二日目は、「装こう文化財」についてです。掛軸や屏風に仕立てられた絵画などを総称して「装こう文化財」と呼びます。日本の文化財のなかでも数の多いものですが、カビやシミ、虫害など、損傷しやすいものでもあります。

 

授業では修復工房での修理の様子、手順などを画像でご説明頂いたうえで、実際に修理のひとつである「裏うち」を体験します。

修復の道具たち2

 

例えば、虫害を受けて穴が開いてしまった「本紙(ほんし・絵や文字のかかれた紙などのこと)」は、穴を補てんし、何らかの強化してあげなければ、読むことや手で触ることすらできなくなってしまいます。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

そこで行うのが、「裏打ち」です。本紙に別の紙を裏に貼り付ける作業ですが、これがなかなか難しいものです。言葉でご説明するよりも、実際に作業を行っていただくことが一番ですので、詳細はぜひ授業で体験してみてください。

 

二日目2

【本紙を湿らす作業です】

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

【糊を塗布した裏打ち紙を、本紙に重ねます】

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

【乾燥のために板に貼ります】

 

学生の皆さんも四苦八苦されていましたが、無事全員「裏打ち」を完成することができました。簡単そうで奥深い修理の「技」に、みなさん感銘を受けられたようでした。

 

さて三日目は、漆製品の修理です。漆と一口に言っても、実は種類がたくさんあります。そのうち、日本で用いられてきた漆は、現在ほとんど生産されておらず、そのほとんどを文化財修理に使用されています。それではもちろん不足するため、多くは中国からの輸入です。ちなみに日本の漆器生産で使用される漆の約99%は中国産だそうです。

 

三日目1

さて授業では、そうした漆の性質や修理の現場の説明などをして頂いたのち、実際の漆器を用いて、修理前診断の実習です。

 

修理を行う前には、どのような製品であるのか、どの部位が損傷しているか、といった詳細な調査が必要です。その調査をもとに、具体的な修理計画を立てるからです。

 

三日目2

そうした調査をグループで行い、発表して頂きます。みなさんじっくりと観察されて、的確な発表をされていました。こうした事前の調査が、その後の修理で大きな役割を果たすのです。

 

文化遺産学特論ということで、専門性の高い内容も含まれていますが、みなさん熱心に学んでおられました。この授業を受ければ修理の技術を体得できるというわけではないですが、その考え方や作業のあり方を学ぶことで、文化財の保存や修理が、いかに高度な職人技によって支えられているか、ということを理解して頂けたのではないかと思います。

 

日本は湿潤な気候から、有機質の文化財の損傷する可能性が高い環境にあります。それらが今日まで数多く残されてきたのは、先人の智恵と努力の賜物といえます。そうした技術を、本物を通して学ぶことができ、学生の皆さんもよい学びの機会となったと思います。来年は、いまブログをご覧の皆さんも、ぜひご一緒に学びましょう!

 

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