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2017年6月20日  インタビュー

教員コラム紹介③「ペンギン・プールのお話」/今村信隆教員

 

ペンギン・プールのお話

博物館学芸員課程/今村信隆教員

 

1930 年代につくられたロンドン動物園の旧ペンギン・プールのお話です。

設計は建築家オブ・アラップ。白く塗られたコンクリート製のスロープが優雅に交差する様子は、見た目にも美しく、人気を博したそうです。

けれどもこのプール、当のペンギンにとっては喜ばしい施設ではなかったといわれています。滑りやすいスロープを慎重に上ったり下ったりすることは、ペンギンの足腰に不要な負担を与えていました。スロープの下に広がるプール自体も、ペンギンの自然な行動を誘発するのに十分なだけの水深をもっていませんでした。そして最大の問題は、プールが白色に塗装されていたということです。

ご存知のとおりペンギンには、さまざまな種類がいます。寒冷な地に生息するものもいれば、温帯性のものもいます。しかし、プールを白く塗ることによってこのプールは、ペンギンはすべて、雪と氷に囲まれた寒冷地に生息するのだというイメージを与えてしまいました(実際に飼育されていたのは、温帯性のペンギンでした)。

人間によって特定のイメージを与えられ、本来の行動を制限されていたペンギンを見た来園者は、 はたしてペンギンの「現実」を知ったといえるでしょうか。

 

しかしこのことは、かつてのロンドン動物園だけの問題ではありません。動物園も含めたすべてのミュージアムが、実は似たような課題を抱えています。立派な展示室に並び、照明によって豪華に演出された普段使いの民具。ガラスケースのなかに入り、開くことのできない襖絵。展示台に恭しく載せられた遠い国の仮面。つまりミュージアムにやってくるこれらのモノは、もともとの意味とは別の新しい意味を、展示の場で受け取っているのです。

しばしば、ミュージアムの「顔」だといわれる展示。ただしこの「顔」は、ときに化粧をします。 博物館学を学ぶということは、こうした化粧の方法や意義を学ぶことでもあるといえるでしょう。

 

 

 

博物館学芸員課程|資格課程

 

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