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2017年10月4日  授業風景

【芸術教養学科】Webに加えて、芸大ならでは対面授業も!

 みなさん、こんにちは。KUADプロダクションにはじめて文章を書かせていただく、芸術教養学科の上村です。私は大学の公開講座「藝術学舎」の運営に関わっておりますが、そこには通信教育部の科目としても単位認定されている面白い講座がたくさんあります。本学通信教育部には芸術教養学科のように全く対面授業に参加しなくても卒業できる学科もあります。しかし、そのことはたしかに忙しい社会人にとってメリットだとしても、それに加えて「藝術学舎」などを利用して、少しだけでも対面授業が受けられたら、それはまた大きな学びの効果が期待できるのではないでしょうか。そこで今回は藝術学舎講座の一例として「楽しく学ぶ古典技法 テンペラ画」のご紹介をしたいと思います。

 たとえば、ヨーロッパ美術史の講義を受講している中で、「テンペラ」という言葉に出くわしたとき、どうするでしょう? 意味がわからなければ、教科書や辞書を見ると「テンペラ」が「調合」を意味し、西洋美術では卵と顔料とを調合して描く技法を指すことがわかります。しかし、それだけではなかなかテンペラという技法が実際どのように描かれるのか、またそれがどんな特徴を持つ画面を作るのか、ちょっとわかりにくいと思います。しかしそんなとき、専門家から直にテンペラ画を描いてみる授業を受けられたなら、どれほど理解が進むことでしょう。

 ちょうど機会があって、藝術学舎でテンペラ画の講座をご担当の今井康雄先生より、講座にかける思いをお寄せいただきましたので、以下引用させていただきます。

 

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 数年前、通学部の洋画コースで最初にテンペラの授業を持たせていただくことになり、それに先だって洋画コースの先生方にアドバイスをいただきました。そのなかで、川村先生がおっしゃるには、「古典技法や具象画に限定してしまうのは、逆に生徒達にテンペラは古典絵画や、具象画にしか向いていないというように固定概念を植え付けることになるので良い考えではないし、むしろたとえ抽象画でも、こちらが思いもつかないような面白い作品が出てくることがままあるので、受講生達に自由に選ばせた方が授業としての広がりや奥行きが出て、受講生同士の間でも感化しあって面白い授業になると思います」という御意見を頂戴いたしました。私も全くその通りだと考え現在もテンペラの授業をさせていただいております。実際、そのような考えで授業をさせていただくと、本当に川村先生のおっしゃられた通りに、受講生のみなさんはこちらの思いもよらない作品を制作してくださり、合評の時に並べて見て、たとえ同じ技法で描いたとしてもこのように豊かな幅が出てくるということに、毎回、私自身も受講生同士も驚き、感心し、そのこともひとつの大きな学びの要素となっております。 

 また、私のテンペラの授業では、既成の下地を使わず全て自家製の下地を支持体として使用しています。学舎での授業では時間の都合でかなりの部分を私自身が準備して行くことにはなりますが、それでも、支持体というものを考えるきっかけにもなりますし、そして白亜地という支持体の使い心地の良さも体験することで、生徒が今後、制作する際の支持体の選択肢の一つにもなり得ます。白亜地はテンペラだけでなく、混合技法にも、油彩にも、そして、日本画にも使用できるという利点があります。通学部で教えた学生たちの中には、白亜地を好んで自身の制作に使い現在も制作を続けているものもおります。その学生が言うには、市販のキャンバスで描いていてずっと描きにくかったが、吸収地である白亜地で描くようになってからとても描きやすいということです。白亜地を作る手間と時間の大変さにもかかわらず、大きな作品でも白亜地を自分で作り制作している姿勢には私から見ても脱帽する程です。また、白亜地の上に描くと顔料の発色が他の下地と比べてとても良いのもその特徴の一つです。 

 私はこの夏、とあるギャラリーで、扇子展に参加させていただいていたのですが、その会場に、以前、学舎で私のテンペラの授業を受けていただいた方がお見えになり、通信の日本画の非常勤の後藤先生と共にお話をさせていただいていたら、何でも、わたしのテンペラの授業を受けた事がその方の作品制作のターニングポイントになったのだということです。その方は、お孫さんの写真を下絵としてお持ちになったのですが、金箔地にお孫さんをおもちゃと一緒に色彩豊かに描いていただいたのを私も良く覚えていました。日本画での卒業制作ではその方向で進めて制作して、今現在もその方向で制作をしているとのことでした。学舎で教えさせていただくだけではなかなか継続して受講生一人一人の制作の展開の在り様は知るよしもないのですが、思いがけなくそのような話を伺う事が出来てとても嬉しく思いました。 

 その他、わたしのテンペラの授業では、媒材の事、顔料の事にも触れます。とくに顔料については、粉体で使用することもあり、実際に顔料を練って制作していっていただく前に、予備知識として知っておいていただかないといけない点があります。それは顔料の由来やそれぞれの特性、毒性の有無、耐光性、耐酸性、耐アルカリ性、有機性、無機性といった事です。チューブに入った絵具を使用するときはそれほど気をつけていない点を認識していただく必要があるのです。また、顔料の事を知ることで、チューブの絵具を選ぶ際にも色味だけで選ぶのではなくその他の要素も考量して選ぶきっかけにもなると思います。日本画の絵の具ではもともと粉体で使用しますが、意外と毒性のある絵具をそうと知らないでいた受講生もいらっしゃったりするので、こちらの方にも大変有意義な事には違いはないと思われます。 

 そして、これは私がよく合評の際にいうことですが、テンペラは自分の大切に思っているものを心をこめて描くのにとても適しています。受講生の中には、よくご自分のご家族やペットの写真をお持ち下さる方があります。煩雑な手順を得て下地を用意し、入念に下仕事をして、下色を施し、細筆でひと筆ひと筆画面を撫でるように仕上げていく技法なので、愛情のあるものをいとおしんで描くにこんなに適した技法はないのではないでしょうか。ワイエスの作品群がこれをよく物語っていると思います。私自身も、わざわざ遠方から新幹線にのってまで、そして、泊まりがけで授業を受けに来て下さる受講生を、またはその気持ちをとても大切に思っています。集中の授業で2日間だけのお付き合いの方たちばかりなので、おひとりおひとり出来る限り丁寧に接し、全力を尽くして臨むようにしています。授業が終わってから、後日補足したり、訂正したり出来ないので本当に自分が口にすること全てに責任を感じて、お話をさせていただいています。また、わたしは受講生に出来るだけテンペラの事を親しんでもらおうと、毎回スーツケースに詰められるだけの画集を詰めて授業に持ってきます。「先生いい加減宅配で送ればいいのに・・・。」とわらわれますが、持ってくる本は私が一冊一冊買い集めたもので、中には外国で買ったもの、外国の友達に頼んで送ってもらったものもあるので、何かの手違いで紛失してしまったら悲しいし、また授業も行えないので、恰好はみっともないんですが、そういう思いで授業に臨んでおります。 

 私がイギリスの学校で勉強していたとき、先生のおひとりがこうおっしゃいました、「チューブ入りのテンペラの絵具も売っているけど、そんなの使うくらいならテンペラなんかしなければいいんだ」と。私も同感です。効率性や迅速性や手軽さを求めるならテンペラなどする意味がないのだと思います。今は、他にたくさんの手軽に使用できる画材があるのですから。テンペラで描く、ということにはそういうある種の精神性、または心構えが必要であるということです。その点で、技法が描く者を選んでいるといってもいいのだと思います。 
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 「大切に思っているもの」を描くのにうってつけの技法なのですね。「技法が描く者を選ぶ」というのも面白い話です。芸術教養学科に限らず、他の学科、コースでの学びも力強くバックアップしてくれる講座です。入学前でも入学後でも、興味のある方は是非どうぞ。

 

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