文芸表現学科

児童文学作家・宮下恵茉さん特別講義レポート

先日行われた宮下恵茉さんの特別講義を受け、
2回生の辻本智哉くんがレポートを書いてくれましたので紹介します。
 
 
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一年前に読んだ本の内容は覚えていなくても、子供の頃読んだ本は心に残っているものです。これを書いている僕も、小学生の頃は図書館にこもって本ばかり読んでいた記憶があります。児童文学はめくるめく活字世界への入口。だからこそ、児童文学作家は子供の人生に大きな影響を与える職業です。
 
出版業界全体が停滞し「本が売れない」と叫ばれる中、児童文学は時代の流れに逆行して売り上げを伸ばしています。本日はそんな右肩上がりの業界から現役の児童文学作家、宮下恵茉(みやした・えま)さんが特別講義にいらっしゃいました。
 

左:辻井南青紀先生(本学科教授) 右:宮下恵茉さん

左:辻井南青紀先生(本学科教授) 右:宮下恵茉さん


ミヒャエル・エンデ『モモ』—宮下さんが子供時代に読んで影響を受けた一冊

ミヒャエル・エンデ「モモ」—宮下さんが子供時代に読んで影響を受けた一冊


『ジジ きみと歩いた』『あの日、ブルームーンに。』など数多くの著作で知られる宮下さんですが、
「ひと月に原稿用紙500枚以上は書いている」
「去年は17冊出してもらって、今年も10冊出る予定です」
という言葉と多筆ぶりに、学生がざわめいていました。ちなみに文芸表現学科の卒業制作の上限は200枚ですが、その2.5倍の量をひと月に……。
「推敲することが大事」と話され、たくさん書いた原稿を見なおし、何度も推敲することでブラッシュアップしていくそうです。こうした自筆の原稿以外にも目を通す原稿があるとのことで、文章に対するすさまじいまでの体力と精神力があるなと感じました。
 
宮下さんは家事や育児を中心とした忙しい「お母さん生活」を続けたおかげで、複数の作品を同時進行で書き進められる力がついたと語られました。また執筆の際モデルにしているのは「子供時代の自分」とのことで、僕は書くという行為がいかに日頃の生活ひいては人生全体と強く結びついているかを再確認しました。
 
また新人賞審査員を勤めた経験から語る応募作の傾向、新人賞受賞後のセルフマネジメントについて、シリーズものを書く大変さ、「書くことを好きになる」ことの大切さなど、リアルな作家活動と、並行する生活について惜しみなくお話しくださいました。小説家志望の学生はもちろん、僕のようなフィクションを書かない学生にもたいへん参考になったと思います。
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大学を卒業されてから15年かけて作家デビューを果たした宮下さん。本人もおっしゃられていましたが、宮下さんがデビューできたのはやはりどんな時も書き続けてきたからでしょう。「書き続けること」と「書くことを好きになること」の大切さが身に沁みる素晴らしい一時間半でした。
 
 
 
文・辻本智哉(文芸表現学科2年)

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