身近にある器やインテリアを見つめなおす

カテゴリー: 陶芸コース
身の回りにある様々な器、みなさんはそれをじっくり見つめてみたことがありますか。身近すぎて普段あまり注意を払わないものたちかもしれませんが、それらが皆さんの感性に影響しているかもしれません。

器を見ることそして知ること

皆さんが食事に行かれた時、皿や鉢に盛られた料理に目をやることはあっても使われている器をじっくり見られたことはあるでしょうか。京懐石でもフレンチでも料理人は料理したものをどのように盛り付けるかはもとより、使う器にも神経を使っています。いかにその料理が美しくおいしく見せるかもお客さまへの大事な心遣いです。
ところで器の色や形はすぐに理解できても、これらの器がどのようにしてできたかを知ることはなかなか叶いません。この器がどのような土でどうやって作られたのかを知ればその器に対する興味も増すし、良い器とはどういうものかということもわかるようになってくるように思います。見ること、知ることが刺激となり感性も磨かれていきます。美術館で展示作品を見ることだけが勉強ではありません。身近な器やインテリアに対しても自分の好き、嫌いをはっきり理解し、どこが好きなのか、どこが嫌いなのかを考えることもとても大事です。
そして美術館やギャラリーのようなニュートラルな空間で見るときと自宅やお店で見るときとで同じものが違って見えることもあります。一般にホワイトキューブといわれる美術館やギャラリーの中では物そのものの印象や表現がよく伝わります。一方、日常空間ではその空間の中でそのものがどう存在するのかも重要になってきます。そして普段使っている飯茶碗や湯呑みから家具等のインテリアまで、常にそばにあるものだけにその存在が知らず知らずのうちに皆さんの感性に影響を与えているともいえなくありません。

器を使う

普段使うものへのこだわり、そばに置いておきたいものだからこそ使う人の感性がそこに現れ、自分だけでなく訪れた人にもその人の感性、美意識を伝えることができます。日本には陶芸だけでなく染色,織、金工、木工、漆芸、紙工芸など様々な素材を使った工芸品があふれています。今一度、それらの工芸品の魅力を考えてみることはとても大事なことだと思います。普段使うもの、生活の身近にあるものであるからこそ良いものを見分ける眼を養うことは大切です。皆さんの周りにあるそれらのものを今一度見直してみる、そうするとお店へ行った時に物を見る見方もおのずと変わってくるのではないでしょうか。
見る眼を養うことと同時に良いものを使うことが物を作るときにも大きなプラスになると思います。お茶碗一つ、お湯呑み一つ、新しく自分の気に入ったものに変えるだけで食事もおいしくいただけるかもしれません。そして使うことで、物の持つ機能性(使いやすさや、手触り、持ちやすさなど)を理解でき、次に自分がそれらを作るときに大きなヒントとなるでしょう。

器を作る

皆さんも自分の感性を前面に出した自分の器を作ってみませんか。昔と違って、現代は自分だけの器、インテリア作品などが割と容易に作れる時代です。物を作るにはまず素材を知ることが大事でしょう。基本的には色々な素材に触れてそれが持つ特徴を理解することから物作りは始まるように思います。私は陶芸をやっていますが、素材といっても土は一種類だけではなく、粘土、磁土、鉄分を含む赤土、含まない白土など様々な原料があるのです。自分がどんな器を作りたいのか、そこからがスタートなのかもしれません。それでも見切り発車も悪いことではなく、何の先入観もなく素材に触れて形を作ることから、思わぬ新しいもの、斬新な表現が見つかることもあるのです。皆さんもためらわずに物づくりの第一歩を踏み出してみてはどうでしょう。そして作った後、それで満足して終わりではなく、できたものを見つめなおすことが重要です。作って、それを見つめなおす。この繰り返しが次の作品への展開と発展を約束してくれることを忘れないでください。

column writer profile
清水六兵衛 (きよみずろくべえ)
通信教育部美術科陶芸コース主任教員
1954年京都市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。その後、京都府立陶工職業訓練校にてロクロ技法を、京都市工業試験場にて釉薬技法を学ぶ。朝日陶芸展‘83にてグランプリ受賞。その後もオブジェを主体とした彫刻的造形作品を個展、グループ展、美術館企画展等で発表する。2000年清水六兵衞の名を襲名し八代目となる。現在はタタラ技法を使ったオブジェ、器、アートワークス等を発表している。