教育目標・特徴

ごあいさつ
社会人と芸術のあらたな関係を目指して

芸術活動には普遍的な価値の創出と伝達という性格だけでなく、それに携わる個々の人間の感性の洗練と技術の追究というきわめて個別的な性格も存在しています。また、近年では、経済や文化の汎地球化の流れが強まる中で、それに抗するかのように地域性を強調する流れも生まれています。しかし本来の芸術制作は普遍対個、グローバル対ローカルという単純な対立にはおさまらず、そもそも個別性・地域性と普遍性・世界性を共存させるところに大きな意味があります。

そのことを踏まえ、京都造形芸術大学大学院(通信教育)では、今日の情報化社会において個々の人間や地域の環境が芸術活動にとっていかなる意義を有しているのか、またその活動環境を作り育てることはいかにして可能なのかを実践的に研究します。これは自分のフィールドに根ざして制作や研究を続ける学生にこそ有利な専門分野であり、通信教育という手段を通じて学生個々の制作・研究と相互の交流の双方を実現しようとするものです。

そのため、本研究科の芸術環境専攻には以下の3領域と「超域プログラム群」が設けられています。すなわち、地域環境における芸術についての比較文化史的研究と制作・教育活動を探究する芸術環境研究領域、地域に根ざしつつ作品という独特の場を発生させる美術・工芸領域、地域での自然と人間の関係を具体的な空間という形で考究する環境デザイン領域。それに加えて、超域制作学プログラムとして、造形芸術やプロダクトのMFA(芸術修士課程)が設けられています。

本研究科の目標は、これらの領域で研鑚をつんだ学生たちが、それぞれの活躍する場でさまざまな形の芸術環境という花を咲かせ、それぞれがお互いを模範として、またあらたな芸術の種を蒔いてゆくことにほかなりません。これからの芸術運動の担い手となるべく、ぜひ本学での研究制作に参加してください。

京都造形芸術大学大学院 芸術研究科長(通信教育) 上村 博

京都造形芸術大学大学院 芸術研究科長( 通信教育)

上村 博| Uemura Hiroshi |教授

京都大学大学院文学研究科博士課程中退。京都大学文学部哲学科助手、パリ第四大学研究員を経て、1995年より本学に勤務。著書に『芸術環境を育てるために』(共編著, 2010)、『日常性の環境美学』(共著, 2012)、『身体と芸術』(1998)など。翻訳にC. タロン=ユゴン『美学への手引き』(2015)、J.-F. リオタール『非人間的なもの』(共訳, 2010)など。

INTERVIEW 「松井専攻長に聞く芸術環境専攻の特長」

社会を更新する芸術[超域プログラム]

このたび、新たに「超域プログラム」が開設されますが、これはどのようなものでしょう?

この芸術環境専攻は、社会のなかに芸術の新しいかたちを提案できる人材を育成する場所です。そこに3つの領域がありますが、今回、本専攻の姿勢を明確に打ち出すMFA(芸術修士)課程として「超域プログラム」を設けました。本プログラムには2つのラボがあり、ひとつは造形芸術系、もうひとつはプロダクトデザイン系。いずれも人々の感性や暮らしに変革をもたらすような作品制作をめざしています。芸術は本来、決して趣味的な愛玩物というだけでなく、社会的幸福に貢献できるものです。両ラボはそれを本専攻の中でもはっきりとめざします。他の領域も目的は同じですが、ジャンルごとの専門的研究という性格がもう少し強くなります。

芸術の社会的機能の探究[芸術環境研究領域]

では、それらの領域について教えて下さい。

芸術環境研究領域は、さまざまな自然的・文化的環境のもとで芸術の意味を理論的に考察し、新しい芸術の形を実験的に探る、野心的な研究領域です。研究も、計画・教育普及も、単にマニュアル的なテクニックを教えるのではなく、技術の背後にある意味を時代に先駆けて掘り出すことをめざします。社会のニーズに合わせた大学院ではだめです。だれもがまだ気づいていない、まだニーズと呼ばれていない何かを社会の中に見つけることが大事です。

作家や芸術教育の関係者も多く学んでいるとか。

自分の立場を捨ててまで2年間研究する意味は、やはり社会にはまだ認知されていない何かを見つけ出すことにあります。それを自分の仕事にあとからカスタマイズして応用する、ということでしょう。

挑戦的制作と素材研究[美術・工芸領域]

美術・工芸領域はどんなところでしょう。

人には、ある年齢になって初めて肯定できる過去や経験があります。大学院修了までの短い修練であれ、それが個々の人生と響き合った時、人を感動させる作品や「生き方」が生まれます。通信教育ならではの宝です。美術・工芸領域での仕事は、次の世代に向けて、今の技術や表現を将来に伝えると同時に、その宝をバトンタッチしていくこと。そのために大事なことのひとつは、素材に基づく技術の習得と開発、模写や模刻など。特に工芸系では形態だけでなく、繊維や土、釉薬など素材とその来歴から触発される可能性の探求も必要です。もうひとつはワクワクすること。いま、美術にはすごく面白い部分があるのに誰にも伝わっていません。現代美術は、外国かどこかで有名な連中がやっているような他人事になっています。自分自身がワクワクしながら現代美術をやっていると思わないと、次の世代にも何も残せません。

授業は個別指導が中心ですね。

かなり少人数なので、担当教員からにじみ出てくる考え方、姿勢が勉強になります。筆さばきやろくろの挽き方だって教員には癖や秘伝がある。特に技法の研究では少人数の利点を生かし、教員の息づかいや手業を間近に感じ「学ぶより真似ろ」を実践できる貴重な2年間になると思います。

文化遺産と住環境の創造[環境デザイン領域]

環境デザインは、芸術環境を最も直接的に実現できる領域です。ひとが大事な時間を過ごす場所をどのように作るのか。それを住宅と庭園という分野に特化して探究します。

建築ではスタジオ制をとっていますね。

東京と京都で、ひとりの建築家を中心にした「スタジオ」で学んでいますが、個別の塾のようなところで閉じて学ぶわけではありません。それぞれのスタジオをオープンにしつつ、いずれかに所属。東京の堀部さんの学生が、京都の横内さんの学生のやっていることを、合評などで横目で見ながら競い合っています。

日本庭園の学生にはプロの方も多いと聞きました。

たしかに多いです。そういう現場の苦労を知っている学生がもう一回自分たちの仕事を再整理しようとしている。他方で、実際に造園に携わってはおらず、庭園研究を志向する学生もいます。職人と研究者が一緒になっている希有な分野です。日本庭園は京都の本学ならではといえるし、建築もただインターナショナルというより、日本の、それも木造の住居を考えるという点で、日本庭園と共通していますね。環境デザイン領域も、これからの日本の文化遺産を現実に作っている場なのです。

最後の点は専攻すべてに共通するところですね。 ありがとうございました。
芸術環境専攻長 松井 利夫

芸術環境専攻長

松井 利夫| Matsui Toshio |教授

京都市立芸術大学陶磁器専攻科修了。イタリア政府給費留学生として国立ファエンツァ陶芸学校に留学。主な展覧会に「Casa sugimoto」(京都・杉本家住 宅2004年、2005年、2006年)、「World Ceramic Biennale 2005」(韓国 2005年)など。主な受賞歴は、ジャパンフローラ2000淡路花博優秀賞(2000 年)、京畿道世界陶磁コンクール(韓国)優秀賞(2003年)など。主な個展は、「事のはじまり」(江寿画廊 2002年)、「Parcours Ceramique Carougeois Biennale 2007」(スイス・ジュネーブ)など。

資料請求 あたらしいパンフレットができました。

芸術×大学院×通信 京都造形芸術大学通信制大学院 入学説明会