特別Web連載 つながる大学院 vol.03“自分に合った指導者”とつながる

マルセル・デュシャンを比較対象に、現代メディア・アートの考察を試みる。東京で社会人を数年経験し、
京都造形芸術大学の修士課程に進んだ野路千晶さんは、今、ひとつの研究テーマと向き合うと共に、自己とじっくり向き合う日々を過ごしています。

視野を、さらに広げたい。社会人から修士生へ。

美術館などに足を運び、芸術の世界に惹かれるようになったのは高校生のときです。大学時代は、岐阜県立国際情報科学芸術アカデミーで、情報と芸術が融合したような領域を学び、制作も行っていました。そして卒業後、東京のNTTインターコミュニケーション・センター(ICC)に就職。ICCは、NTTが日本の電話事業100周年を記念して設立した文化施設で、科学技術と芸術文化、サイエンスとアートを融合させたような展覧会やワークショップを開催しています。私はそこで、WEBサイトの企画や編集を通して、メディア・アートなどに関する情報を発信していました。大学時代に電子情報媒体を使った芸術を学び、社会人になってからも同じような領域に関わり続けてきたわけです。

そんな仕事を通して、様々な芸術表現やアーティストに触れるうちに、自分の中で、新たな興味の対象や考えてみたいテーマが生まれてきて、その考えをさらに深め、視野を広げたいと思うようになりました。
そのための新たな学びの場として、私が京都造形芸術大学の大学院を選んだ理由のひとつは、浅田彰先生の存在です。浅田先生はICC設立初期の基本構想に関わった主要メンバーの一人でもあり、先生がいらっしゃる大学院で学んでみたいと思ったのです。普段、浅田先生と直接お話する機会はそれほど多くはありませんが、私にとって先生は、これからどのように研究を進めるべきかといった大きな方向性を示してくれる、羅針盤のような存在です。
また、京都という街は、ちょっと外に出るとバスで重要文化財などを巡ることができ、芸術に関する研究を深めるのにふさわしい場所だと思います。

野路 千晶

デュシャンを比較対象に、現代メディア・アートを考察する。

浅田彰先生と藤本由紀夫先生の指導のもと、私が今取り組んでいる研究テーマは、マルセル・デュシャンを比較対象として、メディア・アートの現在を考察することです。デュシャンという芸術家は、芸術に使用される媒体(メディア)を拡張した方で、それまで、芸術のメディアはおおよそ絵画かスカルプチャー(彫刻)だったところに、まったく新しい概念を持ち込み、芸術の領域を大きく広げました。そこに、メディア・アートとの類似点があるのではないかと考えています。
デュシャンは、現代美術の金字塔のような存在ですから、先行研究もたくさんあります。これまでのイメージでは、デュシャンはすごく風変わりで、真意をつかむのが難しいというような捉え方をされていて、“突飛な”“ユーモラスな”という視点からの研究アプローチも少なくありません。

しかし浅田先生からは、デュシャンは表現とメディアにきわめて真摯に対峙した作家であり、今回参照する中ではさらに新しいデュシャン像を打ち出すことができたら良い研究になるのでは、というような助言をいただきました。
現在は、デュシャンに関する先行研究の文献を読んだり、月に一度東京に滞在して現代美術の展覧会の鑑賞を重ねたり、以前の仕事のネットワークを活用したりしながら、調査を進めています。研究から具体的な結論を導き出すのはまだ先の段階ですが、デュシャンとメディア・アートの比較研究から、メディア・アートの現状や、抱えている問題があるとすれば、その解決策のようなものが見えてくればと考えています。

野路 千晶

自分の方向性を再度見定めるための、時間と場所。

学部からそのまま大学院に進まれる方と、私のように一度社会に出てからとでは、大学院で学ぶ意味がまったく違ってくるのではないかと思います。私にとって大学院は、自分の方向性を再度見定めるための時間と場所をいただくところ。社会人として働いていると、自分の興味とじっくり向き合うということが、なかなか難しくなります。大学院は授業時間も少なく、再度自分の立ち位置であったり、今後の展望について考える機会を得ることができます。しっかりと腰を据えてひとつのテーマを考察するための最後の機会だと思って、今、京都造形で過ごす日々を享受しています。
また、研究以外の活動として、京都造形芸術大学大学院学術研究センターなどが運営するWEBマガジン「REAL KYOTO」の編集補佐を務め、原稿執筆なども行っています。

野路 千晶

こうした活動を通して広がった新しいネットワークも活かしながら、修了後は、「これが私の仕事です」と自信を持って言える、きちんとした仕事をしていくことが、今の私の目標です。

「REAL KYOTO」

野路 千晶(のじ ちあき)

修士課程 芸術文化研究専攻

1984年 広島生まれ
2007年 国立情報科学芸術アカデミー(IAMAS) 卒業
2012年 NTT インターコミュニケーション・センター[ICC]勤務を経て、京都造形芸術大学大学院 修士課程 芸術文化研究専攻 入学

インデックス

黄海寧

vol.02“大きなチャンスとつながる”

黄海寧:修士課程 芸術表現専攻

野路千晶

vol.03“自己の再確認につながる”

野路千晶:修士課程 芸術文化研究専攻

齊治家

vol.04“自分に合った指導者とつながる”

齊治家:修士課程 芸術表現専攻

竹内敦子

vol.05“悔しさの先につながる”

竹内敦子:修士課程 芸術表現専攻

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