VOL.32
少しの興味から
まさか自分が大学受験をするなんて、高校2年生までの私は想像もしていませんでした。小さい頃から、将来の夢は? と聞かれると「美容師さん」と答えていましたし、高校2年生まで、私自身もそうなるものだと思っていました。
小学校で始めたバレーボールを続けるため、私は全国大会を目指す強豪校と呼ばれる高校に進学しました。進路については深く考えることもなく、「美容師になる」と決め込んだまま毎日部活に打ち込んでいました。
そんな私が進路について本気で考え始めたのは、高校2年生の終わり頃のことです。きっかけは、部活の監督との面談でした。入学当初から美容師志望だと伝えていた私に、監督は何度も「もっといろんな選択肢があってもいいんじゃないか?」と声をかけてくれていました。その言葉は、その頃少しずつ進路に迷いを感じ始めていた私の心に、強く残りました。でも、答えはすぐには出ませんでした。3年生になっても部活中心の毎日で、今さら受験勉強を始めて間に合うのかという不安もありましたし、そもそも行きたい大学も決まっていませんでした。
「美容師以外に、私が少しでも気になる仕事って何だろう?」そう考えたとき、ふと思い出したのが、以前見たドラマでした。デザイン事務所で働く主人公を見て、初めて「グラフィックデザイナー」という仕事を知りました。自分のアイデアでポスターをつくり上げていく姿や、ものづくりに向き合う職場の雰囲気がとても印象的で、こんな働き方があるのだと心を動かされました。その瞬間、芸術大学も選択肢のひとつになりました。
先生の勧めもあり、まずはオープンキャンパスに参加することにしました。大学を調べる中で出会ったのが、京都芸術大学の学科紹介動画でした。そこには、「この大学は、絵が描けなくても、知識がなくても、一緒に学んでいく、特別な人だけがくる場所じゃない」というメッセージがありました。さらに、体験授業型の入学試験があることも、勉強が得意ではなかった私にとっては大きな魅力でした。今の自分のままでも、踏み出していいと思えました。
両親と一緒に参加したオープンキャンパスの帰り道、背中を押してもらい、体験授業型入試で受験することを決めました。とはいえ、部活は最後まで全力。いわゆる“受験勉強”らしいことはほとんどできないまま、本番を迎えました。手応えはまったくありませんでした。受験後はすぐに「次の大学を探さなきゃ」と気持ちを切り替えていたほどです。
そんな中で迎えた合格発表の日。授業中だったため、代わりに確認してくれた家族から届いたLINEには「合格」の文字がありました。思わず「それ、今年の合格者の受験番号で合っとる?」と返信したことを、今でもよく覚えています。
入学してからは、想像以上に課題に追われる毎日です。今でも絵は得意とは言えませんし、周りの友達と比べて落ち込むこともあります。特別な才能があったわけでも、芸大に進学するという明確な夢があったわけでもありません。それでも、ひとつひとつできることや分かることが増えていく感覚が、自分に少しずつ自信をくれています。「少し気になる」という気持ちで踏み出した一歩も、今の私につながっていると感じています。まだ卒業後に進む明確な道は見えていませんが、ここでの経験は、どんな仕事に就いても役立つものになると思っています。
情報デザイン学科
ビジュアルコミュニケーションデザインコース(現 ビジュアルデザインコース) 3年生
進徳女子高校出身
白石乃々華
































