VOL.29
好きなことを仕事に
私は幼い頃からとにかく社会や歴史の勉強が好きでした。逆にそれら以外の勉強は本当に苦手で社会と歴史しかできない、そんな子でした。授業も他の科目はやる気もなくおざなりになっていたのに社会や歴史の授業を受けている時は時間が一瞬で過ぎ、授業にのめり込んでいる自分がいました。頭のどこかで、この好きなことを仕事にできたらいいなとは思っていましたが、実際どんな仕事があるのかがわからず現実的に考えることができずにいました。他の職業に就くことも考えていましたが、考えがコロコロと変わり自分が将来何者になりたいかが全く見えない状態が高校3年生まで続きました。周りには続々と夢を持ち希望の進路まで考え行動している人がたくさんいたので、振り返ってみると夢もなく本当にこのままでいいのか焦っていた自分がいたと思います。
そんな風に進路選択で悩んでいた中、京都市京セラ美術館で行われていた「兵馬俑と古代中国」の展覧会を見に行きました。初めて本物の兵馬俑を見たときの衝撃は今でも忘れられません。そこには兵馬俑だけでなく、エピローグとして中国の修復師の方が、兵馬俑を修復している動画が流されており、その動画をみて文化財を守る仕事があることを初めて知りました。自分の中で社会や歴史に携わる職業に就くという選択肢が広がった瞬間でした。
芸術大学でも文化財の保存修復や歴史について学べることを知ったのは親の勧めがきっかけでした。親自身も芸術大学出身で芸術大学ならではの面白さを知っていたのだと思います。そして実際にオープンキャンパスに参加して、その環境を自分の目で見て、自分にはこの大学しかないと感じました。ですが私は高校も美術系の学校に通っていたわけでもないし、画塾に通っていたわけでもないので、芸術大学に入学できるのかと心配していました。しかし、先輩方や学科の説明を聞くとデッサンなどの専門的な技術で評価する入試方式だけではなく、体験授業を受けてグループで協力しながら成果物を作るという体験授業形式の入試方式があるということを知りました。京都芸術大学を志望したのは高校3年生の5月だったため、入試日まであまり時間は無かったものの、この大学に絶対に入学したいという気持ちで入試に向けて努力しました。
入学してからは本当に芸術大学という環境が自分に合っているなと毎日感じます。今までは自分の好きなことを周りに理解されなかったこともありましたが、好きなことが一緒の人と話せたり、時には自分と違う感性を持つ他学科の人と話せる環境が、とても刺激的で毎日新しい発見ばかりです。また自分の好きなことを仕事にできると知ってからは、毎日いろんなことを体で吸収し自分の知識として蓄えていくのが本当に楽しいです。自分の好きなことに全集中できる環境にすごく感謝しています。自分のやりたい事を妥協せずにチャレンジしてみるとキラキラしている道が切り拓けると身をもって感じています。
文化財保存修復・歴史文化コース
(現 文化財保存修復・歴史遺産コース)
2年生
滋賀県立高島高校出身
松尾春歩