本研究は、暮らしの中にある人工物の形が過剰にはっきりとしているのではないかという違和感を起点とし、どのような造形表現が人工物の輪郭をやわらげることができるかという研究の問いをたてた。これは実は、過剰に合理性を追求する現代社会への違和感を背景とした、人間元来の曖昧さに寄り添おうとする挑戦的な問題提起でもあった。このラジカルな探究心と粘り強く丁寧な試行錯誤により、美しくも独特な存在感のある在り方にたどり着いたことを高く評価したい。上林 壮一郎