学長賞

アートプロデュース学科
アートプロデュースコース

Title
失われた右手、残された左手──『この世界の片隅に』における両手の象徴性──
Name
秋本 麻帆

コメント

ときに鑑賞者の技量が問われる作品がある。漫画『この世界の片隅に』はそうした作品のひとつである。本論は、そのような本作を、ともすれば読み飛ばされかねないような細部に目を凝らし、漫画というメディア表現の固有性にも目を配りながら執念深く読み込んだ優れた作品論である。作家が絵に刻み込んだ豊穣な機微を、そこに立ち現れる登場人物たちの感情と感性の静かなざわめきを、筆者は見逃すことなく丁寧にすくいあげていく。鑑賞が作者/作品との協働によって「新たな作品」を生み出す営みになり得ることを教えてくれる力作である。

林田 新