本研究は農山漁村それぞれの地域で生産され用いられた野良着について、各地に残された野良着の生地を繊維レベルで丹念に観察し、比較、考察するものである。調査の結果、麻布として残されていたものでも藤布であることが糸の継ぎ方によって分かり、生産地域や交易範囲の再検証が必要であることを指摘した。本研究の調査手法は民俗博物館における聞き取り調査の不備を補完するものとしても期待できる。
溝邊 悠介