「愛は責任になりうるか」。自らの価値観を形作る不可逆な要因への恐怖と、その克服が自己否定に直結するという絶対的な矛盾。本作はこの深淵を、豊かな語彙、鋭利なメタファー、美しい描線、緻密に練り上げた造本と展示で具現化した。その仕事は観る者を物語の当事者へと引きずり込む。これは単なる優秀な卒業制作ではなく、作者の鋭い眼差しによって姿を現した「愛」という名の呪いが、我々の認識に深く突き刺さる傑作である。
井本圭祐