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芸術学コース

2017年02月28日

【芸術学コース】コース主催 特別講義の報告

みなさんこんにちは、芸術学コース教員の池野絢子です。

さて今回は、2月12日に外苑キャンパスで行われた芸術学コース主催の特別講義の模様をご報告します。
特別講義は、芸術学コースが毎年2回(京都、東京で1回ずつ)行っている公開講座です。

昨年11月は京都で開催し、講師のマリーナ・プリエーゼ先生にイタリアの現代美術についてお話いただきました(そちらの ブログ記事もぜひご覧ください)。今回はその東京版です。

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毎回、学内外で活躍されている様々な先生からご専門のお話を伺えるのがこの企画の楽しいところ。
今回お越しいただいたのは、保存修復学がご専門の田口かおり先生(東海大学)。
田口先生は、保存修復学を大学で研究するかたわら、ご自身が修復士として修復の現場で活動していらっしゃいます。

その田口先生に、「《マドンナ・ピカソ》とめぐりあわない時間たち——美術作品の保存修復とは何か」と題して、保存修復の入門講義をしていただきました。

田口先生は、まずご自身が関わっておられる「修復」が、どういうお仕事なのか説明されました。私たちが一般に「修復」という言葉でイメージするのは、壊れた芸術作品を修理する図だろうと思います。ですが、修復に関するお仕事はそれ以外にもあります。保存修復に関する理論的・歴史的研究、それから展覧会コンサバターという、展覧会時の作品の搬入・搬出とコンディションチェックに関するお仕事です。修復士には色々なスキルが求められるのですね。

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それから田口先生は、部分洗浄や、中間色による補彩といった、西洋において過去に試みられてきた修復方法について、図版を見せながら解説されました。

今回の講演会ポスターにも登場する聖母子像、通称《マドンナ・ピカソ》は、この部分洗浄という方法で生まれたものだそうです。表面の層を一部洗い落とすことで、その下に描かれた別の絵が現れ、まるでピカソの絵のように一見したところちぐはぐな絵になってしまったとのこと。見た目は奇妙ですが、そこには、芸術作品が経験する時間や、修復方法のありかたをめぐる熟慮があったことが、田口先生のお話からわかりました。

そして最後に、田口先生がコンサバターとして関わられた最近の展覧会「ティツィアーノとヴェネツィア派」展から、興味深い修復例を紹介してくださいました。

普段、展覧会に行って芸術作品の修復方法に注目することはなかなかないと思いますが、そういう見方もあるのか!と驚かれた方も多かったことでしょう。あるいはまた、あの絵画の裏側に実はこんなものが…という発見もありました。

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今回の講義では、学内外から40名を超える方がお越し下さり、修復に対するみなさんの関心の高さが伺えました。質疑応答でも、技法に関する素朴な疑問から、田口先生のお仕事の内容についてまで、さまざまな質問が出ました。

最後に田口先生が、修復士を志すきっかけになったエピソードを紹介すると、会場からは自然に拍手が。かつての修復工房の先生に、「修復士にとって大事なのは、いかに自分を消せるかということ」だと教わったのだそうです。確かに、修復は目立ってはいけないわけですが、その一方で、芸術作品と向き合う度に、どのような介入方法をとるか選択を迫られる。その意味では、完全に自分を消し去ることも難しいのではないか、と田口先生は話を結ばれました。修復の奥深い世界に触れて、会場のみなさんも心を動かされたようでした。

そんなわけで、今年度の特別講義も盛会のうちにお開きとなりました。来年度はどんなお話を伺えるでしょうか。

芸術学コースの特別講義は、誰でも、事前予約なしで参加できますから、まだいらしたことがない方は、ぜひいらしてみてください!お待ちしています。

 

京都造形芸術大学通信教育部 芸術学研究室が運営しているツイッターもぜひご覧ください。


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