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ご挨拶

通信教育課程 卒業制作・修了展に寄せて

京都芸術大学 学長

佐藤 卓

 この度はご卒業、おめでとうございます。通信で学んでこられた方々の中には、いろいろな環境で制作に関わってこられた方がいらっしゃったことでしょう。仕事をしながらデザインを学ぶ。子育てをしながらアートを学ぶ。経済分野で数字を追いかけながら、感性を磨くために芸術を学ぶ。そして若い時に習ってみたかったことを改めてやってみようと決心し、未知の扉を開いてみた方もいらっしゃったことでしょう。ネット環境の整備に加えネットリテラシーの向上により通信教育制度が充実してきたことで、あらゆる方に学ぶ機会が生まれました。勉強は学生の時にしかできないという今までの概念が完全に崩れ、興味を持った時にいつでもその門戸が用意されているわけですから、私の若い時では考えられないことが今起こっています。そのような状況の中で、全国そして海外も含め、通信教育で学ばれた方々の卒業制作展が開催されることを、かつて卒業制作で悪戦苦闘した私としても嬉しく思います。卒業制作とはいえ、芸術やデザインそして研究の世界に卒業はありません。それぞれの方にその後があるわけですから、ここは一つの句読点、もしくは竹の節目にあたるようなものだと思います。それまでコツコツと課題に取り組んでいた状況から、自分発のものを自分で決めて、自分で制作しなければならない状況に置かれるわけですから、それはそれは迷いもあり悩まれたことでしょう。それでも自分を追い込んで、なんとかつくった節目が多くの人の前に浮かび上がる。ここに卒業制作の意義があります。卒業制作は必ずその経験が人生の糧になります。反省や自分の力の無さに気づけることさえ貴重な体験になり、大切な節目になる。そして、その後の人生に必ずや生かされることでしょう。学部では映像コース、食文化デザインコースが、そして大学院ではメディアコンテンツ領域がこの度初めて卒業生・修了生を送ります。ここでの学びが、皆さんの今後の活動に生かされることを切に願っています。

春爛漫の瓜生山

京都芸術大学 通信教育部長

石神 裕之

今年も京都芸術大学通信教育部の卒業・修了制作展の季節となりました。まずは卒業生、修了生の学修への熱い想いとたゆまぬご努力に対して心よりの敬意を表したいと思います。ご来場の皆様には、お時間の許す限り、じっくりと鑑賞して頂ければ幸いです。

さて近年の生成AIの進展のなかで、改めて人類の創造性とは何か、問われつつあるように感じます。そもそも人類はいつから絵を描き始めたのか、と問われたならば、フランス、ラスコーの壁画を思い浮かべる方も多いでしょう。

実は最近、インドネシアの小島・ムナ島のリアン・メタンドゥノという石灰岩洞窟で、世界最古の壁画が発見されました。顔料とされる鉱物の年代測定の結果、手のステンシル(型取り)画は6万7800年前に描かれたものとわかりました。この頃は、現生人類であるホモ・サピエンスとネアンデルタール人が共存していた時期にあたりますが、どちらの人類が描いたものなのでしょうか。

2022年度にノーベル生理学・医学賞を受賞した遺伝学者のスヴァンテ・ペーボ(Svante Paabo)博士によれば、ホモ・サピエンスだけが言語に関わる特定の遺伝子を持っており、これがネアンデルタール人との違いの一つであると指摘しています。

実は洞窟壁画とは、そうした言語を基盤とした抽象的で象徴的な思考を持ち始めたことを示す指標であると評価され、その発祥地こそ、ヨーロッパであると考えられてきました。今回の発見は、アジアにおいてもそうした思考が生み出されたことを示すものであり、人類の発展史におけるヨーロッパ中心主義の再考を促す発見になったともいえるでしょう。

翻って、生成AIは人類の思考の模倣はできても、新たな抽象的な概念を生み出すことは依然として難しいとされます。まさに研究はもちろん、自身の思考を絵画や陶芸、制作物へと昇華させていく卒業・修了作品は、人類にしか成し遂げられない実践と言えるでしょう。

藝術を学ぶことで生まれた思考の成果の数々をどうぞご堪能ください!

新作、新人、お蔵出し

京都芸術大学 芸術研究科長

上村 博

春になりました。全国各地の芸術大学で卒業・修了制作展が行われています。本学の卒業制作展を京都・瓜生山キャンパスでご覧になるかたもいらっしゃると思います。その一方で、本学の卒業・修了制作展は、京都のキャンパスでの展示だけではありません。Web上でも卒業・修了制作展も行っており、完全遠隔で研究指導を受ける通信制大学院ではそこが主たる成果発表の場となっております。
修了制作展というと、なんとなく大学院での学びの集大成で、ひとつの結果もしくは終着点のようにも聞こえてしまいます。たしかに修士課程の研究が実を結んで形となったという点ではそうかもしれません。しかし、そんなもので終わってもらっても困ります。実際のところ、この春に修了となったみなさんは、ちょうど今、専門家としてのスタートポイントに立っているわけです。通信教育課程なので、なかには既に豊富な経歴を持っておいでのかたも混じっていますが、その方たちも含め、課程修了は新たなデビューの機会です。蔵から出されたこぼれんばかりの甘酒が醸し出す香気にも似た、豊かな才気を匂わせる新人たちが勢揃いです。
本展ではこの新人たちのデビュー作がずらりと並んでいます。是非ご高覧のうえ、芸術の新たな芽吹きをここにもお感じいただけたら幸いです。