芸術学コース

埋もれた作品の保存を目指し、研究活動を継続中

「たまたまテレビ番組で見かけたステンドグラス作家、小川三知の作品が頭から離れなくて」。もっと深く知りたい、研究したいと思いつづけてきた井村さん。「今やっておかないと必ず後悔する」と、仕事をしながらの入学を決めた。「とはいえ最初は、上級のカルチャースクール程度に考えていたんです。でも、とんでもなかった」。テキスト課題やスクーリングのレポートに返される添削指導の細かさ、そして厳しさ。「成績がよくない時ほど、丁寧にご指導いただけて。先生の熱心さが、通信という距離をこえて伝わりました」。

幅広いカリキュラムの中には、自身の興味とかけ離れた分野もある。しかし、学ぶうちに「すべてがどこかでつながっている」と感じられた。また、各界を代表する先生の講義はもちろん、学友たちと互いの分野について熱く語りあうのも楽しかった。「予想以上に、仕事や介護、子育てをしながら学んでいる方が多くて。多忙ながら時間をやりくりして頑張っている姿に、何度も励まされました」。

少しずつレポートに慣れ、東西の芸術への知識を深め、あらためて「私が研究したいのは、やっぱり小川三知」と確信した井村さん。作者を愛好する会に入り、各地に残る作品を訪ね、親族への取材を行い、新たに出会った人々の助けに感謝しながら研究をすすめていった。「まだまだ知名度の低い作家なので、資料も研究する人も少ないんです」。卒業論文をまとめ終える頃には、自分も数少ない研究者のひとりになっていた。「おかげで、三知の地元にある美術館で、研究発表をする機会までいただきました」。自身の努力が世に出ることより、とにかく小川三知の魅力を、ひとりでも多くの人に伝えたい。新たな研究者が増えることで、埋もれた作品の保存につなげたい。そんな一心で、これからも研究活動をつづけると決めた井村さん。三知について語るその表情は、光を受けたステンドグラスのように輝いている。

井村 馨

東京都在住 55歳

芸術学コース

(3年次編入学)

16年度卒業

現在は学芸員資格課程を履修中。「資格を得ることで、小川三知の作品展示や紹介に少しでも役立てば、と思って挑戦したものの……再びテキスト科目に苦しんでいます」。

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