超域プログラム 制作学[Poietics]
千住 博 ラボ

Interdisciplinary Program: Poietics

社会における芸術の可能性を探究し、イノベーションを起こす。

これからの造形芸術の可能性を探究するラボで、中心となる千住博教授に加え、直島・家プロジェクトなど、様々なアートによるイノベーション活動に携わってきた加藤淳教授が指導にあたります。現代の芸術の意義を研究・分析し、みずからの制作を通じて、世界の新しいヴィジョンをもたらすことのできる、構想力と制作能力、そして伝達能力とを併せ持った人材を送り出します。本ラボでは、作品制作によって新たな価値を社会に伝えようとする方、そのための実践的能力を自ら身につけようとしている方の入学を期待しています。学生全員が一流芸術家として活動することを前提に、厳しい指導を行っています。

ラボの特長

公共性ある制作と理論的考察

ギャラリー、美術館、公共スペースで展示される作品制作から、医療や福祉、教育の現場での制作まで、芸術を通じて社会に貢献することをめざします。そのため、下記の対面授業、遠隔授業を通じて、各自の制作だけでなく、今日の芸術情況のなかで自分自身の制作の意義を明瞭に言語化することも求められます。

年6日間のゼミ指導

通信制大学院のメリットを活かして、対面授業の日数は最小限に抑えられています。学生はそれぞれ自分の居住地で制作や他の仕事をしながら、所定の6日程に授業会場に作品を持ち寄って集合して、千住・加藤両教授による講評と集中ワークショップを併用した授業を効率的に受けることになります。

Webを用いた月々の授業

学生はWeb上で月ごとに各自の研究報告を行い、それに対する相互評価と教員からの講評を受けることができます。また、今日の芸術制作を巡る理論的な科目など、対面のゼミ以外の科目はすべて遠隔授業で履修できます。各学生から送られて来た作品写真に対して、妥協のない指導を恒常的に行い、作家としての自立をバックアップします。

このラボを志す人へのメッセージ

これまで私は画家として、幅広い活動を国際的に行ってきました。そうした活動領域の中でも、近年、公的な施設や場における大型プロジェクトに積極的に関与しています。

芸術は額縁に入り室内に展示されるだけのものではありません。そもそも芸術にはより大きな機能があります。もとをただせば、旧石器時代の洞窟壁画もそうですし、また洋の東西を問わず、芸術がこれまで辿ってきた歴史がそれを示しています。日本の美術の世界でも、古くから寺社や城郭の障屏画などという多様な形で、社会の重層的なニーズに対応してきました。

私の制作してきた作品も、こうした系譜に連なり、現代において芸術本来の姿に立ち返った例の一つともいえるでしょう。APEC2010会場での作品は、日本画による国際会議空間を構成することで、開催国である日本のアイデンティティーを参加各国の首脳に提案しました。また、羽田空港国際線に設置されたWatershrineは、日本文化のアイデンティティーを来邦者にひと目で分かる形で表現するだけでなく、国内に災いが招来しないことを祈願するための護符の役割も果たしていて、古くからある日本のアニミズム的文化のルーツを表わすものでもあります。

他方で、芸術には地域社会の福祉や再生を担う機能もあります。私が制作した、東日本大震災被災地の女川の公衆浴場壁画は、芸術による震災復興、集落再生のモデルケース、そして鎮魂のモニュメントとしても評価されています。

また、設置された場所の持つ意味を明確にしたり、魅力を高めたりする役割を担う作品もあります。直島の古い集落を利用した古民家再生企画「ベネッセアートサイト直島・家プロジェクト」などはその一例で、これは地域活性化の役割も芸術が果たすことを示すことができました。

このように、芸術は、現代社会に広くイノヴェイティヴな効果をもたらすことができます。この千住ラボでは、私が行ってきた社会的な活動の研究を通して、芸術と社会の役割について考察し、未来の社会における芸術の可能性を探究し、その様な芸術活動を担える人材を創出し、究極的には学生全員がすぐれた芸術家として自立できるよう、全力で応援したいと思います。

羽田空港国際線ターミナル
到着コンコース、到着バス降車場、検疫前と出発ゾーンのフードコートに水をテーマとした作品を設置し、日本を訪れる海外からの旅客に日本文化を、 帰国する日本人旅客に故郷の風土を提示。空港という大規模な建築に対し、幅25メートルの「ウォーターフォール」、幅20メートルの「雲」の作品などの大作を制作。

APEC 2010
2010年11月、日本がホスト国として開催したAPECJAPAN 2010にてアートディレクターとして会場構成を担当。日米、日中、日韓、日ロ首脳会談会場、 首脳宣言会場、晩餐会会場などにアートワークを設置し、参加国に向けて現代日本文化を紹介した。

学びのすすめ方1年次

制作研究の目的やその意義を考察する

科目ピックアップ

超域制作学演習Ⅰ(スクーリング科目、スクーリング研究制作科目)

サイト・スペシフィック・アート制作のシミュレーションを行います。学生は自ら選んだサイト・スペシフィック・アートに関し、自分が制作者になった場面を仮定して計画を立案します。

超域制作学特論Ⅱ-1

サイト・スペシフィック・アートについて、特に香川直島での例をもとに、理論的な反省を行います。「サイト・スペシフィック・アート」は、「パブリック・アート」以上に、場所固有の自然的、文化的な文脈を尊重しつつ、強い意味を持った芸術的な場を構築します。

学びのすすめ方2年次

自分の制作研究の質を高め、修了制作を完成させる

科目ピックアップ

超域制作学研究Ⅰ(スクーリング科目、スクーリング研究制作科目)

場所の調査、コンセプトの作成、実施計画の立案、作品制作、作品設置、展示効果、考察を行った研究成果に基づき、自分の制作研究の質を高め、修了制作を完成させます。

年間のスケジュールモデル

千住ラボは全授業を[東京:外苑キャンパス]で開講。年6日間行われる対面授業のほか、Web上の指導を月々に実施します。

年間のスケジュールモデル

スクーリングは各年次毎に、年間を通して週末(土・日)を中心に開講しています。
詳しい日程は2018年12月下旬発行予定の『大学院スクーリング日程2019』でご確認ください。

   

学生紹介

井上 美千子東京都 59歳 大学院1年次

本ラボに進学した理由 、学びの目標は?

写真をはじめて5年の集大成が、学部の写真コースにおける卒業制作になりました。大学で学んだおかげで喜ばしい成果を得られましたが、次の作品を作成しようと思ったときに、技術だけでなく、知識が足りないことに気づきました。私が興味を持つ写真家は、以前に絵画や彫刻をやっていたなど、別のアートの世界を知っている人たちです。そこで心を惹かれたのが千住ラボでした。油絵、日本画、鉛筆画、インスタレーション、写真など、いろいろなジャンルの方たちが作品を持ち寄り、さまざまに前向きな批判をしあいながら完成をめざす場だと聞き、いまの自分に必要な場所だと思いました。

学びによる気づき、得られたことなどは?

学びはじめて3ヵ月。サイトスペシフィック・アートやアート全般について知らないことが山ほどあり、基本的な知識を増やさなければ課題図書を理解できません。本を読む時間も足りません。しかし、知らないことを知る歓びは、確実に私の世界を広げています。スクーリングでの先生方や他の院生からの率直な批判はとても刺激的で、創作意欲をかき立てます。現時点では、自分の制作については正直、真っ暗闇ですが、カメラは表現するための道具のひとつでしかないと気づきました。今後どのような形で表現するのか未知ですが、自己満足な表現ではなく、社会と関わる表現をしていきたいです。

深作 秀春神奈川県 大学院2年次

本ラボに進学した理由 、学びの目標は?

現役で多忙な眼科外科医である私が、本大学院で芸術を学ぼうとする動機は、このラボの指導者が千住博氏であることに尽きます。医学の道では明確な目標があり、一直線に精進することで多くの手術方法を生み出し、眼科外科医としての存在を確立できたと言えます。しかし芸術の分野では、子供時代から絵画への強い想いがあり絵を描き続けてはいましたが、芸術には絶対的価値基準が無く、明確な目標を立てるのは難しいのです。芸術での目標を見失っていました。そこで、千住氏が世界に通用する芸術家育成を掲げた本ラボに注目。大学院での合評会を目標に、できるだけ多くの作品を描いていきました。

学びによる気づき、得られたことなどは?

千住先生の批評は厳しい言葉が多いのですが、真に我々の事を深く考えて手加減をしないという姿勢ですのでいちいち腑に落ちます。これによって悩み苦心惨憺しながら、自身の油彩画の方向性がどんどん変わっていきました。さらにサイト・スペシフィック・アートという、展示する場と深く関わる現代の芸術表現や展示方法を学び、まさに目から鱗が落ちる思いがしました。自らの中に潜む、創造しなくてはいられない鬱々としたマグマのような心を、芸術という表現でこの世に送り出したい、と強烈に願っています。この大学院にて、まさにこの思いを世界に出すヒントを得ました。今後は、眼科外科医として到達したように、芸術の世界でも世界最高の場に近づいていきたいと、強く思っています。

資料請求 あたらしいパンフレットができました。

芸術×大学院×通信 京都造形芸術大学通信制大学院 入学説明会