美術・工芸領域日本画
Fine and Applied Arts Field
技を拡げ、自身の表現を深める。
本分野では、各自がこれまで積み重ねてきたものを基に、より幅広く深い表現をめざすことを教育の柱としています。また、材料学などの見地からも、絵画表現の考察を行います。今日の多様な日本画表現のあり方に振り回されることなく、また過去の日本画を単なる形式として捉えずに、自身の作品にとって普遍的な価値表現を見出すための追求をめざします。
分野の特長
少人数制の授業×多彩な作家が指導
一人ひとりが教員のアドバイスを受けながら、自由に作品制作をすすめます。その中で現役作家による特別講義や個別指導を受けることで、自身の作品を客観的に見る機会をつくり、表現を具現化させていきます。
個性的かつ魅力ある作品制作をめざす
これまで積み重ねてきたものを基に、より幅広く深い表現をめざします。また、特性を活かした絵画表現を追求し、自身の表現を確立していきます。
素材を含めた技法の探求を行う
古来から大切にされてきた日本画素材や技法の見識を深めると同時に、最新の素材に関する知識も身につけます。
学びのすすめ方1年次

最高水準の材料学・素材学を修得し、自分の表現の糧とする。
美術・工芸演習(日本画)
(スクーリング科目、スクーリング研究制作科目)
自身の意識(意志)に基づき、高い表現技術を兼ね備えた個性的で魅力ある作品を制作することをめざします。また、日本画分野における材料学も取り入れ、現代に見合った制作技法を実践しながら、絵画についてより深く追求します。また、模写を選択することで、古典からの技法表現を研究することも可能です。その他、主担当教員の指導以外にも活躍中の作家の特別講義なども交え、自身の絵画表現についてより深く追求、具現化していきます。
美術・工芸特論Ⅱ-1、2(テキスト科目)
本科目の目標は、美術・工芸に関する理論的著作を批判的に読み解くことと、その上で、各自の制作研究行為を今日の社会環境の中に位置づけて考察することにあります。制作研究は個人的な表現内で完結するものではなく、社会との関わりの中で熟成・発展していくものです。自己を包む環境について新たな見解を持ち、創作への思いを言語化することで、自作品の明解なビジョンが育ちます。
学びのすすめ方2年次

既存のものを追わず、自身の中から生まれる表現を形にする。
美術・工芸演習(日本画)
(スクーリング科目、スクーリング研究制作科目)
修了制作作品の完成に向けて、今まで積み重ねてきたものをもとに絵画の幅と深さを追求すると共に、自身を解放し、より自由な表現を実践するための研究をすすめていきます。作品密度を上げるために、教員や他学生とのディスカッションを繰り返しながら、内容・材料・技術的な面も強化し、作品制作につなげ、修了制作を完成させます。1年次より模写制作を進めてきた方は、その集大成として、模写作品による修了制作も可能です。
年間のスケジュールモデル
■スクーリング日程 | 大学院スクーリング日程2018 |
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学生紹介
鹿野 正博千葉県 66歳 大学院2年次
大学院での何より大きな変化は、「日本画とは何か、自分はなぜ日本画を描くのか」という本質的な問いに向き合うようになったこと。初めての日本画をただ夢中で描いていた学部では、「絵に理屈などいらない」と思っていました。けれど、本質的な問題に向き合い、自分自身の考えをもって描くことで、作品がより深まると考えるようになったのです。日本画の歴史や技法を学び、自分の制作活動の意図を論理的かつ客観的に思考することの大切さに、あらためて気づかされました。大学院では、学生ひとりひとり、表現しようとすることがまるで違います。だからこそ、仲間と学びあうことが楽しいのです。互いに刺激しあい、意見を交換しあうことが勉強になります。そのなかで、失敗や自分をさらけ出すことが怖くなくなり、オンリーワンでありつづけよう、さまざまなチャレンジをしよう、という意欲もわいてきました。
■教員 | 松生 歩(教授)、山田 伸(教授)、山田 真澄(准教授)、青木 芳昭(教授)、吉川 弘(教授) |
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修了制作 作品ギャラリー
中野 広子愛知県 2015年度修了
[修了作品について]この数年間、1日4時間は絵にかかりきり、季節ごとの花をスケッチしていました。それを集めて屏風に仕立てられたのは、まさに夢が叶った瞬間。制作の最中は無我夢中でしたが、思い返すと楽しかったと実感しています。
[学びの振り返り]アスリートである娘の世話をしている間は、自分のことができませんでした。今、絵と向き合う時間があり、絵のことを考えながら過ごせるのを嬉しく思います。とくに大学院では絵だけに没頭することができ、幸せでした。
薫る花、匂う花
井手口 あけみ67歳 宮崎県 2015年度修了
[修了作品について]身近に育つ野菜をモチーフにすると決めて、前年度からスケッチを始めました。先生や友人に教わりながら、未経験の「揉紙」に挑戦。屏風仕立ては150号作品の輸送の大変さを考えたからでしたが、日毎に楽しくなっていきました。
[進学の目的、成果]スケッチしたものを、作品としてどう構成していくかを学ぶために大学院へ。十分に体得した、とまでは言えないものの、「スケッチ=自然に学ぶこと」という想いを深められました。励ましあえる友との出会いも、ありがたく嬉しいことです。
大地のシンフォニー
佐藤 知子東京都 2015年度修了
[修了作品について]ボルネオの熱帯雨林で出会った野生の象は、ハリのある皮膚、どっしり重い体、優しさと憂いを湛えた目をしていた。この命が絶滅の危機にあることを知り、すべての生き物が共生の道を歩めることを願い、この作品を描きました。
[成果、そして、これから]学部から始めた日本画。私は少しずつ夢中になっていきました。卒業を前に、このままでは絵をやめてしまうかもと感じ、大学院入学を決心。先生方の惜しみないご指導のおかげで、現在は仲間とともに、絵の道を模索する毎日を楽しんでいます。
遥かなる共生
木村 享69歳 兵庫県 2013年度修了
[修了作品について]厚かましく思ったが、研究テーマを『魅せられる作品造り』として、観者を20分以上は画面に釘付け状態にすることを目標に制作した。JR福知山沿線に存在する面白いモチーフ「化学工場」に出会い、さらに、厳しい先生方の指導のお陰で、目標達成度は120%であると自負している。そして観者も、作家と同じ評価であったものと信じている。
[成果、そして、これから]学部での成果に物足りなさと、何か置き忘れたような想いを抱きつつ進学する。そして発見し、獲たものは「自分(個性)」であったようにうっすらと感じられる。足早に通り過ぎる2年間で、先生方から発見のヒントを教えられたことが最大の成果であり、命ある限り「自分(個性)」と挑戦できる場を得たことで、充実度は「S」クラスである。
Puzzling Plant
三又 耕三70歳 大阪府 2014年度修了
[修了作品について]作品が概ね仕上がりつつある時、先生から「あなたにいま一番大事なのは、もっと力強い描き方をしていくことではないか」と強い指摘を受け、制作を大変換。夢中で赤一色の世界を追い求め、完成させることができました。
[成果、そして、これから]先生に指摘された「弱い描き方」とは、未知の世界に踏み込めない自身の性格の弱さだと気づき、目から鱗が落ちました。どれだけ時間がかかっても失敗を重ねても、自分のイメージをじっくり追い求め、描き続けたいです。
桜島
岡部 京子65歳 大阪府 2014年度修了
[修了作品について]大樹の存在感の中に、まっ赤な椿の花の美しさと生命の輝いている世界を描いた。ぐっと迫る感じにしたくて全部の葉を骨描きし、花と葉の重なり具合の面白さや、伸びた枝先に拡がる盛り上がりを意識して彩色した。
[成果、そして、これから]学部の卒業制作中に病気になり、不完全燃焼のままだったところ、先生に自分のペースでやればいいと薦められて進学。360号を必至で描いた。人生の中で一番充実した日々でした。私の目標は達成されていないが、方向性を確実に見つけることができました。
老谷の大椿