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NIIMI AGROFORESTRY PROJECT 〜食べられる森と原点回帰型土地利用の提案

デザイン科 - ランドスケープデザインコース

佐野 香織【同窓会賞】

「持続可能」は世界を取り巻く様々な問題に対する共通のキーワードになっています。この言葉に疑問を感じていた私は世界を旅し、アグロフォレストリー(以下「AF」と称する)に出会いました。そして一昨年より、AFを取り入れたガーデン造りプロジェクトを実践しています。

AFとは、1種の持続可能な作物生産方法です。ひとつの土地で農作物と園芸作物の両方を栽培することで、樹木やその他の作物を供給すると同時に、経済、環境、人的および天然資源の保護・保全・多様化および維持するように検討します。
プロジェクトでは農業としての主品目を育てながら、周辺環境と調和したガーデンを計画しています。

副題にあります原点回帰は、「自然との関わり方」「将来性」「作物の作り方」の3つの観点からのアプローチであり、これにより生物多様性や休耕地の利活用による景観の美化などの持続可能な効果を期待します。

対象地は岡山県新見市神郷高瀬野原地区にあり、岡山県の最北西に位置した寒冷地です。集落は約20世帯が住む農村で、地域の課題としては全国の農村共通の、人口減少や土地の荒廃化、空き家の増加、交通アクセスの悪さなどが挙げられます。

これに対して本プロジェクトでは3つの戦略とそれに対する戦術により原点回帰型土地利用の提案をします。
まず1つ目は、環境に対する持続可能性の考慮では、AFによる持続可能な農法の実践、整備による生物多様性の保護、周辺と調和したガーデンを検討します。2つ目に、生物的に持続可能なガーデンの設計では、周辺に自生する植物の利用、設計検討によるメンテナンスの軽減、ニッチとギルドの形成を検討します。そして、3つ目に、試験場としての利用、価値の高い品種の生産と収量の見積もり、公共性を持たせる取り組みにより経済的・社会的な持続可能性を図ります。パネルではそれぞれを具体的に説明しています。

そして、農業の生産性や合理性を考慮するだけでなく、ランドスケープとしても美しい場所をデザインすることは独自性と持続可能性において重要なコンセプトの一つです。対象地内とその周辺からの視点場と視対象を考慮し、旧野原スキー場跡地や美しい風景が見える視点場を保存しながら、人々との交流がもて、農園としてもガーデンとしても機能する美しい場所を作っていきたいと思います。

※模型 現地調達した植栽材料
・高木:ヒメムカシヨモギ
・低木:スイバ
・草本:ヨモギ
・園路:ヘチマ

  • 京都芸術大学 通信教育部