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情報デザインコース 矢澤志帆

Walk into the picture's

風景画16点 アクリル絵の具(各 140 mm×100 mm)
壁紙 4000mm×2828mm

テーマは「絵の中を歩く」

一枚の絵から目を離せなくなった経験はないだろうか。時間も場所も飛び越えて、まるで絵の中に入りこんでしまったような感覚に。たとえそれが遠い異国の景色だったとしても、子どもの頃に見た空の色だったり、木々が風に吹かれるざわめきを思い出すことがある。作者の描いた風景が鑑賞者の記憶を呼び起こし、作者と鑑賞者が絵によってつながるような、体感するイラストレーションを制作した。

鑑賞者が絵の中に入りこみ、まるでその中を歩いているような体験ができるイラストレーション群。壁紙サイズの大きな風景画を遠くから眺めながら近づくと、大きな風景画はドットの集まりと化し、かわりに小さな風景画が目の前に現れる。離れて見ると一枚の風景画だが、近づくとモザイク状のドットになる。その壁紙の前に、ハガキサイズの風景画16点を配置した。巨大な壁紙とハガキサイズの原画という極端なサイズ差をつけることによって、絵の中に一歩踏み込んだような効果を狙った。また、風景画は大人から子どもまで 楽しめるよう、実際の風景を単純化し、ビビットな色彩で表現した。元になっている風景は作者の地元である長野県の里山だが、見た人が自然の雄大さや、懐かしさが感じられるような風景を選んだ。そして、展示する風景画を選ぶにあたりキーワードを4つ設定し、キーワード1つにつき4点選び、全部で16点とした。キーワードは、風景画を構成する重要なモチーフの「空」「道」「木」「山」である。

この4つのモチーフは風景画を描く時、必ずと言って良いほど絵の中に登場する。はじめはこれらの要素について無自覚であった。しかし、山梨俊夫(国立国際美術館館長)著「絵画逍遥」に、「風景を開く三つの要素」として「空」「道」「木」が挙げられていて、それらの意味するところの記述に深く共感した。風景画は人物画のように明確な物語や感情を表現することは難しい。だが、「絵画逍遥」の一節に「自然を見る人は、自分の主観を込めた眼でそれぞれの自然の美を見出していく」とあり、風景画は作者の内側にある思いが風景と混ざり合って吐露されるものであると理解した。そこで、さらに「山」という独自の要素を足した。周りを山に囲まれて育った私にとって、山は安心できる故郷を象徴する存在であると同時に、畏れや神々しさを感じる存在でもあり、風景を描くときの心情が現れやすいモチーフである。

このイラストレーション群を見た人が、その人なりの自然の美を絵の中に見出して欲しいと思う。

矢澤志帆

情報デザインコース

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