邯鄲
日本画コース 西川 幹代
130.3 × 162.0 cm
紙本/岩絵具、水干絵具、墨、二カワ
『邯鄲』は唐の『枕中記』を元に作られた能の演目です。人生をいかに生きるべきかを悩む青年盧生が、旅の途中の邯鄲の宿でひと眠りすると、夢の中で皇帝まで登り詰め栄耀栄華を極めるが
目覚めてみれば全ては食事が炊ける間の出来事に過ぎず、そこで盧生は悟りを得る、という物語です。
この能を観て私が感じたのは、邯鄲の宿で盧生が見た夢は果たして盧生だけの夢だったのか?という事です。盧生は夢の中で皇帝になるが、一方で本物の皇帝は余りある富や権力を手にしながらも自由に憧れ、夢の中で一介の名もない青年となり諸国を放浪していたのではないでしょうか。自分には無いものに憧れてみたり、自分が歩んだ道とは違う人生を想像してみたり、という経験は誰にでもあるはずです。
だとするなら、牡丹はすぐに散るはかない我が身を嘆き、四季を通して瑞々しい緑を保つ竹に憧れているかもしれません。竹は雨にも風にもびくともしない岩山を見て、あのように威風堂々とありたいものだと願っているかもしれません。岩山はごつごつとした自分の手や足を見下ろしながら、こっそりとため息をついているかもしれません。一度でいいから、あそこに咲いているあの牡丹のような艶やかな姿になってみたい。ほんの束の間の、一炊の夢でもいいから、と。
どこまでが現実でどこからが夢なのか、虚実入り混じったような不思議な世界が創れたら面白いだろうと思いながら制作しました。牡丹や竹林は京都府立植物園と富山県魚津市天神山ガーデン、建造物は新潟県新潟市の天寿園と石川県内灘市ハマナス公園で取材・写生をしました。また遠景の岩山は自宅の庭石を、樹木は盆栽を、その他の植物も全て自宅周辺に生えていた草花を写生し、構成しました。
制作中に周囲の人から「これは実際にある風景ですか?」とよく尋ねられましたが、従って
答えはYesでもありNoでもあります。もしも絵を描く機会がなかったら、その存在にも気づけないままでした。かれらと出会えた事に、心から感謝したいと思います。
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