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「あふれでるもの(Full Enough to Finally Spill)」

洋画コース 堀之内 里奈 (Rina Horinouchi)

162 × 130cm
キャンバス/油彩、オイルバー、オイルパステル、アクリル

これまで私は、人と人とが関わることで生まれるエモーショナルな瞬間や、日々の生活の中で湧き上がる感情や感覚を、色や形として描き留めてきた。
卒業制作は、当初何を描くべきかわからないまま、ドローイングのように絵の具を重ねることから始まった。制作を続けるうちに、自然と二つのテーマが立ち上がった。一つは、結婚・出産の適齢期を迎えた自身が感じた、女性としての心情や身体の変化を扱う作品であり、もう一つが本作「あふれでるもの」である。
本作は、私の内側がようやく「満たされる」ことであふれ出た、愛のような余剰の感覚を描きとった作品である。脂肪や内臓を思わせるかたちがふつふつと湧き上がり、フレームを越えてこちら側へ溢れ出してくる。時に赤い絵の具の美しさに執着しながら描き進めたそれは、過去の痛みを伴って生まれたものだろうか、どろどろとした生々しさを孕んでいる一方で、確かに“満ちた結果”として現れた感覚でもある。それは抑圧の結果ではなく、私が出会ってきた人々との関わりによって、内側が満たされた末に生じた感覚である。
私はまだ出産の経験はないが、この絵を描いたことは、出産のような出来事にも近いのかもしれない。見る者にとって重たさやしんどさを伴う可能性を含みつつも、同じ痛みを知る人にとっては、共感を通じた癒しや、過去を超えていくためのきっかけとなる可能性もあるのではないだろうか。また本作を通して、私はあふれ出た愛のような余剰を、ようやく誰かに分配する側に立てたのではないかと感じている。
今後は、誰かの癒しや心の拠り所となる、誰かの“箱庭”のような、より共有可能な作品を描いていきたいと考えるようになる機会を得た作品である。

「流れ、変容するもの(Shifting, Still Me)」
162 × 130cm
キャンバス/油彩、アクリル

堀之内 里奈 Rina Horinouchi

洋画コース

CONTACT

人と人とが関わることで生まれるエモーショナルな瞬間、日々の生活の中で湧き上がる感情や感覚を、色や形として描き留めてきました。
最近は、描くことを祈りであり、瞑想であり、世界や他者との対話の手段のひとつだと捉えています。
これからは哲学や心理療法、宗教などを学びながら、誰かの癒しや、心の拠り所となる小さな“箱庭”のような作品を描きたいと考えています。

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