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輪の布 ―裳抜ける―

染織コース 畑中 美穂 (miho KOSAKA. H.)

コース奨励賞

240.0 × 135.0 × 50.0 cm
麻/平織、捩り織、オリジナル技法

輪を繋いだ布は一つが一年を表し、経糸を時間・緯糸を出来事に見立てて自身の人生を表現した。
またそれを“守る”ものとしてハタオリドリの巣を模す布を配した。
いずれの布も輪に整経し、原始機にてオリジナル技法で織った。

制作の過程は“外側からの見え方”と“自分の内側”の整合性を問い続ける作業となり、「その数・色・形が意図するものは何か」「自分が表現したいものを形に表せているか」を探求する時間であった。
作品のテーマとその時どきの自分のこころの地点を往き来するプロセスは人生の物語を再構築する機会となり、その制作期間が十か月だったことも、ヒトが胎内で育まれるトツキトオカに相当して興味深い。

当初、重ね合わせて展示する予定だった二枚の布は、制作の過程で物理的にも心理的にも「(守るものは)もう、無くても構わないのではないか?」と感じるようになり、余分なものがずるずると剥落するイメージが湧いた。
それは“守る”ものが「要らなくなった」のではなく、制作過程を通じた心理的変容によって“すべてを包含する”感覚が生じ、自分を丸ごと肯定するものとして大きな意味を持つ。
裳抜ける剥落の跡を残した布は私の新たな一歩を象徴し、還暦の時機に新たに生まれ出るにふさわしい作品となった。

畑中 美穂 miho KOSAKA. H.

染織コース

CONTACT

京都市出身。
助産師として長年、保健指導に携わるなかで体と心のつながりに関心を持ち、心理臨床家の村山正治先生のもとで臨床心理学を修める。臨床心理学博士。
罹患を機に好きだった仕事を辞め、「ならばそれに見合うだけのことを」と染織を学ぶことに。大学では初めてのことばかりで新鮮で、私の“元々の生き方の志向”のようなものが呼び覚まされるように感じた。織では原始機に魅かれ、染では鮮やかな色の現れる瞬間に心躍る。
手芸好きの母の周りにあった糸や布、国内外の旅の先々で出会った色・形・風景、我が子と森や水辺で遊び手を動かした記憶の片鱗が今の作品に現れる。伸びてゆきたい方向に向かい“自分になってゆく”感じを味わっている。

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