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region of interest

写真コース 金 明善

インクジェットプリント
Hahnemühle Photo Rag Baryta
アルミ複合板裏打ち(8点組)
各600 × 900 mm / 900 × 600 mm
Ed. 1/3

一見すると、それは見知らぬ土地の風景のように見えるかもしれない。あるいは、衛星から捉えた地表の一部、深海の底、どこか遠い惑星の表面——。しかしこれらの像は、いずれも顕微鏡下で撮影されたものである。
肉眼では決して見ることのできない領域。通常のマクロレンズでも到達し得ない、光学顕微鏡の分解能によって初めて立ち現れる世界がここにある。日常的に目にし、手に触れているはずの物質が、スケールの閾を越えた途端に、まったく未知の相貌を見せる。それはかつてラースロー・モホイ=ナジが提唱した「Neues Sehen(新しい視覚)」——カメラを人間の眼の拡張として捉え、肉眼を超えた知覚を写真に求めた思想の、現代における一つの実践であると考えている。
本作は8点のプリントで構成される(本展では3点を提示する)。画面サイズ900×600mmという身体的なスケールで出力し、鑑賞者の視野を満たす大きさで提示することにより、微小な構造物は巨大な風景へと反転する。鑑賞者はまず「風景」を見る。そして顕微鏡写真であるという事実を知ったとき、同じ像がまったく異なるものとして立ち現れるだろう。この知覚の転換こそが、本作の核心である。
「region of interest」とは、画像解析や科学研究の分野において、観察・計測の対象として指定された関心領域を意味する用語である。顕微鏡下でレンズを向けた先にある、限られた視野。しかし同時にそれは、私たちが世界のどこに目を向け、何を見出すかという、より根源的な問いでもある。見慣れたものの中に未知の風景を発見すること。region of interestは、あなたのすぐそばにある。

金 明善

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