天を裂く
染織コース 瀧元 愛
サイズ:300cm×200cm×60cm(展示場所によって変動)
技法:平織、絣
使用素材:レーヨン、麻
オーロラは世界各地の民族によって、「不吉な出来事の報せ」や「天の裂け目」、「キツネが雪原を走り抜けたときに舞い上がった火花」など、さまざまな信仰や伝承の対象となってきました。その中でも私は、「オーロラを眺めることで故人との繋がりが生まれる」というサーミ族の信仰に強く惹かれました。
私が染織に興味を持ったきっかけは、一年前に他界した母と、かつて一緒に訪れた旅先での機織り体験でした。そして染織を学びたいと考えた私に、本学への入学を勧めてくれたのも母でした。つまり私にとって「織る」という行為は、亡き母を想うことと深く結びついています。
オーロラを眺めることと布を織ることは、一見まったく異なる行為です。しかし、どちらも「故人に想いを寄せる」という点で共通していることに気づき、私はオーロラを織る、すなわち“天を裂く”という行為を通して大切な人を偲ぶことにしました。
さらに、制作期間中に生まれた妹の子どもの名前が偶然にも「空(天)」に関わるものであったことから、本作品は過去の存在となった母と、これから未来へ向かって歩んでいく甥とを結びつけるものとなりました。母の人生を想って織り始めた作品が、気が付けば私自身の人生の一部にもなっています。
素材には光沢のあるレーヨンを多く用い、緯糸の打ち込みを弱くすることで糸と糸の間隔を広くとり、各パーツの向こう側の色が干渉し合うようにしています。見る角度や光の当たり方によって色の印象が揺らぐことで、一定の形を持たず常に揺れ動くオーロラの性質を表すと同時に、「故人を偲ぶ」という行為に伴う「感謝」「憤り」「寂しさ」「後悔」など、移ろう自分の感情を表現しています。
複数の布を組み合わせてひとつの作品とする構成のうち、同一モチーフの布を繰り返し制作する点は、連作で知られるモネの《睡蓮》から着想を得ました。本作品は卒業をもって一旦の完成を迎えましたが、モネが睡蓮を描き続けたように、私はこれからも天を裂き続けていきます。
瀧元 愛
染織コース
2022年度編入。フルタイムで働く会社員。
3年で卒業するつもりが色々あって4年かかってしまいました。
かつて沖縄旅⾏で機織り体験をしたことがきっかけで、染織に興味を持ちました。その後、通信講座で学ぶも基礎が理解できないまま修了。⼀から学べる場を求めて本学通信教育部に入学しました。
卒業後は織りのみにこだわらず、身近な人にも使ってもらえるような、⽣活の中にあるものの製作に挑戦したいと思っています。
<使用機材> クロバー ⼿織り機「咲きおり」
卒業する今になってアシュフォード・テーブルルーム(4枚綜絖)が気になりはじめています。
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