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そして、ここから・・・

Never too late

染織コース 小河 京子

サイズ:207×107×5
素材:綿、絹、和紙、金糸
染料:リアック染料、デルクス染料、天然染料
技法:布コラージュ

 私は「コラージュ」が好きで、自由に貼り合わせていくうちにどんどん世界が広がっていくような感覚に魅力を感じ、自分には合っているように思う。そこで布コラージュという技法を選んだ。
 何気なく道端に目をやったときに見つけることのできる、小さな花をつけた雑草が好きで、ふとその中に入り込めたらいいのになあと思うことがある。そこには絵本のように妖精が隠れているかもしれない。そんな感覚に陥るとき、華やかさには程遠いけれど心安らぐ。
 トトロが住んでいそうな大きなクスノキは常緑樹だが、春の一週間位に新しい葉と入れ替わりに赤や黄色に染まった古い葉を落とす。この同時進行という生命現象に、学びや人生を感じ、不思議な感傷を覚える。これまでの人生を振り返りながら、この先何者かになれるはずもないのだが、今まさにここに立ち制作に向かうことができている自分自身の心情を、そんな落ち葉や好きな雑草に託したい。
 つややかで大らかな美しい形をしたつわぶきの葉。白いハート型の愛らしい花をつけるどくだみ。昔は身近な薬草だったが、今では雑草の代表格のどくだみは、日陰でも元気にはびこる強さと可憐さもあわせ持つ。そんな姿に心惹かれる。そこでこのふたつの雑草を主題とした。何度も色を重ねて葉の美しさを表現し、浮かせるようにコラージュすることで可憐さを表現した。
 そしてここから先、さて果たしてどれほどのことができるのだろうという心もとない思いと、いやいやまだまだこれからも学びは続くぞ・・・Never too late・・・という強い思いや何者にでもなれるかもしれないという夢を大空に向かってぐんぐん伸びていくクスノキのような大樹と、自由気ままにふわふわと浮遊する色とりどりのまあるい葉っぱと妖精に乗せたい。
 葉っぱをまあるくしたのは、心もとなく頼りないふわふわしたイメージと希望の光を吸収して何ものにもとらわれることなく、自由奔放に四方八方に広がっていけるイメージを表したかったから。作品の下部分は今現在の私の心情を代弁しているので、現実的でリアルな表現にした。上部分はフィクションなのでファンタジーなイメージになるよう、まあるい葉っぱや妖精は見えるか見えないかくらいにするために。素材に透け感のあるシルクジョーゼットを使った。

つややかで大らかな美しい形のつわぶきの葉は、何度も色を重ねて1枚づつ切り取り、葉の重なりを表現した。樹の根っこにある穴は、あたかもずっと奥深く続いているかのような神秘的な色合いを目指した。
常緑樹なのに、春に新しい葉と入れ替わりに赤や黄色に染まった古い葉を落とすクスノキ。葉脈状に折り目を付けた紙にシルクジョーゼットを貼り合わせてから染色し、美しい落ち葉を表現した。
私の好きなどくだみの白い花。本当は真ん中の黄色い部分が花で、白い部分は葉が白く変わった4枚の総苞。花である黄色い部分に刺繍を施し、白い部分の可憐さを表現するために土台布から浮かせた。
色味を変えて染めた4種の綿ローンを重ね、しわを入れたり裁ち目を毛羽立たせたりして、小さな雑草を表現した。
樹々から漏れこぼれる光を受けて舞う可愛い妖精とまあるい葉っぱのファンタジーな世界を表現した。ここから先へ続く私の学びへの希望や夢を代弁している。
元気いっぱいに飛び出してきた妖精。Never too late 決して遅すぎることはない・・・これから先の学びへの力強い思いを代弁している。
大樹の根っこにあいた大きな穴を覗こうとする妖精。ここから先、奥深く美しいあこがれの世界へ踏み出そうとする私の気持ちを代弁している。
裏面にある切り株。絞り染めを重ねて樹皮を表現し、切り口は刺繍を施した。
主題であるつわぶきの葉とどくだみの白い花をメインに、ホトケノザやカラスノエンドウ、オオイヌフグリなどの小さい花をつける雑草をイメージして染めた。
両面染色とするために配した、切り株よりずっと遠景にある大樹にからまるツル植物を表現した。ツルは絣を織る課題で染めた糸の残り糸で表現し、ツル植物の小さな葉はこの作品で染めた端布を使用した。

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