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  • 永岡英則
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 誰もがそうであるように、若い頃は自分自身の持っている世界がせまく、周りから受ける影響とそこへの自己中心的な反応だけで生きられるものが、徐々に色々な、そして過酷な体験を積み重ねることで、自分だけではなく周りの人のことまで視野に入れた、あるいは「背負った」行動をとるようになっていく。やがてそれは、未来に向けた「意思」を形成し、それを実現していく力にもなっていく。
 この小説では、単なる「絶望と再生の物語」ではなく、周りの抑圧に対する受け身な人間が、守るものができて(認識して)、明確な意思を持ち、現実的に自立していく人間の「覚醒の物語」にしていきたいと考えた。
 タイトルを「あした見る満月」とした。満ちる前に自らの意思で向こうへ行った弟と、満ちる月をこちらで見る意思を明確に持った主人公を対比させて、象徴的に描きたいと考えた。あした確実に満月となる現実を捉え、それを「見る覚悟」が表現できているとうれしい。

芸術学科 - 文芸コース

永岡英則

東京都

あした見る満月

  • 京都芸術大学 通信教育部