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  • 山崎妙子
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 我が家には十五歳の柴犬がいました。飼い主のひいき目で見ても、赤毛でイケメンの柴犬でした。我が家にとっては、最初で最後の柴犬です。
 ある夏の日、やってきた柴犬は、飼い主初心者の人間と共に、右往左往、試行錯誤の中、愛し愛され、波乱万丈の犬生を歩んだことと思います。今でも気がかりなのは、彼にとって、我が家に来たことは、しあわせだったのだろうか? ということです。
 三年次に編入し、すぐに卒論を書き始めなければいけませんでした。何をテーマにすればよいか、考えていた時に、足元で寝ている愛犬が目に入りました。そうだ。彼を主人公にして物語を作ってみようと。あくまでもフィクションなので、彼の想いや考えは、私の想像の域を出ません。我が家での日常の中で起きた出来事をベースに、物語をふくらませ、彼の眼にはどのように見えていたのだろうか? と、想像するだけで楽しかったです。
 先生方のアドバイスにより、犬の目線になって、いろいろと観察したり、どの程度の日本語がわかるのか、考えてみたり、犬や猫の小説を読みました。
 今、虹の橋のたもとにいる彼が、「かーさん。正解だよ。ワン」って言ってくれることを願っております。

芸術学科 - 文芸コース

山崎妙子

石川県

俺様のワン・ダフルな生活

  • 京都芸術大学 通信教育部