
デザイン科 - イラストレーションコース
髙木 宣幸
■ タイトル
LINEスタンプ用イラスト「テックちゃん」作画AIが進化する中で、いま私たちにできること。
■ 説明
近年、画像生成技術として深層学習を活用した作画AIが爆発的な進化を遂げ、従来では専門的な技術が必要であったデジタルイラストを誰でも短時間で容易に描出することが可能になりました。日々進化するAI技術を前にして、イラストレーターとして私たちは何を表現できるでしょうか?
本卒業制作では、情報の取捨選択や記号化によるデフォルメ表現や漫符によって伝達される繊細な機微など、AIが苦手とする領域である「人間らしさ」を掘り下げることで、そこにイラストレーターとしてAIと競合しない領域での活路が見出せるのではないかと考えました。数あるジャンルの中でも、多くの人々が日常生活の伝達手段において、視覚情報を中心とした非言語的コミュニケーションとしてイラストを使用しているLINEスタンプに着目し、イラストにおける人間味や人間らしさの追及によって作画AIと差別化できないかと考え、LINEスタンプ用のデフォルメイラストを制作することにしました。
制作するにあたって、実際に作画AIサービスを利用してデフォルメイラストの生成が可能であるかを検証した結果、ユーザーの需要を反映してリアルな画風やいわゆる萌え絵に偏っている現在の作画AIでは、LINEスタンプに必要となるデフォルメ表現や差分の制作、漫符の活用やテキストでの状況説明は不可能であるという結論に至りました。それらを踏まえて、今回AI技術に関してアドバイスを頂いたAIエンジニアの女性をモデルにしてLINEスタンプ用のデフォルメイラストを制作し、キャラクター名は「テックちゃん(tech= technology)」と名付けました。スタンプの内容は、業務におけるやり取りであったり、プライベートであったり、主に技術職の方が使いやすいシーンを想定したデザインとしています。
本卒業制作を通じて、単に作画AIの弱点を抽出するだけでなく、「AI技術が進化していく中で私たちはイラストレーターとして社会に対してどのように関り、何を表現し還元できるか?」という問題に対して、”向き合い方”の一例を提示できたかと思います。