卒業研究でテーマにした三岸節子は明治時代に生まれ、昭和から平成にかけて活躍した洋画家です。94年間の生涯において一貫して花をモティーフに絵を描き続けたため「花の画家」と呼ばれることもあります。洋画は明治維新以降、「近代化」の波のなかで日本に広まりました。三岸が画家を志した当時は日本洋画の黎明期で、女性が油絵を学んだり画家を職業とすることに対して人々の理解や教育は十分に整っていませんでした。そうした環境において三岸は家事と育児の合間に作品をつくり続け、さらに創作活動を通して社会参加する女性の立場から積極的に声を上げた活動家のような一面も持っています。芸術にまっすぐな情熱を傾ける三岸の生き方に興味を持つうち図書館で資料を集め、最終的には画家の足跡を辿ってフランスと愛知県にフィールドワークへ行きました。卒業研究のなかで書くことができたのは三岸の長い画業のうちほんの一部にすぎませんが、アートライティングによって画家と作品の魅力を少しでも共有することができていれば嬉しいです。
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- 佐藤美波